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王様! 少女と話し合いですよ!

「…………」


「…………」


少女と目が合い続けること数秒……。

未だに唇が重なったままだと気付き、ゆっくりと離す。


「…………」


「…………」


「…………キャ「悲鳴は待った!」むぐむぐ!」


悲鳴を上げられそうになったので、直ぐに手で口を塞ぐ。常識的に考えて、目を開けたら男に口づけされていた何て状況なら、悲鳴を上げるだろうと思っていたからこそ、素早い対応が出来た。

……別に上げられても迷宮内だから問題は無いように思えるが、近くにいる僕の耳は大変なことになってしまう。

それに一度悲鳴を上げられたら、話し合いが出来るまでに時間が掛かる。

……正直、もう眠りたい。


「むぐむぐ……」


「手荒な真似をするつもりは無いけど、悲鳴を上げられると五月蠅いし話が出来ないから、ちょっとだけ我慢して欲しい」


「…………むぐ」


少女は口を塞がれた直後は、怯えを孕んだ眼で僕を見ながらじたばたと暴れていたが、僕の言葉を聞いてからは大人しくなり、少ししてから頷いてくれた。

暴れても無駄だと判断したのか諦めたのか。

どちらにしても、僕は説明するだけだが……。


「とりあえず、君を見つけた時の話から始めようか……。

君は迷宮の入り口で倒れていたんだ。

夕暮れ時に少女が一人で迷宮の入り口にいた何て、どう考えても可笑しいだろう? だから、君を見つけた時は、罠か何かかと考えて警戒していたんだ……。でも、背中に深い切り傷を負っているのを見て罠じゃ無いと分かってね、一先ず手当てだけでもするべきだと考えて此処まで連れて来たんだ」


「……むぐぅ?」


「……手を離すけど、悲鳴は勘弁して欲しい」


「むぐっ!」


少女が頷いたのを確認してから、口を塞いでいた手をそっと離す。

押さえが無くなった少女はベッドからゆっくりと身体を起こし、簡単ながらも自身に巻かれている包帯代わりの布を確認して、背中を見ようと身体を捻ったところで痛んだのだろう、ひぅ! と小さな声を出し、背中を見ようとすることを断念して、こちらに顔を向ける。

……捻った時、余程痛かったらしく涙目になっていた。


「あの……手当てをしていただいてありがとうございます。

それで……その……幾つかお聞きしてもよろしいでしょうか……?」


「あぁ、構わない」


「ありがとうございます……。

ここはどこでしょうか?」


「君が倒れていた迷宮の中だよ」


「???

えっと……冒険者さん……でしょうか?」


「いや……この迷宮の主……かな」


「…………お兄さんは魔物何ですか?」


「迷宮の主では有るけれど人間だよ」


その返しに少女は少し驚いている。

迷宮の主が人間なのは珍しいのだろうか?


「迷宮の主さん何ですね……凄いです!」



〔えっへん、当然です! 王様は迷宮の王様何ですよー!〕


「迷宮の主になって日は浅いけどね。

……他に聞きたいことは?」


「あっ、はい。

お兄さんの迷宮から町へは近いのでしょうか?」


……やはり迷宮の声は聞こえてはいないらしい。

突然声を出した迷宮に、何の反応もしていない。


「町か……一番近いのがフルトホルンの街何だが、それでも結構な距離があるぞ?」


フルトホルンの街とは、僕が薬草を売りに行っていた町で、商店はもちろん、行商や旅人などの行き交いがかなり多く流通が激しいため、町では無く街と呼ばれている。


「そうですか……」


「君はどこに行きたかったんだ?」

「働ける場所が有るところです……」


「漠然としているなぁ。

それに働ける場所――町を目指している割りには、こんな山奥にいるわけだし……。

まだ聞きたいことは有るかも知れないけど、先に君の事情を説明してもらっても良いだろうか?」


「……そうですね、ご説明します」


それから少女が自身のことを説明してくれた。

孤児院で生活していたこと。

孤児院の在る領地の領主が変わったこと。

その領主が孤児院への寄付を止めてしまい、結果孤児院が潰れたこと。

その後は孤児院を目指す者たちと働きに行く者に分かれ、自分――少女もまた働くために仲間たちと別れて町を目指したこと。

街道を歩いていたら、盗賊に連れ去られたこと。奴隷として売られることになり、盗賊の馬車に乗せられ山を越えようとした時に、ウォルグの群れに遭遇したこと。

盗賊は馬車を捨てて逃げ出し、自分を含む奴隷がウォルグに襲われたこと。

慌てて逃げ出したが、急に背中が痛み出して―――ウォルグから逃げ出す最中であることと、傷の様子から少女の背中の傷はウォルグにやられたのが妥当だろう―――痛みと疲れで身体が動かなくなっていき、倒れる直前に横穴に入りそこで意識が失ったこと。




「…………事情を教えてくれてありがとう……怖いことまで思い出させてごめんね」


孤児院の話をしている間に、孤児院のことを思い出したのか涙を溢れさせていた。

更に続く盗賊とウォルグの話で恐怖を甦らせてしまい、更に涙を溢れさせ、自身の肩を抱きしめながらベッドで小さく震えていた。


「大丈夫だから。

ここには盗賊もウォルグもいないよ……」


「ひっく……ごめ……ごめんなさ、い」


〔ぐしゅぐしゅ……〕


震える少女を抱きしめながら、大丈夫、大丈夫と自分に出来る精一杯の優しげな声で少女を落ち着かせようと頑張る。

……可哀相だと思ったのか、迷宮も泣いている。

……お前は何がしたいんだ。




「あ、あ、あの!

本当にありがとうございました」


「気にしないでくれ。

事情を説明させてしまった僕が悪い」


〔そうです! 王様の鬼畜! 悪魔!

でもそんな王様が迷宮は大好きです!〕


暫くして少女が泣き止み、慰めたことへの礼を言ってくる。落ち着いてくれたようで何よりだ。

……迷宮はもう眠ってくれないかな。夜特有の変な興奮で、いつも以上に可笑しくなっている気がする。


「それで、君はこれからどうする?」


「あっ!」


「うん?」


「あ、あの……もう少しだけ、ぎゅっ! としてもらっても良いですか?」


「???

あぁ……分かった」


改めて今後を話し合うために抱きしめていた少女から離れるが、少女のお願いされ再び抱きしめる。

きっとまだ怖いんだろう……。抱きしめた少女の背中をぽんぽんしようとして傷が有るのを思い出し、頭を撫でる……撫でられた少女は気持ち良さそうにしている。


「街まで送りたいけど、迷宮の主は魔物に狙われ易くてね……。

何か対策を考えてから、フルトホルンの街を目指すってことで良いだろうか?」


「はい……ご迷惑をお掛けします」


「なら、暫くは迷宮で一緒に生活するわけだから、僕の家族を紹介しておこう……マオ?」


流石に少女を一人で放り出すわけにもいかないし、僕が一緒なら魔物に狙われ易くなるだけだ。

防人はまだ1キロト程度しか出歩けない……。

フルトホルンの街へは僕の小屋からで18キロトぐらいだったから、迷宮からは大体12キロトぐらいだろうか?

少なくとも、少女と魔物ホイホイの僕だけでは10キロト以上は無理過ぎる。

少女には悪いけど、迷宮で生活をしてもらうことになる。少女も申し訳なさそうに応じてくれた。


迷宮で生活してもらうために重要な、人形たちを紹介しようとマオを呼ぶが……寝室の隅っこで膝を抱えて座っていた。

相手にされなくて拗ねているのだろうか?

しかし、僕の声に反応して立ち上がりこちらを振り向き、嬉しそうにちょこちょこと近寄って来た。


「この子がマオと言う名前の僕の家族。

よろしくしてあげて欲しい」


「…………」

「マオちゃんですか?

よろしくお願いします。

私の名前はシーナです……ごめんなさい、そういえばお兄さんにも言ってませんでしたね。

改めてよろしくお願いします」


少女――シーナを抱きしめるのを止め、近寄って来たマオを抱き上げてシーナに紹介する。

マオは片手を上げて挨拶し、シーナがそれに応えるが……そうだった名前を聞いていなかったな。


「後は、マオ以外の人形が上の階層にいるし、僕にしか声が聞こえないけど、迷宮も生きているよ」


「人形さんたちと、迷宮さんですか?」


「マオ以外は普通の人形って感じだから、余り反応が無いかもね。

迷宮は泣き虫だから、君の事情を聞いて泣いていたよ」


「そうなんですか?

……迷宮さんと話せないのが残念です」


「だそうだが……迷宮、何か言いたいことは有るか?」


〔…………〕


「迷宮……?」


〔……くぅ……くぅ〕


何……だと!?

さっき確かに寝てくれないかと思ったが、本当に寝てる!?

迷宮って泣いたり歌ったりだけじゃなく、眠ることも出来るのか……。


「お兄さん? どうしました?」


「迷宮は寝ているみたいだ。迷宮が眠れる何て初めて知ったよ……」


「色々と凄いですね、迷宮さん……」


「そうだなぁ……。

迷宮との挨拶はまた後にして、とりあえず今日はもう眠ろうか。迷宮の中だから分かりにくいけど、今は深夜で零時を疾っくに過ぎているんだ……。

正直、もう眠くてね……」


「は、はい!」


「ベッドが一つしか無いから、申し訳無いが僕と一緒に眠ることになるけど我慢してくれ」


「!!! 分かりました!」


「あぁ……じゃあお休み……」


シーナに横にズレてもらい、ベッドに入る。

ゴブリンキングとシーナのことと、長い一日だった……。

もそもそとシーナとは逆の方で何かが動いている。少しだけひんやりとした小さな物だから、マオだろうか?

何で入って来たかは分からないが、疑問よりも眠気の方が強く、意識が睡魔に因って陥落していく……。




「それと……お、お兄さん?

キ、キ、キスをするのは、出来れば私が起きている時にお願いしましゅ……ね?」




……何か全力で説明しないといけない勘違いをされている気がしたが、陥落しきった意識は夢の中に誘われて……いってしま……った。







迷宮情報 10日目

迷宮評価 8

迷宮パワー 740 毎日+13

迷宮コスト 33+2

迷宮階層 全3階

迷宮部屋数 全10部屋


防人一覧

マオ ストーンマリオン

ウッドマリオン 20体

ストーンマリオン 5体

ブロンズマリオン 5体

ストーンガーゴイル 2体

ブロンズガーゴイル 1体


罠一覧

簡易射槍壁 12個


施設一覧

畑 規模(小)


人物一覧

シーナ シビリアン

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