第2話
リアル忙しいのと、あとはアルファポリスにてちょっとしたコンテストに参加して、恋愛物とか書きまくっててこちらの更新が疎かになってました。
申し訳ありません。
ペースは遅いとは思いますが、引き続きやっていきます。
よろしくお願いします。
「いい加減、手を離してほしい。……きちんと学校行くから」
友香は僕の腕を掴んだままで、つまり僕は友香に腕というか手首を掴まれたままで、二人並んで学校への道を歩いている。
傍目には手を繋いでいるように見えなくもないこの状況は、ちょっとなんというか恥ずかしすぎる。
「佑輝が逃げないって約束するなら」
「するする!」
「約束破ったら?」
「これまで友香との約束を破ったことあったっけ?」
友香が盛大に溜息を吐く。
……あ、これはちょっとマズいパターンだ。
「夏休み終わる前に一緒に遊びに行こうって約束したじゃない? あれは?」
「夏風邪にやられまして……大変申し訳御座いません」
「それに、夏休み入る前に、……その、大事な話があるから一緒に帰ろうってのもあったじゃない?」
「あー、そういえばそんなこと言ってたね。あれなんだったの? 友香なら別にいつでも話出来るしいっかって思ってそのまま忘れてたよ」
「んー、いや、話があったのは私じゃなくって……。それはちょっとしばらく忘れてて」
歯切れの悪い友香を少しだけ不審に思うも、友香が退いてくれるのならこれはチャンスでもある。
「ふーんそっか。僕はてっきりさ、友香に愛の告白でもされるのかと思ったよ」
だから、茶化してこの場を切り抜けようと思っただけなのだが、
「そ、そそそそんなことある訳ないでしょッ!? ……私じゃなくて椎、ああああああ違う何でもないッ! アンタは何も聞かなかった。良いわねッ!?」
そんな動揺するようなことだっただろうか? それに朝っぱらから騒がしくて暑苦しいなあと思いはしたが、それは口に出さないでおいた方が良さそうである。
というか、今の話から察するに、もしかして僕に告白しようとしてた誰かが居たとでも言うのか……?
それは、なんというか、ええっと、
「……なあ友香?」
まだちょっと混乱気味というか慌て気味の友香に声を掛ける。
「もしかして僕、モテ期みたいなの来てる?」
「……そんな訳ないでしょ? 勘違いしない方が佑輝の為になると思う」
急に冷静になり、友香は意地悪そうに笑う。その笑みを見て僕も、
「まあそうだよね。夏休みの間だって、妹とゲームしてたくらいで特に何も、」
ない訳ではなかった。
夜のプールで出会ったあの少女は、――。
「だから遊びに行こうって誘ったのに。しかもその時は私だけじゃなくて、椎子と沢渡さんも一緒だったんだからね? 結局三人だけで遊びに行ったけど」
「へえ……友香って、あの沢渡さんとも仲良かったんだ? たまに話とかしてるのは見てたけど」
沢渡さんというのは、学年一の美人と評判の同級生である。
僕や友香の隣のクラスで、毎日取り巻きみたいな女子に囲まれていて、どこのお嬢様ですか? と聞きたくなるような雰囲気を醸し出している。
端的に言うと近寄りがたいというか、まず取り巻きに阻まれて沢渡さんに近付くことが出来ないとかなんとか、クラスの男子が話していた記憶がある。
「んー、夏休み入って一緒に遊ぶようになった感じかな。椎子と沢渡さんが同じクラスじゃない? 椎子経由で仲良くなったのよね」
「皆川さんか。友香と仲良くやってるようで何よりだよ」
「何その、椎子のお父さん? それともお兄さん? みたいな目線の発言?」
別にどうということでもないけれど。
「んー、何ていうか、皆川さんって妹みたいな感じがするんだよね」
「背がちっちゃいから? うわ、椎子はそれ気にしてるのに。言いつけちゃおっかなー?」
「いや別に言ってもいいけど。別にそんな皆川さんと親しい訳でもないし。そもそも話とかするような仲でもないし」
「……名乗ルン、とかってあだ名で呼ばれてるのに、それはないんじゃない?」
「……。ふむ、何そのあだ名。うーん……? 呼ばれた覚えはないんだけど」
そもそも、皆川さんとまともに会話した記憶は、それこそ初めて出会った時くらいのもので、……ああ思い出した。
「……なんかそんなあだ名で呼ばれるような流れになったような記憶はあるなあ」
それからずっと陰でそのあだ名で呼ばれてたとか恥ずかしすぎるんだけど……。
「椎子も、なんだか秘密にしときたかったけどうっかり口走っちゃったみたいな感じだったからね。……というか私、二人の出会いに興味出てきたんだけど」
何があったの? と聞いてくる友香に対して、僕は心の中でだけ溜息を吐く。
「あれ、友香覚えてない? 中学の入学式の日に、僕に飛び蹴り入れたこと」
「んん……? あー、たしか友香が佑輝に泣かされてたんだっけ……?」
「違うよ! 皆川さんが泣いてて、僕が近く通り掛かって、それで慰めてたっていうか、話聞いてただけだったのに」
「佑輝に飛び蹴りとかそういうの日常過ぎて、今まですっかり記憶から消えてたわ。そういえば、椎子と仲良くなったのもその時からだったわ」
あれは酷い話だった。
友香の僕に対する短絡的かつ暴力的な面もそうなのだが、皆川さんが泣いていた理由の方も、だ。
「……皆川さん、もうこの街にすっかり慣れたよね。友香とか沢渡さんみたいな友達も出来て、毎日元気そうで。……うん、良かった」
「中学に上がると同時にこの街に引っ越してきたんだものね、残してきた友達とかに会いたくなったりとかもあっただろうしね。っていうかさ、」
友香が、またしても意地の悪そうな笑みを浮かべて、
「やけに椎子のこと詳しくない? 心配してるっていうか気にかけているっていうか。あー、もしかして!?」
「何勘違いしてるか知らないけど、ほら、さっさと学校行こうよ」
僕の手首を掴み続ける友香を引っ張って、僕は歩いて行く。




