第22話
たしかに私は、この街で孤独ではあったけれども。
でも、私は決めた。
この街で、この世界で精一杯生きていこうと。
友人も、家族も外の世界に居て、二度と会うことは叶わないかもしれないけれど。
でも、ここでは新しい関係も得られるのだ。
少しだけでも心と意識とを外に向けられたならば、彼のように私を見てくれる人がきっと他にも居ると気付ける筈だから。
「あ、ちょっと!? なんでまた泣いてるの!? え!? 僕何か変なこと言った!? あれぇ!?」
別に三吉君を困らせるつもりも罪悪感で押し潰そうだなんてことを考えていた訳でもなかったのだけれども。
でも、仕方ないでしょう? 私の目から涙が溢れて止まらないのは。
だから、お願い。今のちょっとだけで良いので、胸を貸して欲しい。
「え、ちょっと!? 鼻水、鼻水は駄目! 制服新品だし! ちょっと、ねぇ、皆川さん!?」
声だけは必死に抵抗しているけれど、でも私を押しのけたり逃げようというような素振りを見せないあたり、三吉君の性格をよく表しているんじゃないかな、と私は思うのだった。
***
余談にはなるのだけれども。
このしばらく後、この場に友香が現れる。
いわく、「佑輝を追ってきた」とのことで、泣いている私を目の当たりにして何をどう勘違いしたのか、
「ちょっとあんたこんなところで女の子相手に何やってんのッ!?」
「いやこれは違う誤解でふがッ!?」
それはもう見事な友香の飛び蹴りを食らって、三吉君が盛大に吹き飛ぶ。
「もう大丈夫だよ、安心してね」
優しく私を抱く友香の腕の中で、私は三吉君の冥福を祈ることしか出来なくて、
「……いや、まだ死んでないからねッ!?」
向こうからそんな悲痛な叫びが聞こえるが、ここは無視である。
下手なことを言ったりすれば、また三吉君が友香の飛び蹴りを食らうかもしれない。
そう思って、えっと、武士の情け? とかそんな感じで、私は大人しくしているのだ、うん。
それが皆の幸せに繋がるのだ、たぶん。




