第5話
最近はめっきり寒くなりましたね。秋は嫌いではないですが、急に寒くなると喉とか痛くて体調崩し気味になるので苦手です。
あと、定期的に恋愛モノ書きたい症候群に見舞われます。このストーリーではなかなか甘いところにたどり着けそうもないので、余計に。
この話の更新をしていないのに、他の超短編みたいなの書いてる時はだいたいそういう時です。
つまるところ、日曜の奴隷少女ちゃんの更新が楽しみで仕方がないって話です。
あと、シャンフロのヒロインちゃん頑張れ!とかそんなところで。
「あの、空に……何かあるんですか?」
私は、どうにも三吉君の行動が気になって尋ねてみた。しかし、
「うーん、何でもないよ。気のせいだった」
とは言っているものの、どうにも気になるのか何度もチラチラと空を見上げている。
私もその視線の先を追おうと空を見上げるが、しかし視界に映るのは春の空気をはらんだ青空のみである。
「私は幽霊か何かが見えてるんじゃいかと踏んでるんだけど、」
「幽霊なんて居るわけないし!?」
長野さんが茶化し、三吉君がわかりやすく動揺していた。
なんとはなしに、
「二人共、仲が良いんですね。……なんだか羨ましいです」
それは、ある意味で私の本心でもあった。
幼馴染だという二人の間に流れる空気というか、距離感みたいなものに憧れを覚えたのだ。
そして同時に抱くのが、嫌悪にも似た悪い感情で、それはあの戦争とは無縁でいられるこの平和でのんびりとした街や人や空気に向けられる、
「皆川さん? どうしたの? 大丈夫?」
長野さんが、いつの間にかうつむいてしまっていた私の顔を下から覗き込んでくる。
「……あ、あの、大丈夫です。……なんでも、ないです。ちょっと疲れちゃっただけで」
「あー、あれかな。都会育ちの女の子には、この田舎道をひたすら歩いて学校に行くのはツラい、みたいな?」
「いえ私、都会育ちとかじゃないです。……この街と同じくらい……いや、もっと田舎かな? そんなところの生まれですよ?」
そうなのだ。そもそも道なんて幾度の戦闘の果てに荒れ果てて、戦闘用の底の厚いブーツを履かなければ踏破できなかったし。
そんな道なき道を行くということは、つまりは戦闘行動の一環である場合がほとんどであり、故に支給される装備は数日間生き延びるのに必要な物資が、
「引っ越してきたばかりなんでしょ? そりゃ気も張ってるだろうしちょっとしたことで疲れるんじゃないかな。……大丈夫、まだ時間はあるし、ゆっくり行こう」
三吉君が、真新しい腕時計で時間を確認しつつ、そんな言葉を掛けてくれる。
私は別に体調が悪い訳でもなく、ただ単に気持ちが後ろ向きというか、思考が変な方向に向いてしまっているだけで別になんともないのだが。
それでも、この少年は心根が優しいのだな、と感心した。
少なくとも外地で出会った同年代の少年に、こんな穏やかな性格や雰囲気を持っている人は居なかった。
「……この街も、悪くないのかも」
だからこそ、ふと、そんなことを思った。
***
「じゃっじゃーん! ここが私達がこれから三年間通うことになる『佐名川中学校』です!」
妙なテンションで、長野さんがはしゃいでいる。
中学校の校門の前で騒ぐ長野さんは、どうにも目立っている。
「いやまあ、皆川さんに紹介してるつもりなんだよアレ」
三吉君が、ため息混じりに解説してくれるも、
「んんん? どうやら佑輝はいっぺん天国に行きたいらしいね? 私のことを悪く言うのはいいけれど、皆川さんのことをバカにするのは許さないよ?」
「今の話のどこをどう聞いたらそうなるんだ!?」
「はい、佑輝は有罪ねー。まったくもー」
「おい話聞けよ!」
夫婦漫才、っていう言葉はこういう時に使えばいいのかな、お父さんお母さん?
「ほら、皆川さんも呆れてるよ? さっさとあっちの掲示板を見に行こう? クラス発表っぽいし」
「……呆れられてるのは友香だよ。……だよね?」
いえあの、私に同意を求めないで頂けると大変助かります……。
それはともかく、クラス発表というのは気になる。
この街に知り合いなんてほとんど居ないからどのクラスでも大差ないと、ほんの少し前までは思っていたのだが。
でも今は違う。出来ることならこの二人と同じクラスになりたいと、そんなささやかな願望を持ってしまっているのだから。
私達三人は、人集りの出来ている掲示板の方へと近付いていくのだった。




