表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/52

第18話

「あのあの、私の話も少し聞いて欲しくって。私は、外の世界から来て、でもこの街の人達は、私が居た世界のことを知らなくって、でも、外の世界にはこの街のことを気にしてて、心配してて、どうにかしたいって思ってる人が一杯居て。でも、どうにもならなくて、私のお姉ちゃんも、だから、」

 要領を得ない、意味をあまり正確に伝えられなさそうな私の言葉をどう受け止めたのか、

「皆川さんはこの街に引っ越してきたばかりだもんね? 向こうに大切な友達を残して来たのかな? それにもしかして家族も? だとしたら、戻りたいって思ってる?」

 それで寂しくて悲しくて泣いていたのか、と彼は言外に尋ねてきているのだとわかった。

 だがしかし、私の置かれた状況はそんな生易しいものではない。

 戻りたいと思っても、戻ることは出来ない。

 戻れる可能性はゼロではないが、限りなくゼロに近いことを、私は理解している。

 この街へと送り込まれる前に散々説明を受けて、頭では理解していた。

 ただ、理解は出来ていても、実感はしていなかった。

 そして実際にこの街にやってきて、そしてこの街の境界線上にまでやって来て、あの見えない壁に阻まれて、それでやっと実感した。

 私は二度と、大切な友人達や家族に会うことが出来ないのだと、頭だけでなく心でも理解した瞬間、感情が暴走するのを止めることが出来なくなった。

 まだ子供でしかない私には、ひたすらに泣くことでしか心を守る術がなく、だから、

「……あー、その、泣かないで笑ってくれると嬉しいなあ」

「あ、その、ごめんなさい。別に私、泣くつもりとかじゃなくて、その、」

 知らず、また涙を零してしまっていた。

 三吉君の困った顔を見たくなくて、だから私は一生懸命涙を堪らえようとして、けれども、

「あの、あの、ごめんなさい。だから私、その、えっと、」

 溢れる感情を、抑えることが出来なかった。

 それは、ただ単に悲しいというだけのことではなくて。


――こんな私のことを、三吉君が心配してくれている。


 そのことが、嬉しくって。だから、

「嬉し泣きっていうか、そういうの、ですから」

 安心させたくて言ったつもりだったけれども、

「えぇッ!? どういうこと!?」

 不謹慎かもしれないけれど、私の言葉に驚く三吉君の顔が面白い、なんて思ってしまうのだった。そして、

「……まぁ、皆川さんが悲しくて泣いてるって訳じゃないのなら良かった。……いやぁ、あの向こうに居る夫婦っぽい人達の特に男の人の方がさ、凄い顔でこっち見ててね?」

 彼がポツリと漏らした言葉。その意味を察して私もまた、彼の視線の先を見遣るが、しかし誰の姿も見えはしない。

 私に見えず、彼に見えている男女の姿。そして、先程の「向こう側のコンビニ」と「隣町のコンビニ」という発言。

 コンビニという言葉の意味はよくわからないが、『向こう側』と『隣町』との言葉の違いを考えれば、答えは自ずと導かれる。つまり、

「その男の人と女の人ってもしかして、――?」

 私の記憶にある父母の容姿の説明をすれば、彼はうんうんと頷いて、

「うん、そんな感じ。なんだか皆川さんに似てるような、……って、え?」

 驚いた彼の顔を見ることが出来て、私は少しだけ嬉しく感じるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ