第9話
タイトルとあらすじに少し手を加えてみました。
タイトルにインパクトがあった方が、人目を惹いて読んでもらえる可能性が増えるとか。
……増えると嬉しいなあ、と思う次第です。
「あのさ、僕の方からも質問、いいかな?」
少しだけ悩んで、けれども僕は聞こうと決めた。だから、
「うん? いいけど、あんまりエッチな質問はされても答えられないんよ?」
あははと笑いながら、トンデモナイことを大声で喋る朝山さんに、むしろ僕が慌てる。
「ちょっと、そういうのないから! ほら、今すれ違った上級生のお姉さんとか凄い顔して僕のこと見てたじゃん!?」
転校生である朝山さんの制服がブレザーな時点で注目の的であり、かつその状態でのその発言はとても危険である。
「わぁ三吉君、人気者なんね? そんな素敵な人と一緒歩いてて、私大丈夫なん?」
「大丈夫とか大丈夫じゃないとかそういうのもないから! みんなが僕達のこと見ててちょっと恥ずかしいよ!?」
「……それは三吉君がさっきから煩いからだと思うんよ? 廊下ではお静かにお願いしまーす、なんよ?」
疲れた。とても疲れた。でも、
「あの、もしかして三吉君? 私のこと、嫌いになったん……?」
「……いや、そういうもないから。大丈夫、だからそんな泣きそうにならないで。さっきとは別の意味で恥ずかしいから。僕が」
女の子に泣かれるとか、そういうのは本当に駄目なのだ。周囲の目というのもあるけれども、何よりも僕が僕を許せなくなる。
「……だったら、楽しく行くんよ? 笑って笑って?」
さっき見せた泣き顔が嘘のように、朝山さんが笑う。
「鳴き真似とか、そういうのは止めてほしいなあ。……まあいいけど」
からかわれている感というか、なんだか相手をしていて疲れる女の子だな、と。そんな感想を抱く。
「それで、三吉君の質問って、何なのかな? 気になるんよ?」
「脱線し始めたのは朝山さんなんだけどね……? それで、えっと、」
そう、僕が質問したいのは、
「その、出処というか、どうして、」
僕の隣を歩く少女は、あの夜のプールで出会った少女である『アリス』によく似ていて、けれども違う人物。
髪の色が違う。瞳の色が違う。僕を呼ぶ呼び方が、そして何より喋っている言語が違う。
だからよく似ているだけの別人だと言えなくもないけれども、でも、その左腕に巻かれた腕時計が、あの夜が現実であったと証明しているも同然で、だから僕は、
「……朝山さんは、転校してくる前はどこに住んでたのかなって。ちょっと特徴的な喋り方だし」
直接聞くのは、何故だか憚られて。代わりにというか、誤魔化すように口から出てきた質問は、しかし真実を推測するに必要な情報である筈だった。だというのに、
「うーん、難しい質問なんよね、それは。この身体はこの街の生まれではあるんだけれど、でも、今三吉君と喋っている私はこの街から見れば西の方で育ってるんよね」
それはつまり、
「元々この街の生まれで、でも育ちは西の方……? 関西とか九州とかそっちの方なのかな?」
「カンサイとかキュウシュウとかって……ああ、そうなんね。そっちの地域で私は育ってるんよ、さすが三吉君、地理とかもよく知ってるんね?」
「いや、別にこれくらい常識っていうか……」
「そうなんね。……常識、かあ」
朝山さんは、言っていた。学校に通うのは初めてだと。
その言葉をそのまま理解するならば、小学校に通っていなかった、ということになる。
一体どういう境遇であればそんなことになるのか。
たかだか中学生である僕にはまともな想像も出来ないけれど、でも。
朝山さんが遠い目をしているのが妙に気になって、結局それ以上のことを問い質すことは出来なかった。
「あー、ここなんね、職員室」
目的地に到着し、ひとまず会話はお預けとなるが、問題はない。
これから、クラスメイトとして毎日顔を合わせるようになるのだ。
少しずつでも話をしていって、距離を埋めていけばいい。
急ぐことも焦ることもない。
その筈である。
そう納得して、
「そうだよ、ここが職員室。……失礼しまーす」
声を張り上げつつ、僕は職員室への扉を開けた。




