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王様! 出番が無いですよ! (三章 ギルド編)

フルトホルンの大通りの一角に建てられた施設――ギルド。

そのギルドの一室では、一人の女性が教壇に立っており、女性と向かい合うように椅子に座る十数人の少年少女たちがいる。


教壇に立つ女性は見る者全てが安らいでしまうような、柔らかい印象の優しげな笑顔を浮かべている。肩までウェーブしている髪は、クリーム色であることと柔らかそうな質感からふわふわなクリームを思わせ、女性の優しげな雰囲気を増大させている。

年齢はその落ち着いた雰囲気から、二十代後半ぐらいに思えるが、見た目は優しげなお姉さん……と言う感じで二十代前半に見える。


椅子に座っている少年少女たちは、そんな彼女と比べても若く、一番年上に見える少年でも十代後半ぐらいだろう。

そんな少年少女たちは、全員が真剣な顔つきで教壇の女性に視線を向けている。


「では、本格的な依頼……魔物討伐などの命懸けの依頼を貴方たちだけで受ける前に、基礎的なことをもう一度ご説明します。

確認の意味も込めていますから、理解していることでもしっかりと聞いて下さいね。

また、分からないことが有りましたら、手を挙げて質問して下さい」


「はい!」


「分かりました!」


「お願いします!」


教壇に立つ女性の言葉に、少年少女たちは礼儀良く応答する。

今の言葉から察するに、女性が少年少女たちに何かを教えるようだ。依頼と言っていることから、少年少女たちはギルドの新米冒険者たちで、本格的な命の取り合いに身を投じる前の、最終確認のようなものなのだろう。


既に熟練の冒険者と一緒に、実戦経験は積んでいるし最低限の知識は備わっているが、それでもこの最終確認を終えた後は文字通り独り立ちするため、誰もが真剣に女性の教えを受ける。


「まず……ギルドでの活動は簡単に言ってしまいますと依頼を受け、その依頼を完遂することですが……これは皆さんがそれぞれ街の中で出来る依頼をしているでしょうし、最低でも一度は熟練者の方と一緒に魔物討伐に向かっているはずですので、大丈夫ですね?」


女性の言葉に、少年少女たちが大丈夫だと言う応答をする。その応答に女性は柔らかい笑顔のまま満足そうに頷く。


「では、依頼の受け方については問題無いようですから次に進みます。

次はギルドランクについて説明します。

ギルドランクとは、簡潔に言いますとギルドからどれだけ信用されているかを表す物で、下からC・B・A・Sとあり、一定の信用を得ることでランクが上がっていきます。

皆さんのギルドランクは、残念ですがまだありません。

ですが、ギルドの受付で冒険者になるための申請をした際に手渡されるギルドカードが最低限の証明になりますので、街中での配達などの依頼は受けられていたはずです。しかし、街中の依頼以外の危険な依頼を皆さんが受けるにはギルドランクが必要になります。……もちろん意地悪などでは無く、危険な依頼を何の経験も無く受けてしまい、皆さんが危険な目に遭ってしまわれるのを防ぐためです。

ですので、この説明が全て終わってからギルドの受付に行き、手続きを終えていただきますとギルドランクCが得られます」


ここまで大丈夫ですか?


そう問い掛ける女性の視線に、はい! と元気良く言葉を返す。


「では、次に……ギルドランクによる違いと、ランクを上げる方法について説明します。

と言いましても、どちらも説明するほどのことではありません。ギルドランクを上げる方法は、依頼を完遂することと魔物などを討伐することです。

そしてギルドランクによる違いですが、ランクが上がりますと、ギルドのランク所持者に対するギルドの信用が上がります……つまり、ランク所持者は高ランクであればあるほど、ギルドによる実力と人柄の保証が強くなると言うことです」


そこまで説明し、再び理解しているかを女性が確認する。


「あ、あの! 質問してもよろしいでしょうか?」


「はい、どうぞ」


そんな女性に向かって、短い赤髪の少年が手を挙げて質問の許可を求め……その少年に向けて女性は笑顔で質問を了承する。

「は、はい!

ランクを上げる方法についてですが、魔物討伐と依頼完遂は依頼内容によっては同義になるはずではないでしょうか?」


赤髪の少年の言葉に、何人かの少年少女たちがなるほど、と思う。

ランクの上げる方法が魔物討伐と依頼完遂と言うならば、魔物討伐の依頼を完遂することで良いわけで、わざわざ二つに分けて説明する必要は無いはずだ。


その疑問の意図に当然、女性は気付いていたのだろう……むしろ、そこを疑問に思ってもらいたかったのか、一段と柔らかく微笑んだ。


「良い質問ですね。

その疑問について説明しましょう。

依頼完遂と魔物討伐を分けて言った理由ですが、ギルドランクの上げる方法は、魔物討伐の依頼を完遂する……だけでは無いからです。

ギルドランクは先に説明した通り、ギルドからの信用を表しています。

その信用とは、冒険者としての実力はもちろんですが、その人の人柄も含まれます。

ですので、依頼を完遂することによって誠実さ……つまり人柄を証明し、魔物『など』を討伐することによって実力を証明しているのです。

つまり魔物討伐に行かなくても、護衛や犯罪者捕縛などの依頼で実力を証明しても良いわけです。

実力について証明出来ましたら、後は誠実さなどを証明するため、簡単な依頼を受けるだけで良いわけです。


長々と説明してしまいましたが、簡単に言ってしまいますと依頼完遂で人柄に対しての信用を。

魔物討伐などの危険な依頼で実力に対しての信用を。

その二つの信用を以って、ランクを上げてもらえるわけです。そのため、敢えて二つに分けた言い方をさせていただきました。

余談かも知れませんが、ランクBに上がるには、戦術・魔術・技術評価の平均が60ぐらいが目安です。ランクAは90ぐらいですね」


「わ、分かりました。ありがとうございます」


「こちらこそ、質問していただいてありがとうございます」







「とまあ、漸くひよっこ共がランクを手に入れたわけだ」


「うむ……フィガロもルビィーリアもご苦労じゃったのう……」


「まっ、依頼されたことだからな」


「いいえ……私も楽しみながらやらせていただきましたから」

説明会が終わって数時間後のギルドの一室で、三人の男女が話し合っている。初老の男性――ギルドマスターが、隻眼の大男――フィガロと、説明会の際に教壇で説明していた女性――ルビィーリアに対して労いの言葉を掛けているようだ。


ギルドマスターの労いの言葉に、ルビィーリアは柔らかい笑みを浮かべながら返し、フィガロは清々したと言うような感じで返す……が、何だかんだで楽しんでいたのだろう、少しだけ笑みが零れていた。



「それで? 労いの言葉を掛けるためだけに呼んだわけじゃないんだろ?」


「相変わらず直ぐに本題に入りたがるのう……」


「ギルドランクSをわざわざ『二人』も呼んでるんだからよぅ……大変なことでも起きてんじゃねぇのか? なら早い方が良いだろうよ」


「うむ……では、進撃のフィガロと『癒し手』のルビィーリアの両名にある依頼……調査に向かってもらいたい」


フィガロの言葉に、ギルドマスターが佇まいを整える……それに倣い、フィガロとルビィーリアも佇まいを整えた。


「フィガロに依頼した先の調査により、あの山一番の脅威であったゴブリンキングが『純潔のリリィによって』倒されたことが判明された。更に純潔のリリィによって、あの山の魔物はかなりの数が討伐されておる。故にあの山は暫くの間は安全じゃろう……。

そこでギルドランクSの両名がこの地を離れても問題無いと思われるため、とある報告の調査に向かってもらいたい」


「……報告と調査の内容を教えてくれ」


「うむ……ここフルトホルンが在る『ソプラーノ地方』から北西……『メッゾ地方』に在る森の中の洞窟に、ミノタウルスを見たと報告が有った」


「ミノタウルス? メッゾ地方にか?」


その報告に思わずフィガロは眉を顰める。


ミノタウルスとは体長三メルトに届く巨体を持ち、身体は人間のようだが首から上は牛の姿を持つ魔物であり、その巨体を余すこと無く包み込む筋肉は、圧倒的な暴力と鉄壁の鎧と化している。

基本種であるミノタウルスですら戦術評価が90ほどで、手練れの冒険者すらも容易く命を奪われる。


しかし凶悪な強さを持つ魔物なため、発見したら直ぐに討伐隊が派遣され討伐される……。

そのため、現在はミノタウルス種と言えば、とある地方にしか生息していないはずである。


「ミノタウルスが何でメッゾ地方にいやがるんだ?」


「分からぬ……虚偽の報告の可能性も無きにしもあらずと言うところじゃ。故に……お主たちに調査に向かって欲しいんじゃよ」



「……分かった! 本当にいやがるんだったら、まずいからな……明日夜明け前に出発してみるぜ」


「うむ……すまんがよろしく頼む」


「おう!」


「お任せ下さい」




次の日……進撃と癒し手はフルトホルンを離れ、北西の地……メッゾ地方の森に向かって行ったのであった。


「ルビィ、行くぞ! 俺について来い」


「はい……フィガロ様。

どこまでもお供致します」







迷宮情報

???

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