魔王様、勇者に選ばれる。
タイトル通りのお話予定。第二話『魔王様、お城に拉致られる。』を2017年12月1日0時に投稿。第三話『魔王様、剣の修行をする。』を2019年8月29日7時に投稿。お待たせしました。リンクはこちら。コピーしてお使い下さいませ↓
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それはガヤガヤとした街中での出来事。突然、その叫びが辺り一面に響き渡った。
「勇者が誕生したぞーっ!!!」
『勇者』。それはここ最近街中の、いえ、国中の人間が待ち望んでいた存在であった。図らずもそんな存在になってしまった青年クラウディオは、声に出さず己の不運さを呪ったのだった
この世界には、勇者だけが鞘からその美しい刀身を抜くことができると謳われる聖剣があった。古くから謳われるその聖剣をここ数百年の歴史の中で抜いた者は居ない。そんな伝説を持つ聖剣をうっかり鞘から抜き放った青年は、聖剣を片手に呆然と佇む。そして、勇者の誕生に歓喜する沢山の人間に囲まれながら、彼は引き攣りそうになる顔を何とか抑えていた。そう。彼は内心大いに焦っていたのだ。『あぁぁぁぁぁ!!!ディアに殺されるっ・・・!!!』と。
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それは遡ること数時間前のこと。
「ディアー、街に行ってくるけど何か要るー?」
青年クラウディオは庭先から声を張り上げて妻クラウディアに問いかける。クラウディオの声に反応した彼の妻は窓から顔を覗かせ、鈴の音を思わせるような可憐な声で答えた。
「緑の色糸を買ってきてくださいな」
「わかった」
クラウディオは顔を綻ばせ答える。一見貴公子然としていて見惚れそうにもなる―――その手に熊の毛皮がなければ―――程の美形の笑顔は破壊力抜群である。この場に妻しかいないことが幸いであった。
街へ行くと、彼は持っていた熊の毛皮を商業ギルドに買い取ってもらい、そのまま愛しい妻に頼まれた色糸を買いに布を扱う露店へと向かった。その道すがらある一角に人だかりができているのを発見し、糸を買いながら店主に訊ねた。
「あれは一体何をしているんだ?」
「神殿の巫女様が、魔王を倒せば国が豊かになる、とか言う信託を受けたと公表したらしいよ。魔王を倒すために勇者様が必要なんだと。何でも勇者様にしか抜けない聖剣があるとかで、片っ端から抜ける人物を探してんだと!アタシとアタシの旦那も試してみたんだが抜けなかったねぇ」
あっはっはっ、そんな豪快な笑い方がひどく似合う女主人が彼に言う。
「にいさんもやってみたら良いじゃないかい?モノは試しだっ!おーい、騎士様ー。この人はまだ試してないよ~」
「ちょっ・・・!!!」
クラウディオが止める間もなく、お節介な彼女が騎士に声を掛けた。やってきた騎士が彼に聖剣を差し出す。
「まだ試してないのだな?この聖剣を抜けるのは勇者だけだ。一度でも試して抜けなければ何度試しても抜けぬ。まぁ、モノは試しだ。とりあえず抜いてみろ」
そう言われてしまえば試さないわけにはいかない訳で。
(俺がその倒すべき魔王なんだけど!?)
声に出せない主張が彼らに通じる訳もなく。そして話は冒頭に戻る。
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