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王様! リリィちゃんの依頼ですよ!

「もちろん良いですよ! ねっ、お兄さん?」


「…………」


シーナは家族が増えると喜んでいる……。

リリィが迷宮に住むと言うことは、家族だと言っても問題無い。同じ迷宮――家に住み一緒に生活する……それは家族だろう。

家族の長としても、リリィのような良い子は大歓迎だ。きっと仲良く出来ると思う。

迷宮の主としても、強力な戦力を持つリリィには是非とも一緒にいて欲しい。


「お兄さん……?」


「……リリィ。ここに住みたいと思った理由を、教えてもらっても良いだろうか?」


「…………うん」



リリィから、リリィの生い立ちを始め、僕たちに出会い、一緒にいたいと思ってくれた時までを説明してもらった。


リリィらしく、自分の気持ちもしっかりと伝えてきたので、僕たちとの出会いの時の説明は聞いてるこっちが恥ずかしい。

確かに散策中も僕たちは楽しんでいたが……第三者からの目線で説明されると、恥ずかし過ぎる……見られていると知っていたら、年甲斐も無くはしゃぐことはしなかっただろう。


……過去に戻れるなら過去の自分を殴りたい。


…………閑話休題。


『進撃』と言う気になる言葉も出たが……これについては後回しとする。

とりあえず、種族の別無く、楽しそうな僕たちの姿と、リリィに付いた風評を信じずにリリィを信じたことが良かったようだ。

正直……純潔の異名を知らなかっただけだし、僕にしてみればそれだけ? と思う気もするが、その『それだけ』すらも彼女にとっては得られなかった大切なもの何だろう。


彼女の気持ちを聞いて、僕からも一緒にいて欲しいと思ってしまう……が、やはり『今は無理』だろう。


「僕もリリィと一緒に暮らせることは嬉しい……でも、今は無理だ」


「あっ……」


「えっ……? お兄さん?」


「まっ、待った! 今は無理と言っただけで、ここに住むことを反対したわけじゃない!」


僕の言葉を聞いたリリィとシーナの雰囲気が、一気に悲しみを纏わせて、マオもむいむいと押してくる。いつものマオは太股を押してくるが、今日の僕は座っているため、手が届く脇腹をむいむいと押してくる。


そんな三人の反応に慌てて言葉を付け足す。


「…………」


じゃあ、どういう意味なの? と訴え掛けている二つの視線と一つの気配が僕に向かってくる……。何故か僕が悪い感じになっているが……それでも言わなければ!


「リリィ……先に言っておくけど、僕もリリィが一緒に迷宮で暮らすことには賛成だ。

迷宮で一緒に生活するわけだから、リリィも家族……と言うことになる。

家族が増えるのは僕も素直に嬉しいし……迷宮の戦力として考えさせてもらっても、リリィが一緒ならありがたい」


「うん……私も……迷宮のために……頑張る!」


「ありがとうリリィ」


「お兄さん……でしたら、どうして今は駄目何ですか?」


今の僕の言葉から、駄目な理由が見当たらないからだろう……ますます分からないと言う表情でシーナが聞いてくるが……。


「リリィは今、依頼を受けているだろう?」


「……うん」


「なら……今、ここで一緒に生活していたら、依頼は失敗……だな」


「!!!

……駄目……だね」


「あぁ……」


リリィは何故、今が駄目なのかを理解してくれた。ならば、話は早い……。


「依頼……完了……させてから?」


「……出来れば、二、三ぐらい別に依頼をして欲しい……怪しまれる」


「……そう……だね。うん……分かった」


「ごめんな?」


「大丈夫……頑張る!」


本当は直ぐにでもここで生活したいだろう……。

だが、リリィは明日にでも戻るはずだ。

頑張る! と意気込むリリィに、頑張れ! と気持ちを込めて頭を撫でる。やはり撫でられるのにも慣れていないのだろう、少しだけ緊張して身を固くさせた……が、直ぐに嬉しそうにふわりと微笑む。


また一人……家族が増えた時だっ「私にも説明して下さーい!!」……。


「どうしたシーナ?」


「どうしたも何も有りませんよー! お兄さんとリリィさんだけで話を終わらせないで、私とマオちゃんにも分かるように説明して下さーい!」


「……!」


シーナが両手を上げて叫ぶ! 同じくマオも両手を上げる……二人とも、酷く興奮している。

とりあえず、興奮しながらでは話が出来ないと思って、頭を撫でる……。

直ぐに二人とも大人しくなってくれた。……頭を撫でるのを考えた人は偉大だと思う。




「では、お兄さん……説明をお願いします」


「……」


「あぁ……分かった」


落ち着いた二人と向かい合い、どういうことか説明する。


「リリィはこの山に依頼で来ている。当然、依頼人がいるわけだ」


「はい……貴族ですよね」


「あぁ……それでだ……仮に、リリィがここで生活するとして……依頼人はどうすると思う?」


「えっ? どうすると言いますと……」


「依頼したはずの人間が、中々帰って来なかったら、倒されたか逃げたか……理由はどうであれ、依頼が失敗したと思うだろう?」


「そう……ですね」


「なら、依頼人が次にすることは何だろうか?」


「えっと……もう一度……依頼を……あっ!」


「そう……依頼人は失敗したと判断して、もう一度依頼をするはずだ」


それも依頼を失敗した人間よりも、更に強力な相手に依頼をするだろう。


「つまり、今直ぐにリリィが迷宮で生活してしまったら、リリィに依頼した依頼人は再びこの山に人を来させるだろう。

そのリリィの後任が、リリィのように僕たちの迷宮を発見してしまうかも知れない……だけならば未だしも、侵入して来たら……仮に侵入者を倒したとしても……」


「また別の人が依頼を受けるんですね」


「あぁ。だからこそ、リリィには依頼完了のために、戻ってもらわなければいけない。

更に、依頼完了直後にリリィが迷宮に来るのもまずい。この山での依頼を終えて直ぐに行方を眩ませてしまえば、この山に原因が有るかもと誰だって思うだろう。

そうなったら、結局誰かが調査か何かで来ることになる」


「だから、依頼を二、三ぐらい受けて欲しいって言ってたんですね……」


「そうだ……別のところに行っていて消息を絶てば、少なくともこの山が原因だとは気付かれないだろう」


「……うぅー、私がここに住まわせていただく時と違って、リリィさんの場合は大変何ですね……」


「そうだな……そういえば……シーナはどうする? 働ける場所を探していたんだろ? リリィが町に向かう時に一緒に行くか?」


「……お兄さんは私に町に行って欲しいですか?」


「……いいや、折角家族として一緒に暮らしてるんだから、僕としてはこれからも一緒にいて欲しいな」


正直……言うのは恥ずかしい。でも、それ以上に大切だと……一緒にいたいと思うからこそ、素直に気持ちを伝えないといけない。

恥ずかしいからで離れることになったら、それこそ後悔するだろう。


「お兄さんは相変わらずはっきり言いますね……言われた私の方が恥ずかしいですよ。

でも……お兄さん、私もです……これからもよろしくお願いしますね」


はにかみながらも、シーナは幸せそうに微笑んでくれていた。僕もきっと同じように笑っているんだろうな。




その後は、説明の途中で話が分からなくなってしまい、仕方なく畑部屋にいたマオと、眠り続けている迷宮についてリリィにきちんと紹介してから、夕食を食べ、今日を終えることにした。……僕たちが寝る時も迷宮はずっと眠ったままだった……時折、収穫でしゅよ! と言って楽しそうなので放っておこう。


未だ布が完成していないため、一つのベッドで寝ることになったが……当然狭かった。右腕はシーナの枕、左腕はリリィの枕、足の間にはマオが丸くなっている。


……リリィも一緒に寝ることに抵抗無いんだな。

……えっ? 誰かと寝るのは初めて? 何だか嬉しい? そうか……嬉しいなら良いか。


……マオ、大人しくしてくれ……太股をむいむいするんじゃない。


……そういえば、リリィから進撃って言う冒険者……シーナからリチャードって言う貴族のことを聞かないとなぁ……明日、ちゃんと聞こうか……な。







迷宮情報 21日目

やっぱり変化無し  

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