王様! 質素倹約ですよ!
〔王様! 迷宮評価が5になりました!
それに伴って出来るようになったことをご説明します!〕
「良し! 頼む」
〔はい!
一つ目は迷宮の外に防人を出せます。
出せる上限は10体ぐらいまで、範囲は恐らくではありますが、出入り口から1キロトぐらいまでだと思います。
二つ目は作成出来る防人の種類が増えました!
従来からの4体に加え、
ブロンズマリオン
ブロンズゴーレム
ストーンガーゴイル
ブロンズガーゴイル
の作成が可能です!
最後に迷宮内の木製の扉以外の、家具や雑貨の作成が可能になりました!
以上です!〕
色々と出来ることが増えたようだ。
一つ目は願い続けたことだ。これで漸く素材や食料集め、水浴びも出来る……。自分の臭いながら酷いもんなぁ……。
二つ目の防人についても新しい種類が増えたのは嬉しい。
ガーゴイルとは、体長1メルトぐらいの人形で、鳥のような嘴と蝙蝠のような羽が特徴の下級悪魔を模倣した姿をしている。
その姿の通り、空を飛べるため速さに優れている。武器や防具などは装備出来ないらしいが、その速さで繰り出される爪での攻撃は強力であり、更に僅かながらも魔術を行使することが出来るため、遠距離でも活躍してくれる。
強力な上に作成するための、迷宮パワーや素材も少ないらしいが、迷宮コストが多いらしい。ストーンガーゴイルでも、迷宮コストが5だと言うから堪らない!
最後の家具や雑貨の作成だが作成可能なのは、
木製の扉
石製の扉
木製のベッド
石製の宝箱
らしい。
宝箱とは作成しても空の箱で、中身は自分で用意しなくてはいけないらしい。
しかし、思考評価の高い侵入者を相手にする時に戦利品などを入れて宝箱と思わせておき、2階層からは戦利品以外に罠も仕掛けるなど、戦略の幅を拡げられる。
色々と考えたいが、今は素材と食料集めを優先しなければ! ……もちろん水浴びも優先事項だ。
マオとストーンマリオンたちを連れて外に出る。出入り口の近くの茂みには、やはり2体のゴブリンがいる。
効率良く採取するために、ストーンマリオンたちを分散させたい。そのために、ゴブリンたちを先に倒すことにする。
一定の距離まで近付くと、ゴブリンたちが動き出した!
直ぐにストーンマリオンたちに3対1になるように命令を出す。マオには僕の護衛をしてもらう。
…………うん?
違和感を感じる。
目の前では僕の『命令通り』に3対1になって戦うストーンマリオンたちが映る。……命令通り!?
何故!?
ストーンマリオンたちの思考評価は低く、命令よりも見敵必殺を優先するはず……。
全員がギフトのブリキハートを持っている? いや、迷宮の言葉ではマオ以外は持っていなかった……。
考えている間にストーンマリオンたちがゴブリンを倒し終え、僕の方に集まって来る。
このことは、後で迷宮に評価を見せてもらうことにして、するべきことを優先する。
「3体は素材を集めてくれ。残りの3体は木の実やキノコを集めてくれ。
マオは引き続き僕の護衛だ。
……鹿や兎を見つけたなら狩って欲しいが、人間や魔物なら迷宮の中に戻るか、僕の方に来てくれ!
以上だ! よろしく頼む」
思考評価的には無理な命令だろうが、さっきのように命令を優先してくれるかも知れないと思い言ってみる。
理解したかどうかは分からないが、それぞれ動き出した。
僕はマオを連れて川に向かう。
数日ぶりに水浴びが出来ると浮かれて足早になっていたが、途中でマオがちょこちょこと小走りになっているのを見て、歩幅が違うことを思い出し速度を緩める。
ゴメンねと言う気持ちを込めて頭を撫でると、心なしか喜んでいるように見えた。
水浴びを終えてさっぱりとした僕は、皮の水袋に水を入れて迷宮の方に戻る。水浴びが長かったらしく、ストーンマリオンたちが全員戻って来ていた。
ストーンマリオンたちは、その小さな身体ながらも精一杯頑張ってくれたのか、予想していた量よりもたくさんの素材と食べ物を集めてくれていた。肉は無かったが木の実やキノコがいっぱいだった。
……毒の有る木の実やキノコも集めて来ているのは、仕方のないことだろう。
その後、集めて来てもらった素材と食べ物を迷宮の中に全員で運ぶ。その時にふと思い、ゴブリンの死体も運んでもらう。ストーンマリオンたちが迷宮の中に運ぶと死体が地面に埋まっていく……。迷宮パワーが4増えた。
やはり、迷宮の中でなければ駄目か……。
外で倒した時に迷宮パワーが増えなかったことで、何となく予想はしていたから特に驚くことでもないな……。
〔王様! お帰りなさいですよ!〕
「……ただいま」
朝の挨拶同様、慣れていないこともあって何となく恥ずかしく感じた。
「じゃあ、予定通りに防人と罠を作成しようと思うが、その前にストーンマリオンたちの情報を表示してくれ」
〔分かりました!〕
表示してもらったストーンマリオンの情報には変化が無く、思考評価は15のままだ。
「うーん……分からないなぁ」
〔???
何がですか?〕
「実はな……」
外での出来事を迷宮に説明する。説明している間も考えてみたが、やはり答えは出ない……。
〔不思議ですね……〕
「評価でもギフトでも無かったら何なんだろう? 僕の勘違いか?」
〔ギフト……?
もしかしたら、王様がギフトを得たのかも知れませんよ?〕
「その発想は無かったな……。
だけど、ギフトを得られるような努力をした覚えが無いんだが……」
〔一応、見てみましょう!
王様の情報を表示します。
王様
迷宮コスト 0
戦術評価 25
魔術評価 8
技術評価 62
思考評価 137
ギフト一覧
マイムマイム
です!〕
「何か有るな……。
マイムマイム?」
〔解析しますね?
……え~っとですね……。
マイムマイムは人形族に対してのみ効果の有るギフトのようです!
自身の使役する人形族などの、味方の人形族の全評価を上げる効果が有るようですね。
また、ギフト所持者の思考評価に因って効果や効果範囲が変動するようです。但し、普通の人形族に対してのみらしく、マオなどのように心が有ると効果が無いようです!〕
「おぉ!
僕にはかなり嬉しいギフトだな!
具体的な評価の上昇値は分からないか?」
〔う~……。
駄目みたいですね。〕
「そうか……。
まあ、分からなくてもそこまで問題は無さそうだな」
その後、ウッドマリオンを10体。
ウッドゴーレムを2体作成した。
……ガーゴイルも作成したかったが今は諦めるしかない。
迷宮コストがストーンガーゴイル1体だけでもストーンマリオン5体分だから、流石に今の状態で作成するわけにはいかない。質を求めるよりも今は量である。
「さて、マオを含めると防人が全部で19体だ……」
〔はい!
いっぱいですよ!〕
「そう……いっぱいだ。
だが、妥協は出来ない。前回のような侵入者が来たら今度こそやられかねん!
故に! 罠を作成する!」
〔わー! わー! ぱちぱち!〕
「……♪♪」
無駄に調子を上げている僕に迷宮が調子を合わせ、マオも石の手でカツカツと拍手を送ってくれる。
…………何故か切なくなった。
僕だって分かってるんだよ……。
でもね……調子だけでも上げないと、迷宮パワーの少なさに涙が出そうになるんだ。
「迷宮! 作成出来る罠を教えてくれ」
〔分かりました!
作成可能な罠は、
簡易落とし穴
簡易落石
簡易射槍壁
簡易毒針
簡易麻痺針
です!〕
「落とし穴と落石は分かるが……しゃそうへき? と毒針と麻痺針とは何だ?
それに、簡易の意味も教えてくれ」
〔分かりました! ご説明します!
射槍壁は、通路を歩いていたら壁から槍が飛び出てブスッといく憎い奴です!〕
「憎い奴……って、意味が分からんが気にしたら負けだろうな。続けてくれ」
〔はい!
毒針と麻痺針は宝箱などに仕込む罠です。
宝箱を開けたら飛び出てブスッといく粋な奴らです!〕
(さっきから調子が無駄に高いな……。
まさか!? さっきの僕の所為か?)
〔最後に簡易についてですが、これは発見や解除が容易だと言うことです〕
「なるほどな……」
〔それと、罠の素材についてですが、使用出来る素材がかなり限られます。
落石は石材だけです。
射槍壁は石材と鉄だけです。
針については石材と鉄ですが、更にそれぞれの針に付与させる物質を持つ物が必要になります。
毒針には石材の他に毒キノコなどですね〕
「なら、射槍壁と針は石製だけだな。
……作成しようと思うんだが、最後にもう一つ聞きたい。
どうすれば罠が発動するんだ?」
〔罠の発動範囲に入ると勝手に発動します。
ですが、罠は交戦状態の間しか発動しないので普段は大丈夫です。
交戦状態の時には、範囲に入ってしまいますと防人たちはもちろん、王様に対しても発動してしまいますので、気を付けて下さい〕
「僕は交戦状態の間は寝室にいるだろうから大丈夫だろうが……防人たちへの命令は注意しないとなぁ」
その後、良く場所を吟味した結果、1階層の東西の部屋に続くそれぞれの通路に簡易射槍壁を1個作成し、2階層の迷路の中にも簡易射槍壁を8個作成した。射槍壁の必要迷宮パワーは3で、かなり迷宮パワーが危なくなった。
もう何も出来ない……。
ゴブリン……来ないかな……。
迷宮情報 4日目
迷宮評価 5
迷宮パワー 53 毎日+10
迷宮コスト 11
迷宮階層 全2階
迷宮部屋数 全7部屋
防人一覧
マオ ストーンマリオン
ウッドマリオン 10体
ストーンマリオン 6体
ウッドゴーレム 2体
罠一覧
簡易射槍壁 10個