王様! ゴブリンキングとの決着ですよ!
2階層の大部屋の南……通路の前まで走る。直ぐ後ろから、ゴブリンキングたちの迫る気配を感じる……。
「逃ガサヌ!」
階段を降りきったゴブリンキングたちを、振り向いて確認する。
2階層に降りて来たゴブリンは、ゴブリンキングの他に、ゴブリンジェネラルとゴブリンウォリアー、ゴブリンがそれぞれ数体ずつのようだ。
……もう少しだけ数を減らしたかったが……仕方が無い。
大部屋の南――通路前で、ゴブリンキングたちの方に向き直る。
そのゴブリンキングたちに、待機させていたストーンゴーレムとストーンマリオンが殺到する!
「……コレガオ主ノ我ヲ仕留メルタメノ罠ナラバ、我ハオ主ヲ過大評価シテイタラシイナ……」
「…………」
「沈黙スル……本当ニ万策尽キタカ……?
迷宮ノ王ヨ……少シ残念ニ思オウ。
我ガ刃ニテ冥府ヘト向カウガ良イ!」
まだだ……。
ゴブリンキングの口上を聞きながらも、ストーンゴーレムとストーンマリオンと、戦っているゴブリンキング以外を注視する……。
「終ワリニシテヤロウ! 迷宮ノ王!!」
その言葉と共に、ゴブリンキングが鉄の剣を掲げ、僕に向かって突撃して来る!
階段のゴブリンたちとの距離が開いている……。
……今だ!
「迷宮! 防人作成だ!
ウッドマリオンを20……いや30体!
最終確認はもちろんいらない! 最速で作成してくれ!」
〔了解しました! ウッドマリオン30体を作成します!
交戦状態のため、必要迷宮パワーは5倍となります!
ウッドマリオン作成に必要な迷宮パワーは150、素材は木材が30です!
確認無しで作成します!
…………必要素材が足りません!
作成範囲内の素材で作成可能数は27体です!
必要迷宮パワーは135です!
その数で作成を継続します!〕
交戦中に倒して得られる迷宮パワーを考慮して、20体作成するつもりだったが、予想以上に迷宮パワーが増えたことも有り、更に10体上乗せした……が、用意して有った木材の方が足りなかったか……。
だが、これで……。
木材が埋まっていく光景に、ゴブリンキングが僅かに眼を見開いたが……直ぐに不敵な笑みを浮かべた。
「作成……ト言ウコトハ、伏兵ノツモリダッタカ?
ソレガ本当ニ最後ノ策ナラバ、残念ダッタナァ……伏兵ガ現レル前ニ、オ主ノ首級ヲ掲ゲサセテモラオウカ!!」
ゴブリンキングが更に突出して来る……。
1体だけで……。
僕とマオの方に、向かって来る!
単身でも僕を仕留め得ると、慢心して突出する……言い換えれば、孤立している!
もはや恐怖から来る震えは、ゴブリンキングを挑発していた時ぐらいから限界を超えて、感覚が麻痺しているのか、震え無くなっていた。
しかし、僕でも分かるような明確な殺意を受け、再び身体が震え始める……歯がカチカチと音を立てる。
そんな僕の前に、小さな勇者が立つ……。僕を守るように。それでも震えは止まらない!
だが! この僅かな間だけで良い……!
僕の身体……動いてくれ!
勝つために……動いてくれ!
「ストーンゴーレム! ゴブリンキングの背後を強襲しろ!
叩き潰せ!」
「フン! 小癪ナ!
……何ダト!?」
僕の言葉に、ゴブリンキングは後ろ良く見ずに、振り向きざまに鉄の剣を一閃させる……だが、ストーンゴーレムは他のゴブリンたちの相手をしていて、ゴブリンキングには見向きもしていない!
ストーンゴーレムは思考評価が低いから、ゴブリンが目の前にいる状態で、命令を聞くことは無い。
ストーンマリオンに命令してしまえば、ストーンマリオンは命令に反応してしまい、ストーンマリオンに隙が出来、結果交戦中のゴブリンにやられてしまうだろう……。
だが、命令通りに来ると思っていたゴブリンキングは、背後を見る暇も無いまま咄嗟に鉄の剣を振ってしまった……。
空振りと言う、大きな隙を生み出して!
その隙を逃す理由は無い!!
「『ストーンガーゴイル』! ゴブリンキングに魔術を放て!!
更に魔術を放ってから直ぐに、自身も突撃してくれ!」
「カカカッ!」
隙を見せたゴブリンの王に、2階層の通路に待機させ、僕が戻って来てからは僕の背後に隠していた、4体目の……最後のストーンガーゴイルが魔術を放つ!
孤立した王を守る者は誰もいない。
その裸の王に、人間の頭ほどの大きさの火の玉が飛んで行く! 更にその火の玉のをストーンガーゴイルが追うように飛ぶ!
仕留められるとは思っていない。
だが、かなりの痛手は与えられるはずだ……!
「ヌゥ! ヌオォーーー!!!」
「カカッ!?」
なっ!?
しかし、迫る火の玉に気付いたゴブリンキングは、振られた鉄の剣に因って泳いだ身体を一回転させ体勢を戻し、そのまま鉄の剣を持っていない左手で火の玉を『握り潰し』、火の玉の後ろから襲い掛かるストーンガーゴイルに、ドスリ! と、鉄の剣を突き立て地面に串刺しにする!
突き立てられたストーンガーゴイルは、辛うじて消えてはいないが、時間の問題だろう……。
ストーンガーゴイルの魔術と突撃は、左手に火傷を負わせるだけで、防がれてしまった……。
でもな……?
僕はストーンガーゴイルで仕留められるとは思って無い!
言わずとも理解してくれる小さな勇者が、ゴブリンキングとストーンガーゴイルの一連の攻防が始まる前に動き出し、ストーンガーゴイルがやられた瞬間に、ゴブリンキングの左手の方から攻撃を仕掛ける。
狙うのは……鎧に覆われておらず、且つ、致命傷になり得る箇所……首だ!
「……!!」
「!!?
オノ……レーー!!」
「……!?」
マオの持つ銅の剣が、ゴブリンキングの首を切…………れなかった。
横薙ぎに銅の剣を振るおうとしたマオの頭を、剣が振るわれるよりも速く左手で掴み、地面に叩きつけられた。
「流石ニ肝ガ冷エタゾ……?
見事ナ策ダッグヴェッ!!」
…………グチュリ! と、肉に突き刺さる生々しい感触が両手に伝わって来る……。
僕の両手に、強く握られているのは銅の剣。前日の僕を仕留めようとしたゴブリンジェネラルからの戦利品だ。
殺されかけたため、最低限の備えとして、防人に渡してはいなかった物を、ストーンガーゴイルと同じく通路に隠していた。
「ガ……ァ……!? ゴプッ!」
「油断しただろう……?
伏兵と強襲を全て防いで……残るのは、戦えない迷宮の王だけだと思って油断しただろう!?」
「ゴフッ! ……マ、サカ……!」
「僕は戦えないんじゃない! 『戦わなかった』んだ!」
そう……迷宮の王になってからは防人がいることと、魔物に狙われやすくなったことから戦わなくなっただけで、本当は有る程度は戦える。
全く戦えなかったら、一人暮らしの時に山奥には住んでいない……。
ゴブリンジェネラルたちが偵察していた時に、僕自身は何もしなかった……。
あのゴブリンジェネラルの強襲の時にも、不意を突かれたことと油断していたことから、身体が動かなかった……。
非常の時でも一切動かない僕は、偵察していたゴブリンたちから見たら、どう考えても戦えない王にしか見えなかっただろう。
実際、あの後直ぐにはこの作戦は思い付かなかったが、勝つための作戦を練るうちに、戦えないと思われていることを逆手に取ることを思いついた……。
尤も……昨日の今日の付け焼き刃のような作戦だったから、流石に完璧に上手くいく何て思っていなかったが……。
「この戦いは……僕たちの勝ちだ!!」
ブヂュリ! と、更に首に銅の剣を深く食い込ませていく……首と胴が分かれるように。
ゴブリンの王……死んでくれと、強く願いながら……。
だが……!
「オ゛ォ゛ォ゛!!!」
「ガッ!!?グハッ!?」
〔王様っ!!〕
突然、脇腹に衝撃を受け、その衝撃の余りの強さに身体が跳ね飛ばされ壁に叩きつけられる……。
ゴホゴホと咳き込む口からは、血が吐き出される。
な、何が……?
痛む脇腹と溢れる血を無視して、ゴブリンキングがいる場所に視線を向ける僕の眼に映ったのは、銅の剣を首から生やし、今にも倒れそうに弱々しく身体を震わせながらも、僕を殺さんとする殺意を湛えた眼を向ける、ゴブリンの王の姿だった。
「迷……ギュ……ウ゛ノオウ゛……見事ダ……ッタ。
ワレ゛ハ……ダズカランダロ……ウナ。
オヌ゛ジノ……勝チダ……」
その王が自身の最期を告げながらも、一歩……また一歩と近付いて来る……。
「ダガ……ナ゛?
ワ゛レハ……同胞タヂ……ノ、タメニ゛モ゛……オ主ヲ……冥府ヘ……ノ、道ヅ……レニ……」
「あ……あぁ……」
〔王様っ!!
立ち上がって下さい!
どうか逃げて下さい!〕
分かっている……!
だけど! 逃げようと身体を動かそうとしても、動かないんだ!
ゴブリンの王が一歩近付く……。
僕は……動けない!
ゴブリンの王が一歩近付く……。
壁に張り付いたかのように、壁に預けられた身体は動かない……!
〔王しゃま!!!〕
「共……ニ、冥……府ニ……マイ゛……ロウ゛……ゾ!!」
鉄の剣がゆっくりと、ゴブリンの王の上まで持ち上げられる……。
周りではまだ、ゴブリンたちと防人たちが争っているはずなのに、耳には何も入っては来ない……。
……なのに、迷宮の声だけは聞こえる……。
また泣いてるなぁ……。本当に僕と共に在る迷宮は泣き虫だな……。
泣いてしまうのは、全部僕のためだけど。
……僕が死んでしまったら、迷宮も崩壊するんだっけ?
それは嫌だな……。
迷宮に突然契約させられた時はびっくりしたけど、一人暮らしでは得られないモノが得られた……。迷宮とマオという……家族だ。
大切な家族を……死なせたくはない……。
そう……だ!
僕の所為で、家族を死なせるわけにはいかない……!
最後まで……最期まで抗ってみせる!
ゴブリンキングを睨みつける! 殺されて堪るかと!
家族を守ると決意して、ゴブリンキングを睨みつける僕に、ゴブリンキングの鉄の剣が振り下ろされ…………ずに、ゴブリンキングの首が切り落とされた……!
崩れ落ちる首無しのゴブリンキングの身体の傍には、銅の剣を握り締めるマオの姿が在った……。
「マ……オ……?」
倒れ伏したゴブリンキングと、マオの姿を見つめながら……僕は……意識を……失った。
耳にはやはり、迷宮の声が届きながら……。
迷宮情報 10日目
迷宮評価 8
迷宮パワー 754 毎日+13
迷宮コスト 6+2
迷宮階層 全3階
迷宮部屋数 全10部屋
防人一覧
マオ ストーンマリオン
ウッドマリオン 17体
ストーンマリオン 2体
罠一覧
簡易射槍壁 12個
施設一覧
畑 規模(小)
人物一覧
シビリアン 1体
侵入者一覧
ゴブリンジェネラル 4体
ゴブリンマージ 1体
ゴブリンウォリアー 8体
ゴブリン 5体
(いらない)補足
迷宮情報に、きっと誤字は有りません。




