王様! 侵入者が来ないですよ!
「ご馳走様でした!
今日も美味しい料理をありがとう、シーナ」
「どういたしまして♪
……それじゃあ、私は畑部屋で作業をしてますね」
「……!」
「マオちゃんも草取りするの? じゃあ、一緒に行こう?」
「……♪」
「行ってらっしゃい。
……マオ? 空に舞ったトロモイの苗はちゃんと埋め直すんだぞ? シーナも見ていてやってくれ」
「はい!」
「……!」
ニコニコと楽しそうに笑っているシーナと、僕の言葉にコクコクと頷きながら、シーナと手を繋いで畑に向かうマオの後ろ姿を眺める。
〔王様……〕
マオとシーナが畑部屋に行ったのを確認してから、待ってましたと言わんばかりに迷宮が僕を呼ぶが……。
「言いたいことは分かる。
侵入者が来ないことだろう?」
〔はい……今日を含めますと四日、侵入者が来ていません!〕
そう……今は昼過ぎ。
今日の朝から今に至るまで侵入者は来ていない。
一日二日ならば問題は無い……が、四日間も侵入が無いのは可笑し過ぎる。なまじ、先日までは迷宮の内外で毎日のように魔物がいたため、より可笑しさが増している。
〔ゴブリンたちも来ませんね……迷宮たちを気にしないことにしたんでしょうか?〕
「いや……それは考え難いな。
ゴブリンキングが直接やって来たぐらいだ。
あれほどまでに僕たちの迷宮に侵攻して来ていたのに、今更気にしないってことは無いだろう……」
にも関わらず、ゴブリンたちがやって来ないのならば、考えられるのは……。
〔迷宮に割けるだけの戦力が無くなった……と言うことでしょうか?〕
「……もしくは、迷宮以上の脅威に対応しているか……だ」
ゴブリンたちがどれだけの戦力を擁していたかは分からない。
しかし、僕たちとの迷宮で……決戦の時まででも、少なくとも50体近くは失っている。
更に、ゴブリンたちは仲間割れをして群れが分散しているはず……。
もちろん、仲間割れと言うのは、僕と迷宮の憶測に過ぎないが……。
そう考えると迷宮の言った通り、単純に戦力が無いだけかも知れない……。
それならば、こちらとしては迷宮パワーが安定しないと言う……それだけで済む。
〔脅威……ですか? 冒険者とかでしょうか?〕
「……それが一番可能性が有りそう何だよな。
ゴブリンだけが来なくなったのなら、ゴブリンたちの戦力の問題何だが……ウォルグやリッパーコルト、ランバウトも来ていない」
〔……ランバウトはゴブリンマージに釣られるようにして、ここに侵入して来ましたから何とも言えませんが……確かにウォルグとリッパーコルトまで姿を見せないのは違和感が有りますからね。
現時点では、冒険者が魔物討伐に来た……と言うことが一番有力そうです〕
…………冒険者か。
迷宮に敵意を以って来る以上は侵入者――敵だろう。
気は重いが守るモノのためにも……倒すことを躊躇するつもりは無い……だが。
「問題は、冒険者たちを僕たちの戦力で倒せるか……だな」
魔物と違い、装備品も充実しているだろうし、連携もしっかりしているはず。
その上、十分な経験を積んだ冒険者ならば、評価も高いだろう……。
冒険者の討伐が行われたと仮定して考えて、ゴブリンやウォルグ、リッパーコルトすらも迷宮に来ないほどに討伐された……となれば、かなりの数の冒険者が来ているのか……もしくは強力な歴戦の冒険者が来ているのか。
「……少なくとも、今の戦力で冒険者と戦いたくは無いな」
〔そうですね……〕
「とりあえず、どこまで考えても結局は憶測の域を出ない……。
今日の夜までは様子を見て、侵入者が来ないようなら、明日にでも近辺を散策してこよう」
〔分かりました! ……ですが〕
「分かってるよ……無茶はしない」
「はい!」
明日……魔物が出るか、冒険者が出るか。
どちらにしても、生還こそを至上と考えないとな……。
「お兄さーん! 見て下さい見て下さい!
ワタタン草で無事に服を作りましたー!」
畑部屋への扉が勢い良く開けられ、手に服を持ったシーナが幸せいっぱい! と言うような笑顔で走って来た。
そんなシーナの後ろでは、勢い良く開けられた扉が、その勢いによる反動で閉まろうとしたのだが、ゴンッ! と『何か』にぶつかり、音を立ててもう一度開かれた。
開かれた扉の先――畑部屋の中には、フラフラとよろめいているマオの姿が在った……。しかし、そんなマオにも気付かずにシーナは服を持ってニコニコしている。
服作ったんですよ! 褒めて褒めて! と言わんばかりで、犬の耳と犬の尾が有れば、ぴこぴこふりふりしていそうなほどだ。
とりあえず、頭を撫でるとニコニコ笑顔が蕩けて、フニャフニャ笑顔になった。
「服を作ったのか?」
「はい♪ お兄さんと私とマオちゃんの分です!」
「おぉ……マオのまで作ってくれたのか? ありがとう」
「家族ですから当然です♪」
撫でられながら、愛らしい笑顔で言ってくれる。
本当にシーナは良い娘だ。
……でもな?
「確か……ベッドの敷き布と掛け布を作るんじゃなかったのか?」
「エヘヘ~…………えっ? ベッド?」
「えっ?」
「…………」
「…………」
「……畑部屋に戻って作業しますね?」
「……うん」
「わ、忘れてはいなかったんですよ! ほ、本当に本当……ですからね!」
「そうだな……頑張ってくれ」
「うぅ……頑張ります」
顔に赤みを帯びつつ、畑部屋に向かうシーナを見ながら、僕は明日のために休んで、英気を養うことにした。
「…………」
「……マオちゃん?
何? 何で私のお尻を押すの?
わっ? ちょ、ちょっと……きゃっ!?」
畑部屋から、マオの無言の圧力とシーナの悲鳴が聞こえ、その直後にバタッ! とシー……何かが倒れるような音が聞こえたが……まあ大丈夫だろう。
「うぅ~……鼻が痛いです」
〔今日も平和で良いことですよ!〕
「……そうだな」
迷宮から距離が有る山の中、木々の隙間から零れる月明かりに照らされた戦いの舞台で、白いドレスの女性が踊る。
女性がステップを踏めばウォルグの首が飛び、もう一度ステップを踏むとリッパーコルトが銀色の軌跡に貫かれる。
やがて白いドレスの女性の踊りが終わり舞台から退場する。
舞台に残るのは、魔物たちの屍のみ……。
「…………」
今日はもう終わりなのだろう……眠そうな女性は小さく欠伸をして寝床を探す。
寝床が見付かったのだろうか……一本の大木の前まで来ると満足げに頷き……女性の身体が消える。女性は消えてから直ぐに姿を現した……が、姿を現した場所は大木の上だった。いつの間に登ったのだろうか……?
大木の上にいる女性は大きな幹に身体を預け、目を瞑る。
「…………流石に臭う」
しかし、直ぐに目を開ける……どうやら自分の体臭が気になるらしい。
「……明日……水浴びする」
僅かに顔をしかめながらも、今日は我慢することにしたようだ。
明日……水浴びしようと考えながら……白の女性は眠りに就いた。
迷宮情報 19日目
迷宮評価 9
迷宮パワー 637 毎日+14
迷宮コスト 39+2
迷宮階層 全3階
迷宮部屋数 全10部屋
住人一覧
シーナ シビリアン
防人一覧
マオ ストーンマリオン
ウッドマリオン 20体
ストーンマリオン 5体
ブロンズマリオン 5体
ストーンゴーレム 2体
ストーンガーゴイル 2体
ブロンズガーゴイル 1体
罠一覧
簡易射槍壁 12個
施設一覧
畑 規模(小) 2反
人物一覧
無し




