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第3話

奴隷少女ちゃんの更新があるとそれだけで明日も頑張ろうって気になるから不思議ですね。

また、毎朝の更新チェックでシャンフロがあると今日も一日頑張ろうって気になるのも凄いです。

そういう活力が湧いてくるような物語を綴りたいものです。

 学校にだいぶ近付いてきて、僕達以外の同じ中学の生徒を見掛けるようになった段階で、やっと友香は手を離してくれた。

 僕としては凄く恥ずかしかった訳なんだけど、友香の方はどうだったんだろうか。

「……なんていうかさ、手を繋いで登校とかって久しぶりだったよね。小学校以来?」

「手を繋いだっていうか、手首掴まれて連行されてる感の方が強かったけど」

 あはは、と友香が照れ笑いのような反応を返してくる。

 小学校までは手を繋いでの登下校も当たり前みたいな雰囲気が、僕と友香の間にはあった。

 けれどもその関係が崩れたのが、中学校に上がってからすぐだった。


***


「佑輝、お前って女子と一緒に帰ってんの?」

 同じ小学校出身の奴らは、僕と友香のことは幼馴染で別に一緒に居るのが当たり前みたいな風に見ていた筈である。

 だが、他所の小学校出身であったクラスメイトの男子に僕と友香のことを言われた時、僕は気付いてしまった。

 僕は友香のことを家族であり妹であり、仲の良い幼馴染であると認識していた。

 でも、そのクラスメイトは友香は家族ではなくて、妹でもなくて、僕とは性別の違う女子であるのだ、と認識していた。

 だから、僕と友香の仲を誤解した。

 そう思われることが、僕には堪らなく恥ずかしかった。

 そう意識してしまえば、もうなかったことには出来ない。

 その日の放課後から、友香と一緒に帰ることを止めた。

「友香。……あのさ、今日は僕、友達と帰るね」「今日も友達と帰るから」「友達が、」「友達と、」

 一緒に帰ろうと毎日誘ってくる友香を振り切るのは、最初は心が傷んだ。

 だが、男友達と馬鹿やりながら帰るのは、それはそれで結構楽しかったのも事実だ。

 独りで帰る友香を見送って、それから僕もそっと独りで夕方の通学路を歩いて行く、なんてこともあった。

 友香の方がもしかするとずっと大人で、僕のそんな心境の変化に気付いていたのかもしれない。

 いつしか友香も女友達と帰宅するようになり、僕の心の憂いのようなものはなくなっていった。


***


 今は、中学二年の夏休み明けである。

 別々に帰るようになってからこれまでおよそ一年半が経つが、その間に一緒に登校したり下校したりというのが全くなかった訳ではない。

 朝でも夕でも、偶然に時間が合えば登下校したりはしてきた。

 というか、朝は僕がわざと時間をずらしても、何だかんだで一緒になることが多かったような気がしないでもないけれど。

 まあこのあたりは気分の問題だろうか。

 ただ、手を繋いでというのは中学に上がってからこれまでなかったことで、だから僕はちょっとだけ緊張していたのだ。

 ……妹なのに。友香は実質、妹みたいなものだというのに。何を緊張していたんだろうか僕は。

 よくわからない感情に呑まれて、僕は歩を早める。

 どうせ同じクラスで行き先は同じではあるのだが、それでも。

 友香と一緒に歩いているところをクラスメイトに見られるのは少しだけ恥ずかしい。

 今でもまだ、僕はそう思っている。

 友香が僕のことをどう思っているのか、それはわからないけれど。


 夏の太陽は未だに暑く僕らを照らして焦がし続ける。

 日光から逃れるように、僕は中学の門をさっさとくぐり、そして下駄箱のある校舎内へと避難する。

 その、直前。

 視線を感じた気がして振り返った僕は、友香といつの間にか合流した皆川さんが歩いて来ているのがまず目に入った。

 そして、その背後。

 いや、背後という単語は適切ではないだろう。その二人のずっとずっと後ろ。最早背景と言っても良いくらいの後ろ。

 つまりは、二人が背負っている朝の薄い青色の空に。

 一つの大きな影が見えた。

「なんだろう。飛行機、かな? 結構低いところ飛んでるように見えるけど」

 低いというか、この街に突っ込んで来そうな軌道に見えなくもない。

 僕が空を見上げているのに気付いて、友香と皆川さんも振り向いて空を見上げた。

 しばらくして、二人はまた前を、つまりは僕の方に向き直って在るき始める。

 友香が眉根を寄せて疑問を浮かべ、皆川さんは少しだけ困ったような表情を見せた。

 皆川さんの表情については判断が付かないが、しかし友香の言いたいことはわかる。

 空がどうかしたのか、ときっと言いたいのだろうから、もう普通に声を出せば声が聞こえる距離まで近付いてきた二人に対して、僕はこう答える。

「別に何でもないよ。ちょっと空を見てただけ」


 二人の背後、見えていた何かは、いつの間にか消えていた。

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