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私だけの

作者: のんの

「はあ…」

1人部屋で溜め息をつく和也に女の子が近寄る。

「試合負けちゃったから落ち込んでるの?」

「!……ああ。ダメだな、俺」

「…最後。ミスしちゃったから負けたんだもんね?」

「!なんでそのこと…見てたのか?」

「ううん。今日は用事があったの、言ってたでしょ?」

「じゃあなんで…」

「部員の人が言ってたよ」

まあ嘘だけど。

「みんなが?…そっか…」

「でも私はちゃんと努力してたの知ってるよ。だから和也は悪くないって思ってる」

「…ありがとう」

「うん」




「おお和也!お疲れ様!」

「どこ行ってたんだよー?」

「今回は負けちまったけど次は勝とうぜ!」

「……ああ」

みんな笑顔で接してくれるけど、本当は俺が悪いと思ってるのか……?




「なあこれ、和也が壊したのかよ?」

クラスメイトの1人が和也に近づいて来た。

「え?」

「これ、俺のシャーペンなんだけど、和也の机の上に置いてあったんだよ」

クラスメイトの一言にクラスが少しざわつく。

「俺の机の上に…?」

「ちょっと!和也がそんなことするわけないじゃない!」

そこへ女の子が割り込んで行く。

「えっいや…俺だって和也じゃないとは思ってるけど…」

「じゃあもういいでしょ。行こ、和也」

「えっ?あっああ…」


「和也、疑われてかわいそう」

疑わせたのは私だけどね。

「えっいやそんな大したことじゃないし」

「ダメだよ和也!周りの子がどんな目で和也を見てたか知ってる?」

「えっいや…」

「信じられない、和也がそんなことするなんて、酷いって目で見てたんだよ!」

「えっ……そう…なのか…」

「でも私だけはそんなことしないってちゃんと分かってるよ!」

「ありがとう…。お前だけはいつも俺を分かってくれるな」

「当たり前でしょ!」

そう、もっと…私だけを…。




「ねえ和也!さっきあの人が和也の悪口言ってたよ!」

「えっ?」

「それからこの前あの人も和也がウザいって!」

「……」

「和也の努力を認めもしないでみんな悪口ばっかり!…ねえ和也?私は和也に騙されて欲しくないの」

「俺が…騙される…?」

「そうだよ。和也のこと裏では悪く言ってるくせに表では良い人ぶって和也に色々させようとするのが嫌なの」

「……俺は…」

「和也は私とみんな、どっちを信じるの?」

「えっ……俺は…そんなの…」

「私は和也のこと守りたい。前疑われた時も庇ったでしょ?」

「そう…だよな…。俺はお前を信じるよ」

「うん!」

そうこなくっちゃ。




「和也。今日の部活____」

「ごめん。今日は休む」

「えっそうなのか?どっか悪いのか?」

「…ああ…まあ」

「そっか。気をつけて帰れよ!また明日な!」

「……」

お前だってきっと俺のこと…。




「和也。見てこれ」

「えっこれ俺のタオル…なんで泥だらけなんだ…?」

「そこに落ちてた。顔は見てないけど、私見たの。部員の人がやったんだよ」

「え……?いや、まさか」

「和也。辞めた方がいいよこんな部活。ここは和也に相応しくない。和也のいるべき場所じゃないんだよ」

「…でも……俺、聞いてくる!」



「和也?どうしたんだよ?」

「何かあったのか?」

「和也って今日も体調悪いから帰るって言ってなかったか?」


「俺が帰ってた方が都合が良かったのか?」


「え?なんだよ急に」

「どうしたんだよ和也」


「このタオル。お前達の誰かがやったのか?」


「うわっなんだこれ。泥だらけじゃねぇか」

「よく見ると切れてるところもあるな」

「和也、俺達の誰かがやったって本気で言ってんのか?」

「そうだぜ。俺達がやるわけねぇだろ」


「…もう、信じらんねぇんだよ」


「どうしたんだよお前」

「何かあったのか?」

「…あ!これ!そうだ思い出した!」

「え?何だよ?」

「このタオル。あの子だよ!ほら、和也がよく一緒にいるあの子!」


「っあいつがやったって言うのか…!?」


「えっいやだって俺見たし。あの子がカッターでそのタオル切り裂いてるの」

「あっそういえば俺も。あの子がそのタオル持ってるの見たな」


「っふざけんなお前ら!あいつが…あいつだけはやるわけねぇよ!」

そうだ。あいつだけは絶対やらない。



「あっ和也!どうだった?」

「ああ…多分あいつらの誰かだ」

こいつのせいにしようとするなんて…。

「そっか…」

部員に見られたと思ったけど大丈夫だったみたいで良かった。計画は完璧ね。

「もうあんな部活辞めたら?」

「……ああ。そうするよ」

俺には…もうお前だけだ。







とある一室に女が訪ねる。

コンコン

「和也ーいるー?」

「来てくれたのか!!俺は…」

「ふふっ私が来てくれてそんなに嬉しい?」

「ああ。俺にはお前だけだ」

「ふふふっありがとう。和也の居場所は私だけだもんね?」

「ああ。俺はお前なしじゃ生きていけない。離れないでくれ…」

「うん。もちろん」


私以外和也は何も欲しない。何もいらない。

和也の全てがやっと、私だけのものになった。

愛してるよ?

私だけの可愛い和也。

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