王様! 防人作成ですよ!
補足説明
ミリメートル→ミリト
センチメートル→セント
メートル→メルト
キロメートル→キロト
です。
昨日の回想を終えた僕は、直ぐに迷宮を拡張することにした。
昨日の僕はかなり無用心だった。魔物がやって来るかもしれないのに、何もせずに眠ってしまったのだ。
今の迷宮内は、入り口から普通に歩いて二十秒も掛からない距離の通路と、ベッドが有る小さな部屋……これだけである。
流石に不味い。これでは殺してくれと言っているようなものだ。
「迷宮変化!」
〔迷宮を変化させます! 王様、どうしますか?〕
「どうやれば変化させられる?」
〔出来上がった状態を想像するか、若しくは変化させたい所を口頭で言って下さい。その変化を開始する前に、その変化に使用する迷宮パワーをお伝えします〕
想像するだけで良いのか……ふむ。
まだ迷宮パワーが侵入者有りで、一日どの程度増えるのか分からない。節約するつもりで作成する部屋の数も少なくしよう。
そう考えて、とりあえず想像する。
今の寝室代わりの部屋から南に通路が有り入り口が有る。
寝室代わりの部屋に東西への通路を伸ばし、短い通路の先に小部屋をそれぞれ作成する。その小部屋から、それぞれ北に通路を伸ばす。
その通路を寝室代わりの部屋の北にくるように東西に更に伸ばして、寝室代わりの部屋の北にかなり大きめの部屋を作成する。その部屋の北側に通路を伸ばして、その先に小部屋を作成。此処を寝室としよう。
「以上だけど……迷宮パワーはどれくらい掛かる?」
〔部屋に必要な迷宮パワーは10です。
通路に必要な迷宮パワーは7です。
合計で必要な迷宮パワーは17ですが、変化させますか?〕
「頼む」
〔迷宮変化を開始します!〕
グラグラと僅かに揺れを感じ始める。その揺れの中、壁が崩れていき通路が出来ていく。
暫くすると揺れが治まった。
〔迷宮変化を完了しました!〕
出来上がった通路を歩いて確認する。想像通りの部屋と通路になっていた。
寝室にベッドを持って来ようと思ったら、ドスンッ! と音を立てて降ってきた。
〔交戦中で無ければ、内装は幾らでも動かせます!〕
内装と言うその言葉を聞き、扉が無いことに今さらながら気付く。扉を設置したいと言うと、作成可能な木製の扉には木材が足りませんと言われた。
……外に行けば手に入るだろうが、迷宮の王になってからは魔物を引き寄せてしまう。
魔物がいたら怖いので防人を作成してからにする。
……そう思ったけど、防人の作成にも素材が必要なことを思い出した。
…………。
結局、ドキドキしながら外に出ていき、オドオドしながら素材を集めて、ビクビクしながら足早に迷宮に帰る。
その際、近くの川で水を汲むのも忘れない。
……こんな調子では住んでいた小屋にも辿り着けそうにない。……特に価値の有る物も無かったし、諦めよう。僕の食べる物はどうしようか。……手持ちの干し肉で我慢しよう。後のことは干し肉が無くなってから考えよう。
帰って来てから直ぐに防人作成を始める。扉は防人を作成してからにする。
「……作成出来る物が分からない。何が作成出来るのか教えてくれ」
〔現在の迷宮評価で作成可能な防人は、
ウッドマリオン
ウッドゴーレム
ストーンマリオン
ストーンゴーレム
以上です!〕
……少ない。選択の余地が余りにも無い。
気を取り直して、作成可能な防人で有る、マリオンとゴーレムについて聞いてみた。
マリオンは背丈が80セント程の人形らしい。武器を扱うことぐらいは出来るようで、武器を渡してあげればそれを使って攻撃するらしい。動きは速くも無いが、遅いわけでも無い。必要な迷宮パワーと素材、コストも少なくてお手頃らしい。
ゴーレムは2メルトを超える無骨な人形らしい。武器を扱うことは出来ないが、その巨体から繰り出す拳で殴り飛ばすらしい。力が強い反面、動きは鈍重らしいが、耐久力は有るようだ。必要な迷宮パワーと素材、コストもマリオンに比べると少し多いらしい。
ウッドとストーンでも必要な素材はもちろん、迷宮パワーと性能も変わってくるらしい。
悩んだ末に、ウッドマリオンを5体、ウッドゴーレムを2体、ストーンマリオンを3体作成することにした。
〔ウッドマリオンに必要な迷宮パワーは5、木材は5です。ウッドゴーレムに必要な迷宮パワーは6、木材は6です。
ストーンマリオンに必要な迷宮パワーは9、石材は3です。合計で必要な迷宮パワーは20、木材は11、石材は3ですが、作成しますか?〕
頷くと置いてある素材がズブズブと地面に埋まっていく。埋まった木材は80セントの丸太が4本と30セントぐらいの小枝が3本だった。量などで必要数が決まるらしい。
素材が埋まってから数十秒後、地面から木で出来た人形たちと石で出来た人形たちが出て来た。
マリオンの顔は丸くて卵に鼻を付けたようなだけで、身体も作り込まれてはいない。簡単な人の模型のようだ。
ゴーレムは丸みの有る身体のマリオンと違い、ゴツゴツと角張っている無骨な人形だ。顔も四角く、鼻も特に作られていない。だが、無骨な分全体的に太く頑丈そうだ。
〔作成された防人の情報を表示します。
ウッドマリオン
迷宮コスト 複数で1
戦術評価 12
魔術評価 3
技術評価 20
思考評価 15
ウッドゴーレム
迷宮コスト 1
戦術評価 40
魔術評価 6
技術評価 8
思考評価 10
ストーンマリオン
迷宮コスト 1
戦術評価 21
魔術評価 12
技術評価 18
思考評価 15
〕
防人の情報が目の前の壁に表示された。
「ウッドマリオンの迷宮コストと、それぞれの評価について教えて欲しい」
〔分かりました! ご説明します!
迷宮コストの表示が複数となっている場合は5体でそのコストとなります。6体でしたら、迷宮コストは2となりますので、5体ずつで作成することをオススメします。この複数コストはウッドマリオンだけではなく、それ以外の防人にも当て嵌まります。
次に評価についてご説明します!
評価とは防人たちのそれぞれの能力の平均的な強さを表しています。
戦術評価は戦闘に関する強さ、力や体力、攻撃力や防御力などを数値にしたものです。魔術評価は魔法に関する強さ、魔力や精神力、魔法に依る攻撃力や魔法に対する防御力などを数値にしたものです。
技術評価はその名の通り、技術に関する能力、脚力や鍵開け、採取や料理、掃除など実に様々なものを数値にしたものです。
思考評価もその名の通り、思考力のことです。高ければ高い程、複雑な命令もこなしますし応用も出来るようになります〕
「うん? 能力を別々に数値には出来ないのか? 攻撃力と防御力なんて、全くの別物だよな?」
〔それぞれの能力を正確に数値で表すことは不可能です。
と言うよりも、意味が有りません〕
「??? 何故だ?」
〔例えば、攻撃力が100だったと表示します。ですが、それはどの状態での数値か分かりません。
絶好調の時の数値かも知れませんし、疲労困憊の時の数値かも知れません。
その時の体調はもちろん、機嫌など感情でも能力とは変化するものです。更に、マリオンたちのような人形ですら、武器や身体の損傷具合、戦場の状態で能力は大きく変化します。
ですので、能力を細かく個別に数値を決定付けるのは意味が有りません。
そういう理由から、近接戦闘はこれぐらい出来ます。魔法はこれぐらい出来ます。等と言う意味で評価と表示しています〕
「なるほど……強さの目安を表示しているのか……」
〔はい! 人間たちの中では嘗ては能力の数値を正確に個別で表示していたらしいのですが、能力の高い者たちを集めて魔物討伐をした際、疲労や傷などによって、その数値の半分も出せない者が多く現れて討伐は失敗に終わったらしいです。それからは人間たちの冒険者ギルドや、騎士団などでも評価を使い出したらしいですよ?〕
「なるほど……。
ところで、僕の評価も表示出来るか?」
〔もちろん出来ますよ?
王様
迷宮コスト 0
戦術評価 25
魔術評価 8
技術評価 62
思考評価 136
ですね!〕
「……極端だな」
〔ノーコメントです!〕
その後、寝室の入り口と迷宮の出入り口に扉を設置―――2つの扉作成で迷宮パワーを1、木材を1使った―――してマリオンたちには迷宮徘徊の命令を出し、ゴーレムには寝室前で警備するように命令を出した。
「ところで、防人たちは外に出せないのだろうか? 素材を集めてこさせたいんだけど……」
〔残念ですが、迷宮評価が足りません!
迷宮評価が5になりましたら、迷宮から近い場所なら行かせられるようになりますよ!〕
「残念だ……後4か……」
〔???
いえ、後3ですよ?
先程の迷宮変化と防人作成で、迷宮評価が1上がりました〕
「そうなのか? そういうことは、早く言ってくれ」
〔すみません。更に、迷宮評価が上がったので魔物の侵入率も上がりましたよ!〕
「嬉しそうだな? 僕は恐いんだが……」
〔大丈夫ですよ! 強力な魔物はまだやって来ませんよ。
今の迷宮評価でやって来る魔物はマリオンやゴーレムでも十分倒せますよ!〕
「強力な魔物が来ないと何故言えるんだ?」
〔まだ迷宮評価が低いからですよ。
瞬殺出来る相手から金塊を1個だけ奪うより、多少強くても倒せる相手から金塊を100個奪う方が良いからです〕
「結晶の質が良くなるまで来ないのか……。
良くも悪くもまだ弱いんだな」
〔そうですね! 王様、頑張っていきましょう!〕
迷宮情報 2日目
迷宮評価 2
迷宮パワー 167 毎日+6
迷宮コスト 6
迷宮階層 全1階
迷宮部屋数 全5部屋
防人一覧
ウッドマリオン 5体
ウッドゴーレム 2体
ストーンマリオン 3体
罠一覧
無し