俺は異世界にSUSHIを握りに来た
この作品は寿司食ってたときの作者の思い付きだけで出来ています。
ネタと勢いだけです。
「いや、突然申し訳ないが君は死んだ。事故だ」
「何だこの唐突感。リアリティねえな」
「そこはアレだ。死後の世界だから、ついでに言うと僕が作った神フィールドだからね」
「……これアレか? 最近流行りの神様転生チート? え、俺マジで死んじゃったの」
「自分の死をそういう風に認識するのか。日本の若者の将来が心配だなあ。主に頭が」
「うるせえよ、普通に生きてたら真っ白空間と何かよく解らん声と会話するなんて経験ねえよ。戸惑うよそりゃ。都合の良い解釈するよ俺は」
「まあ、その話はさて置き、君が気づいた通り、その辺でグチャァってなってた君の魂をここに呼んだわけなんだけれども、一応死に際について知りたい?」
「いや、擬音が生々しくて余り気乗りしないんだけど、一応聞くとどうなったの?」
「こんな感じ」
俺の死亡現場と思しき映像的なものが見えた気がした。
「うおっ……小学校のとき見学した屠殺場みたいな感じで潰れてんじゃん俺……めっちゃグロい……」
「結構反応淡泊だね。もっと青褪めたりするかと思ったんだけど」
「いや、なんか現実味ねーっていうか、テンプレだと神様のミス? 的なもんらしいから、感情のぶつけ先があるからまだ大丈夫というか……」
「ああ、安心して。君が死んだのは単純にドライバーの脇見と君の信号無視が原因だから。流石に子供を助けるためとは言え、青信号の道路に飛び出せばそりゃあねえ」
「あ、そういやあの子供大丈夫だったのかよ。俺の惨状見ると夢見が悪い感じになってそうなんだけど……」
「うん、割と重症だけど命に別状はないよ。良かったね」
「……そっか」
感情が少しだけ和らいだ気がした。相変わらず状況的に意味が解らないが。
「あれ、神様がミスったんじゃないならなんで俺ここにいんの?」
「態々ミスらなくても交通事故なんて起きるし、毎年君達の政府が公表してる統計だと平均五五〇〇人くらい死んでるからねえ。その内の一人である君を選んだのはテキトーかな」
「うっわ、この適当っぷりは神様だって確信出来るわ」
「失礼な奴め。ボクが女神だったらどうするつもりなんだい? イチャイチャ出来ないよ?」
「女神なの?」
「ううん、概念的に生まれたばかりだから性差が無い感じ、キャラ付けも今後次第かなあ」
「神様がキャラ付けとか言うとすげえシュールだな」
「まあまあ、その話は置いといて」
何故か箱的なものを持ち上げて、右から左へスライドするイメージが流れてきた。
無駄に人間臭いなこの神様。
「そんでまあ、旧来の神様って奔放だったり享楽的だったりするわけなんだけど、私は比較的若いから君達の価値観に近いんだよね」
「ふんふん」
「それでも神様として持て余した時間と退屈とパワーを潰せるものを探してたんだ」
「あ、もう何かオチが読めたぞ」
「解っても言わないのが御約束だよ。まあ、予想通り異世界転生チートをボクもやってみたいなあ、とかそんなノリで君を見つけたのさ」
「ノリと言い切ったぞこの神様」
「神様なんてそんなものさ」
何て理不尽な適当さ。だが……、悪くないぜ。
「で、ここまで話を聞いてみた感想はどうだい? 自分の死に何か思うところとかある?」
「あー……、家族には悪いとは思ってるけど、うん、まあ、子供の命助けたんだし勘弁してくれって感じかなあ。いや、勝手な理屈なんだけどよ。ほら、泣かれるばっかじゃ死んでからも気になるじゃん?」
「死者に口無し。君が死んだという事実をどう受け止めるかは彼等次第だから、神様的には気に病む必要ないと思うよ?」
「いやまあそうなんだけどさ。こう、言葉に出来ない。“ああ、俺死んだんだなあ”っていう口惜しさっつーの? そういうのが……今更さ……」
「そっか、ちょっと泣いとく?」
「ん、まだ平気だと思う。つか、そこで優しくされると悪態付けなくなるからやめれ」
「神様なんてそんなものだよ」
今のは結構ぐっと来た。馬鹿が一人勘違いして罵られそうになったのに、この懐の深さ。
「ほらほら泣かない泣かない。男の子だろ?」
「わーってる。泣いてねえよ。つかチートあくしろよ」
「そうだね。そろそろ話を進めようか。とは言っても、ボクも異世界転生なんて初めてだから、なんか希望とかある? 生物的強化とか。膨大な魔力とか。異種族転生とか」
「希望してチートが貰えるのか……」
ゲームだとクソゲーってレベルじゃねえな。男なら初めからハード一択だろうに。引き継ぎも否定しないが新しく始めるならハード派だ。
「他にも君が考えたカッコいい能力とかもあるけど、ほら、生前中学生の時に書いた」
「それ以上いけない」
絶対この神様今ニヤニヤしてんだろ。……よく考えたらアレ家族に見られるかもしれないのか。うっわ、死にたくなる。死んでるけど。
「ささ、好きなの選んでいいよ。こういうのゲームだとメタプレイっていうんだっけ? POW高くしてINT低くするみたいな」
「ああ、他にも目星と聞き耳と心理学振れる職業で警察スタートとかな」
なんで神様がそれを知ってるのかはツッコまない。藪蛇な気がする。
「メタって言うと、異世界転生チートもメタ的に見ると初期条件大体決まるよなあ」
「例えばどんなのかな?」
「物語的に言えば、転生も主人公が強いのを説明するためにあるわけで、神様の存在もまた然り」
「ふむふむ」
「ただまあ、個人的には貰った力で踏ん反り返るのは人としてどうかと思うし、ふとして得た力で人様に迷惑掛けるのもなあ……」
普通に考えて悪役の行動だよね。割と序盤で退場する感じの。周りが妙に悪役臭いのもそういう設定だからだし。
「その上でハーレムとかなあ……。魅力的な人格とは口が裂けても言えない筈なのに堂々として憚らないし」
「いいんじゃない? 欲望に忠実なのも人間らしさだと思うよ」
「力を持つにしても、そこにあるべき努力とか覚悟とか、主人公するならそういうのが欲しいんだよ。俺はさ」
「えっと、具体的にはどんな?」
「○ライガンとかマブ○ブとかベルセル○とか」
「ちょっと待ってね」
『神様検索中……///』という文字が表示されている気がする。
しばらくすると、神様が戻ってきたのか、
「うーん……、君の言わんとするところは理解したけど、普通の人間には無理だと思うよ、コレ」
「あ、うん、まあ、そこは解ってるんだけどさ。だからこそ、神様転生なんかでチートした方が話の作りが楽ってのもあるんだろうけど、個人的な好き嫌いな話だから」
「最近は割とそういう直球なのも減ってるみたいだけどね。ちょっと変化球して知識や経験で異世界に馴染んだりとか」
「いやあ、それもさあ。個人的には精々二十年普通に生きた程度の奴が何を子供に語ってるんだろうかと思うわけよ。世間の艱難辛苦舐めたくらいで異世界の常識を上回れたりするのかと」
「神様からしたらどっちも人間の範疇だしねえ」
「それでも面白い話は面白い。好き嫌い抜きにしてな。まあ、結局作者の腕次第。あ、この場合だと神様次第になるのか」
「ボク次第かあ。確かにボクも初めてとは言え面白い話の方がいいね。じゃあ、頑張っちゃおうかな」
そうなると、テンプレ通りに進んだとしても、最低限面白いと感じられる活躍をしなきゃならんのか。文字通り神に拾われた命なので、なるべく希望には沿いたいけれども。
「君の意志は伝わったけど、具体的な能力はどうするの?」
「ワタシ、ニホンジン、スシタベタイ」
「何で片言なのかはツッコまないけど、それってどちらかというと異世界側の希望だよね。和風国家が欲しいの?」
「いや、寿司が食べたいんだよ俺は」
「うん。……うん?」
「好きな時に好きなネタで好きなだけ寿司を喰う。これほど贅沢なチートが存在するだろうか」
「いや、それはおかしい」
神様的には駄目みたいだ。
「君の希望通り、人類に優しくない感じの異世界に転生させるつもりなんだけど……。えっと、本気で?」
「うん」
「絶賛放送中の技名を叫んでから殴るアニメみたいな感じでサクッと死んだりするよ?」
「あの世界じゃゲームで世界を救った……。なら、寿司で世界を救ってもいいはずだ」
「そうなのかなあ……?」
「実際それで世界救ったら面白いかもよ」
「ならいいか!」
流石は神様。ノリがいい。
「いやあ、やっと無事に能力が決まりましたね」
「流石に簡単に死なれると困るから、身体能力強化とかはサービスしてあげるよ! 大丈夫! それでも人間死ぬときは死ぬから!」
「素敵ですね!」
そういうことらしい。いいか悪いかは解らない。実は結構ノリで喋ってる。
「能力も決まって、転生先も見繕った。後はすることあるかな?」
「そういや、転生後も神様と接触するのもあるけど、その辺どうなん」
「ああ、その辺も大丈夫だよ。異世界転生モノだからね、君が主人公である限りボクとは会えるよ」
「あ、そうなんすか。世話になったんでこのまま別れるのもあれだなー、とか思ってたんで良かったっす」
「嬉しいこと言ってくれるなあ。まあ、その内会えるだろうから安心してね。目覚めたときは赤ん坊だけどね」
「おお、そっからスタートっすか。産まれた時から寿司を握る異能を持つ赤子……凄まじく微妙ですね!」
「自分をサンドバックにするのは止しなさい。ボクもノリでやっちゃったけど後悔しちゃうかもしれないじゃないか」
「まあ、後悔するかどうか。見守ってて下さいよ」
「うん、じゃあ」
「うっす、次に会うときまで」
今はさよなら。
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