王様! 嵐の前の静けさですよ!
仲良く家族と暮らす王様が住む迷宮から、山道を挟んで存在する洞窟の中……たくさんのゴブリンが集まっており、ゴブリンはもちろんゴブリンジェネラル、ゴブリンウォリアー、ゴブリンマージと揃っていた。
「キィ……」
「キキィ!」
キィキィと喧しい鳴き声が洞窟内に響く……。
その騒がしさは、ゴブリンキングが倒された時と同じぐらいだろうか。
ゴブリンキングが倒されてから、少数に分かれていたはずのゴブリンジェネラルたちも揃っていることから、彼らにとってとても大変な事態が起こってしまったようだ。
ゴブリンたちが生息しているこの山は、誇張抜きで広大な山であり、当然、彼ら以外の魔物や動物も多種多様に生活している。
生活している生き物が多ければ争いが起こるのは必然で、当然の如く、彼らも自分たちの生活のために戦ってきた。
しかし、彼らは弱かった。更に、装備品は扱えるものの頭も悪かった。
ゴブリンジェネラルやゴブリンマージは確かに思考評価が高い……簡易罠を防げる、逃げ時も誤らない!
だが、それだけなのだ。
彼らには独自の攻撃方法が無い……ウォルグのように強力な素早さと鋭利な牙と爪は無く、リッパーコルトのような頑強な甲殻も毒針も無い。
それでも彼らがこの山で一大勢力を持てたのは、今は亡きゴブリンキングがいたからこそだった。
ゴブリンキングは装備品を扱うことは出来ても、調達することは出来ない同胞たちを巧みに率い、人間たちの落とし物や使えそうな山の動植物を集め、全体の戦力の底上げをした。
更にウォルグやリッパーコルト、ランバウトなどと戦う時にも的確な指示を出し、自身も最前線で勇敢に戦い、数多くの勝利を齎した。
人間はもちろん、他の魔物からも雑魚と侮られ蹴散らされたゴブリンたちにとって、ゴブリンキングは英雄であり、この山で生活する全てのゴブリンたちから必要とされている存在だった。
しかし、その英雄はもういない……。
ゴブリンたちの未来に必ず危険を齎す迷宮に向かい……倒された。
考えることが出来ないゴブリンとゴブリンウォリアーはともかく、ゴブリンジェネラルとゴブリンマージは仇を取りたかった……だが、ゴブリンキングは事前にあることを伝えていた。
我が倒されたら逃げろ……我の仇討ちなど考えるな……と。
自分を倒すほどの敵を、自分無くして倒すのは難しい。無理に仇討ちをした結果、同胞が全滅することこそ何よりも避けるべきだと考え、ゴブリンジェネラルたちとゴブリンマージたちに伝えていたのだ。
その思いを汲み取り、悲しみに暮れながらも迷宮から撤退した。
その後の動きは迅速だった。
ゴブリンキングの言葉を守り、生きるために行動し始める。
自分たちが無能なのを本能で理解しているゴブリンたちは、それでも知恵を出して考える。
そして考え抜いた結果、ゴブリンジェネラルの中で少しでも優秀な者を仮の長として、複数に分かれて新しい住み処を探すことにした。
全員で固まっていたら、それこそ何か有ったら全滅してしまう。だからこそ、手分けして探すことにしたのだ。
……一度だけ、一矢だけでも報いんと決死の覚悟で望む者が迷宮に突撃してしまったが、それ以外は全て新天地を探して山の中を走り回った。
当然、少数であるがために人間や他の魔物に倒される者たちもいた……。
それでも! 漸く新天地を見つけることが出来た。
……だが、ゴブリンキングが亡くなり、戦力も分散している今が好機と、ウォルグたちが彼らを殲滅しようと群れで襲って来たのだ……。
その数は凡そ50体。
新天地を探索していた幾つかの群れは既に全滅しており……残った群れは再び住み処に集まり、今に至る。
ウォルグたちをどうするべきかと……。
話し合いの結果、この戦いは新天地に移動するために避けては通れない戦いだと皆が理解し、ゴブリンジェネラルたちを筆頭にウォルグたちとの決戦に臨まんと、住み処から50体近くのゴブリンたちがウォルグの群れに向かって出発した。
明日の朝には会戦となるだろう……敵はウォルグ。奴らは手強く、苦戦は必至だろう……しかし、彼らは負けるつもりは無い。
今は亡き英雄――ゴブリンキングの願いでもある……生き残るという未来のために!
オルガーンと呼ばれる町にフードで姿を隠した人物が現れ、直ぐに山に向かって歩いて行く。
「……ヤラレーの頭、今のって……」
「あぁ……純潔のリリィだ…………くそっ!
今から行くんなら積み荷回収出来たじゃねぇか!」
「諦めるしか有りやせんね……」
ゴブリンたちが決戦に向かっている時、ゴブリンたちの住み処から山道を挟んだところに在る迷宮の中、一人の男が木材とボロボロの赤いマントを解して整えた糸を持って作業をしていた。
〔……王様ー! 暇ですよー!〕
「気合いで頑張れ!」
〔……相手して下さいー〕
「後少しで完成するんだ……相手はそれからだ」
〔何をやってるんですかー?〕
「……太古の時代に存在した女王様がおっしゃられた言葉らしいが……」
〔はい……?〕
「パンが無ければ、ウドンを啜れば良いんちゃうんか?
と言っていたらしい」
〔ウドン? 何ですかそれ?〕
「分からん……。
しかし! 伝えたいことは理解出来る!
食べる物が無いなら、他の物で補えと言うことだ!」
〔おぉー……?〕
「肉が無いなら、魚を食べれば良いちゃうんか? と言うことだ!
……良っし! 釣竿完成だー!!」
〔川で魚を釣るんですね?〕
「あぁ! マオは草取り、シーナはワタタン草の加工で忙しいだろうから、ガーゴイルとブロンズマリオンを連れて釣りに行って来る!」
〔頑張って下さい!〕
「おう!」
その後、王様は川に釣りに行き、大物が掛かったりもしたが、糸が切れたり勢い余って川に落ちたり、一緒に釣竿を持ってくれたブロンズマリオンが1体、足を滑らせて流されていき、それを助けに行ったら王様も流されて……。
それでも何とか帰って来れたと思ったら、置いて行かないで連れてって欲しかったと少女――シーナが不満げだったのを宥め、同じく置いて行かれたと思った小さな護衛――マオに不満そうに太股をむいむいと押され続ける王様がいたらしい……。
迷宮はのんびりと平和だったようだ。
迷宮情報 16日目
迷宮評価 9
迷宮パワー 718 毎日+14
迷宮コスト 39+2
迷宮階層 全3階
迷宮部屋数 全10部屋
住人一覧
シーナ シビリアン
防人一覧
マオ ストーンマリオン
ウッドマリオン 20体
ストーンマリオン 5体
ブロンズマリオン 5体
ストーンゴーレム 2体
ストーンガーゴイル 2体
ブロンズガーゴイル 1体
罠一覧
簡易射槍壁 12個
施設一覧
畑 規模(小) 2反
人物一覧
無し




