表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

パーウェーナ世界

傭兵国でバレンタインデー……だから本業は文官だって

にゃん椿3号様、愚智者=パラドクス(矛盾内包者)様のバレンタイン☆プロジェクト参加作品です。


傭兵国に生まれました…平和惚け上等!

女王陛下(多分)と異世界人(確定)のキャラクターがでていますが本編に関係ございません。

いい天気だなぁ……仕事がんばろうっと。


陽射しの強いグーレラーシャには必須の日除けローブを民族衣装の紺の縦襟長袖の膝丈長衣の上から羽織って弁当の入った差し入れ小袋をもって借りてるアパートから出勤した。


私はラズデアナ・カザフという外務担当官で現在デリュスケシという港町にある王宮分館に勤務をしている。


実は転生者で前世は明正和次元の日本と違う世界の日本人で玉の輿に乗ったのに義母にうとまれ坊っちゃんな旦那に新しい縁談を持ちかけた上に追い出されたのに旦那はリアクションなしという微かな記憶をもっている……本当に嫌なトラウマだよ。


今日もグーレラーシャ傭兵国の地方都市デリュスケシの港町は朝から賑わっていた。


「戦闘文官様〜おねがいしますよ。」

漁協組合長のアーデギースさんが禿頭を日光にきらめかせて私を拝んだ。

「こまります。」

通勤中の私は後ずさった。


アーデギースさんに行き合うとろくなことが無いのは周知の事実である。


「そんなことおっしゃらずに。」

アーデギースさんがますます拝んだまま迫ってきた。

「私……忙しいんです。」

私は脱兎のごとく逃げ出した。


あ、待ってくださいとアーデギースさんの声がしたけどこの際無視だ。


デリュスケシ王宮分館は港のすぐそばにあるグーレラーシャらしい中庭をかこんだ三階建の建物だ。


出入国管理、その他市役所でするような業務はだいたいここですむ。


「ラズ、アーデギースさんにギリマエリ(巨大サメ)の退治でも頼まれたのですか? 」

王宮分館にギリギリ駆け込んで少し荒い息をしていたら穏やかそうな茶色の髪の細マッチョな男性、リュケさん……王宮分館管理官のリュケシウス・ドーリュムさんが心配そうに聞いた。


大体早い私が遅れそうになるなんでアーデギースさんくらいだからね。


あの後追っかけ回されました。


「ギリマエリじゃなくて売り子の方です。」

日除けローブを脱ぎながらこたえた。

「一度しっかり話さないとかしらね。」

ピンクの髪のニノミさん……デーンリュア・ニノミ事務官がため息をついた。

「そうですね。」

リュケさんが私から視線を外さず同意した。


話して聞いてくれればいいんだけどね。


そう思いながらロッカーに置きっぱなしの剣をさけて日除けローブをかけた。


たしか首都ラーシャで地方物産展やる売り子が足りないからデリュスケシブースに立ってくださいだっけ? 人雇いなよ。



「戦闘文官様、お引き受けいただきありがとうございます。」

アーデギースさんがニコニコと頭を下げた。


くっ……極上干物詰め合わせに負けた。

あれ、あんまり塩っぱくなくて美味しいんだよね。


「リュケシウス様もありがとうね! 」

アーデギースさんの娘で漁師のマレーニアさんが元気に手を上げた。

「リュケさんは良かったのに……」

わざわざ有給つかっての売り子作業だから巻き込みたくなかったよ。

「ラズと居たかったからね。」

リュケさんが優しく微笑んだ。


デルュスケシ港漁協組合とデフォルメされた魚のかかれた青い日除けローブをきて販売ブースに立った、試食は鯖をあげてヨーグルトソースをかけて平パンで玉ねぎとはさんだ揚げ魚のヨーグルトサンドでちいさくきって提供している……肉食の多い首都ではあまりゆうめいじゃないけどデリュスケシでは日常的に食べられるファストフードだ。


今日はラーション闘技場というふだん傭兵ギルドが管理している多目的野外闘技場で物産展をしている。


ちなみに傭兵ギルド本部は真ん前にあって闘技場で訓練したり半年に一度の技を競う闘技大会に使われたりしていてすぐ脇には体育館もある。


「揚げ魚のヨーグルトサンドかうまそうだな。」

予想通りダウリウス様……傭兵ギルド管理官長のダウリウス・ヒフィゼ様が焦げ茶色の髪をいつも通り一本三つ編みにしてやってきた。


相変わらず筋肉がよくついてて……まあうちの国の連中はほとんどそうだけどさ。


「美味しいですよ。」

リュケさんがニコニコ試食の皿を何故か私の手から奪って差し出した。

「……ちび、食べさせてくれ、荷物があるんだ。」

ダウリウス様があまく笑った。


よく見るとあえて持ってるように両手に買い物小袋をもっている。


後がめんどくさいから差し出すか……口開いてるし。


「はい、どうぞ。」

リュケさんが楊枝をもってダウリウス様の口に試食を放り込んだ。

ダウリウス様は情けなさそうにもぐもぐした。

「旨い……旨いがちび〜。」

ブツブツダウリウス様がぼやいて買い物小袋を前に差し出した。

「なんですか? 」

思わず受け取った。

「バレンタインデーはチョコを好きな相手に貢ぐ日なんだろう? 」

ダウリウス様がニヤリとした。


買い物小袋の中にはパティスリーイシカワのお徳用割れチョコがギッシリ入ってた。


外国は恋人の日で男性からプレゼントされるって転生前の記憶で覚えてるけど……なんか違う……


「そうなんだ、僕も買ってこようかな? 」

リュケさんがたしかパティスリーイシカワも出店してたよねとつぶやいた。

「ちび、受け取ったからには……」

ダウリウス様が危険に目を細めた。

「はいはい来月倍返ししますよ。」

アティウスにいってギーデル飴店で義理飴でも詰めてもらおう。

「そういう意味でなくな。」

ダウリウス様が口ごもった。


向こうが騒がしくなった。

なんか追いかけられてる。


「止まれ! 」

王宮警護官の制服を着た見覚えある赤毛のマッチョな青年が前を逃げる獣人に斧を振り上げた。

「止まったら死ぬにゃ! 」

縞猫の獣人が必死でこっちにかけてきた。

そのままデリュスケシブースをかすめて私にぶつかった。

足元に割れチョコがちらばる。

「先輩〜捕まえてください! 」

赤毛の王宮警護官……ジュリウス・二フィロ君が叫んだ。


反応して思わずデリュスケシへようこそと書かれた幟を抜いて縞猫を追った。


「にゃ、ご主人様〜増えてますにゃ〜」

縞猫が泣きながら逃げるのを幟で足をすくう。

そのまま倒れかけた猫を誰かが支えた。

「まったく。」

明らかに魔法使いな格好をした紫髪の美女がそのまま転移する。


「しまった! 」

二フィロ君が叫んだ。

「二フィロ先輩〜」

もう一人の王宮警護官も息切れしながらかけてきた。

「一体どういうわけだ。」

割れチョコを拾いながら不機嫌そうにダウリウス様が聞いた。

「それはここでは……先輩、暇ですよね。」

有無を言わせぬいつもはワンコな後輩が迫力満点に迫った。

「え……売り子が…… 」

私はブースを振り返った。

リュケさんが何故か槍を出しかけてる。

私、平和主義なのになんでこう巻き込まれるんだろう。

「オプディア、代わりを頼む。」

二フィロ君がもう一人の王宮警護官を振り返った。

え、俺こういうのしたことないですよとオプディアさんがたじろいだところをアーデギースさんが王宮警護官様よろしくおねがいしますと拝み倒してるのが見えたので目をそらした。


何故かダウリウス様とリュケさんもついてきた。

テントのはってある一角は食べたり飲んだりできるところらしい。


「こちらへどうぞ。」

二フィロ君がそう言って案内してくれたところは速攻で逃げたくなった。


な、なんで物産展に国王陛下ウェティウスへいか律様おうさまのはんりょさまが居るんですか……


律様はいつも通り子供抱っこだし……まあ、愛する相手を抱き上げまくるのはグーレラーシャ人男のデフォルトだけどね……


「泥棒猫は捕まえたのか? 」

国王陛下が二フィロ君に鋭いしせんを向けた。

その間も律様の背中を撫でてるのはさすがだろう。

「申し訳ございませんのがしました。」

二フィロ君が膝まづいた。

「そうか……律すまぬ。」

国王陛下が律様にくちづけた。

「ウェティウス様、そんなに重要なものでないので責ないでください。」

律様が少し青ざめて国王陛下を見上げた。


異世界の明正和次元から嫁がれた律様は小柄で可愛らしい、短い黒髪と緑に金の混じった不思議な色の目をしている。


対する国王陛下ウェティウス様は金髪の一本三つ編みに水色の瞳のクレシアの月と呼ばれた絶世の美女の母上様そっくりの美形……だけど細マッチョだ。


「そなたが私にくれた大切なものだ、必ず取り戻してみせる、二フィロ王宮警護官、カザフ外務担当官、ヒフィゼギルド管理官長、ドーリュム王宮分館管理官早急に取り戻すことを命じる。」

相変わらず人だけはよく覚えてる国王陛下が鋭い眼差しのまま命じた。


みんなで揃ってグーレラーシャの敬礼をしてうけたまわったけど……何盗まれたんだろう?



「あの女はこの辺りに住む魔法使いでカータシキ魔法塔国を追われたらしい。」

傭兵ギルド本部の情報ベースにアクセスしていたダウリウス様が通信機から顔を上げた。

すごいな傭兵ギルドの情報ベース……こんなことまで乗ってるんだ。

「あのマンションの上のかいにいるんですね。」

リュケさんが穏やかに笑った。

でも目は明らかに戦闘前の期待を隠せてない。

「さっさとやっちゃいましょう。」

二フィロ君も楽しそうだ。


なんだってこうグーレラーシャ人は好戦的なんだ。

私は平和主義だからよくわかんない感覚だよ。


「まあ、まて転移されたら事だからな、魔法対策は万全に、ちび、魔封じスプレーを用意しておいた、時間は長くないがいざとなったら相手にかけてくれ。」

ダウリウス様がそう言って私にスプレー缶を投げて寄越したので慌てて受け取った。


わざわざラズに渡さなくてもいいのにとリュケさんが言うと俺が信頼出来るヤツはちびだけだと平然とダウリウス様が色っぽく笑った。


まあ、たぶんこのメンバーではってことだよね、じゃないとダウリウス様寂しすぎだし。


「では行きますよ……」

二フィロ君がゴクリとつばを飲み込んで歩きだした。



グーレラーシャはあまり高い建物はない。

王宮ですら大部分が平屋で一部2階建てなだけだ。

中庭を含んだその建築様式は戦いに有利になるために考えて作られている。

一般的家庭も大体中庭をかこんだ平屋で高くても2階建てだ、アパートもマンションも大体せいぜい三階建なのにこのマンションは十階はあるみたいだ。


2階建て以上が余りないグーレラーシャにエレベーターは余り導入されてない。


「や、やっとついたよ。」

私は十階分階段を上がって荒い息をついた。


気配を探る。


「なにか騒いでるな。」

ダウリウス様がボソボソ囁いた。


扉の向こうで確かになんか聞こえる。

飛び込もうかな……


「そういえば……ラズ、武器は持っているの? 」

リュケさんが自分の槍を一瞬みて聞いた。


武器……武器はデリュスケシの王宮分館の自分のロッカーに卒業時支給品の鋼鉄の剣が……


「あ……持ってない。」

私はエヘっと笑った。

「先輩〜」「ちび〜」「ラズ〜」

みんなそろって信じられないという顔をした。


国民総傭兵のグーレラーシャ人として間違ってようと私は平和主義だから持ち歩かないんだよね。


「俺の予備のショートソードでも使ってろ。」

ダウリウス様が差し入れ小袋からポイッとショートソードをだして放り投げたので慌てて受け取った。


『わーんご主人様死んじゃ嫌にゃ!!』

扉の向こうで大声がして何かが倒れる音がした。


ダウリウス様が扉を蹴破った。

わ……あとで請求来るかな……


玄関から土足のまま音のする方にかける。

そこは実験室みたいなところでビーカーになにか怪しい液体が入ってたり何かの標本があったりする独特の雰囲気の部屋だった。


「わ、賊にゃ! 」

縞猫が机にうつ伏せてゴミ箱にむせこんでる美女の背中叩きながら叫んだ。


それに反応して美女が顔を上げた。


「この秘薬を奪いに来たのか。」

美女がむせこみながらバトンを上げた。


秘薬?秘薬と律様になんの関係が?


「なんのことだ? 大人しく捕まれ!」

二フィロ君が斧を構えた。


魔法使いがゆらりと立ち上がった。


「異世界の黒ウサギの作りし秘薬が有ればわが研究は進む……成果を上げカータシキ魔法塔国にわれは帰る! 」

バトンから風刃ウィンドカッターが出現して飛んできた。

よけると後ろの実験セットにあたってガシャンという音と共にフラスコが割れた。


中からこぼれた液体がジュワジュワと泡立ち異臭を漂わせる。


「止まるがよい! 」

魔法使いが叫んだ。

足元に接着剤がついたみたいに動かなくなった。

縞猫が壁を蹴って飛びかかって来た。

なんとか動く手でショートソードを振るった。

いつもの剣より短いショートソードでは届かずに縞猫の爪が腕を深くえぐった。


ポタポタと血が床に滴った。

痛すぎだよ~


「ちび〜! 」

ダウリウス様が魔法使いに鎖鎌を投げつけた。

魔法使いがよろめく

「許さないよ!」

リュケさんの槍が横から縞猫をなぎ払った。


「にゃーん。」

縞猫が壁まで飛ばされて壁に足をついてくるっと床に立った。

「まったくうるさい連中だ、われはこの秘薬で異世界人の力の秘密を知るのだ、じゃまするな!! 」

そう言って大きな白い箱かかげた。

「ご主人様、それはいけないにゃ!劇薬にゃ! 」

縞猫がぴょんぴょんととんでで取り返そうとした。


白い箱の蓋に猫の爪が引っかかってふたがやぶけた。


そこには……明らかに……


「それ、チョコレートじゃないんですか? 」

私は腕を止血しながらしてきした。


白い箱にはハート型のチョコレートがぎっしり詰まっていた。


「チョコレートがこんなに甘いはずないわ! 」

魔法使いが高らかに宣言した。


あ……それはたぶん激甘党ばかりのグーレラーシャ人の男……国王陛下にあげるためだからじゃないかな?


「チョコは甘いに決まってます! 僕も先輩のチョコほしいです! 」

二フィロ君が斧を縞猫に叩きつけた。

「……こ、これは秘薬だ! ネイ逃げるぞ! 」

魔法使いが転移しようとしている。

そ、そうだスプレー!!


私は差し入れ小袋から魔法封じのスプレーをだして吹きつけた。


「な、く……」

スプレーが分散されるに連れ動けるようになってきた二フィロ君が魔法使いにしがみついて床に転がした。


拘束符で後ろ手に拘束する。

われは帰るのだと魔法使いが苦しそうにつぶやいた……もうこんな似非塔などに住みたくないと……


ところ変われば家も変わるか……たしかカータシキは高い塔だらけだって言うもんね。


「みゅー。」

縞猫獣人は本物の縞の子猫に縮んだ逃げ出す前にダウリウス様が首筋を掴んで捕まえた、そのまま抱え込む、縞の子猫はジタバタしている。


筋肉男が子猫を抱え込む……ある意味微笑ましい。


「俺は猫よりちびが抱き上げたいんだが……」

妙に色っぽくダウリウス様はため息をついた。


あ……血が流れ過ぎてくらくらしてきた。

ラズ〜ってリュケさんの声がする。



気がつくと傭兵ギルド付属病院のベッドのうえだった。


「しばらく休むように陛下からのご命がくだった。」

ダウリウス様が腕組みして病室にいた。

「わ、私は仕事が……」

有給で売り子に来たのにまた傭兵業務って呪われてるのかな?

「問題ない、あの魔法使いはカータシキ魔法塔国に引き渡された……なんでチョコと秘薬を間違えてのだろうな。」

ダウリウス様が小首をかしげた。


たぶん激甘だったから勘違いしたんですよ。

ところでその床頭台のチョコの山はなんですか?


リュケさんとダウリウス様と二フィロ君からのバレンタインのチョコですか……


「あま。」

一応食べてみて思わず水を探して飲んだ。


こんだけ甘ければ秘薬って言われちゃうかも……


え……バレンタインにチョコをくれって?


今日はもうバレンタインじゃないんでホワイトデーにお返ししますよ。


アティウスに激甘の飴注文しとかないとね。


ホワイトデーって何だって? それはバレンタインのお返しして求愛を受けるかどうか男が決める日ですよ。


そんなのいつでもいいんじゃないかって? 日本人は奥ゆかしいんですよ。


まったく平和主義なのに何でいつも巻き込まれるんだろう……

駄文を読んでいただきありがとうございます♥

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] こんにちは! 阿野根さんが書かれるバレンタインの作品といえばグーレラーシャだよね♪ なんて勝手に盛り上がっていたので、激甘チョコの登場に大喜びしていました! チョコに認識されない甘さはさす…
2015/02/15 17:13 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ