王様! ゴブリンたちの王ですよ!
……心のどこかで、期待していた。
ゴブリンたちの評価が高いけど、こちらは数で圧倒出来ると……。
ゴブリンたちがどれほどまでに強かろうと、数に依る戦略で勝てるだろうと。
だが! そんな都合の良い話が有るわけが無い。
ゴブリンたちはこの一戦に全てを懸けている……。当然だろう。こちらの迷宮評価が上がれば上がるほど、奴らはここら辺での生活が苦しくなる。
ゴブリンを超える評価を持つ魔物が現れるようになれば、蹂躙され喰われるんだから……。
だから……奴らは……ゴブリンたちは全戦力を投入して来る。簡単に分かるはずだ……!
…………今更過去の楽観的な考えを責めても、意味は無い……。
今は……この状況をどうするかだ。
〔王様ぁ…………〕
「ゴブリンたちの方が、評価も数も多いのは変えることが出来ない事実だ。
だからと言って……諦めるつもりは無い!
迷宮! 情報を……奴らの評価を教えてくれ!」
〔は、はい!
侵入者の情報を表示します。
ゴブリン 24体
戦術評価 20
魔術評価 2
技術評価 16
思考評価 14
ゴブリン 12体
戦術評価 20+1
魔術評価 2
技術評価 16
思考評価 14
ゴブリンウォリアー 15体
戦術評価 34+3
魔術評価 3
技術評価 18
思考評価 15
ゴブリンマージ 5体
戦術評価 10+1
魔術評価 28+1
技術評価 14
思考評価 33
ゴブリンジェネラル 6体
戦術評価 30+3
魔術評価 3
技術評価 25
思考評価 36
ゴブリンキング 1体
戦術評価 62+8
魔術評価 16
技術評価 32
思考評価 58
以上です……〕
「ゴブリンキング……か」
正直、ゴブリンの王は予想以上の評価を有していた。
戦術評価はストーンゴーレムすら上回っている……。更にそれ以外の評価も軒並み高い。
……ゴブリンたちの情報を見て、救いだと感じられたのは、ゴブリンが半数以上を占めていたことだ。ウッドマリオンはともかく、ストーンマリオンなら十分渡り合える。ゴーレムたちの攻撃を当てられたら、一撃で倒せるかも知れないし、最低でもかなりの痛手を与えられるだろう。
……一部の防人を2階層に待機させて、残りの全防人たちを1階層の大部屋に待機させる。
……僕も急ごう!
〔王様も前線に出られるんですか!?
だ、駄目ですよ! 死んじゃいます!〕
1階層に走る僕に、迷宮が慌てて聞いてくるが……
「何処にいてもやられる時はやられるさ!
それに、防人たちを僕の視界に入れる必要が有る」
〔……ギフトですか?〕
「あぁ」
そう、ギフト……。
どれほどの効果が有るかは分からないが、それでも無いよりはマシだろう。
…………それに、それ以外にも僕が前線に出る必要が有る。
……勝つために!
大勢で来たために、ゴブリンたちは入り口と最初の小部屋で、群れていた。
東の通路や北の通路にも向かって行くゴブリンがいる。
簡易射槍壁だったが、ゴブリンは思考評価が低いため、3体がそこで倒れてくれた。少しは幸先が良いと思える……。迷宮パワーが6増えた。
1階層への階段が有る、2階層の大部屋に辿り着いた。
地図を見ると、ウッドマリオンとウッドゴーレムが戦闘を開始していた。
ウッドの防人しか出していないが、ゴブリンたちもゴブリンだけしか前線に出していないようで、通路前での包囲陣形を敷かせたため、こちらが優勢に戦えているようだ。
ウッドの防人たちが頑張ってくれている間に、2階層の準備を急ぐ。
2階層の大部屋に木材を階段を囲むように置いていく。
武器無しのストーンマリオンを4体、ストーンゴーレムを2体、2階層の大部屋に待機させ、更に…………。
残りの防人たちを連れて、1階層の大部屋に向かう。
ゴブリンウォリアーとゴブリンマージが前線に出て来てしまったのだろう……ウッドマリオンとウッドゴーレムは全滅していた。
だが、全滅までに精一杯戦ってくれたのだろう……ゴブリンがかなり減っていた。……迷宮パワーが32増えていた。
『焼け焦げていた』ウッドマリオンとウッドゴーレムの身体が、消えていった……。
…………ありがとう。
準備出来るほどの時間を稼ぎ、奮戦してくれたことに。
ゴブリンマージが魔術を使えることを、その身を持って教えてくれたことに。
包囲を失った大部屋に、続々とゴブリンたちが侵入して来る。
ゴブリンとゴブリンウォリアーを前衛に、ゴブリンジェネラルとゴブリンマージを後衛に。
……後衛の更に後方に、一際大きいゴブリンが見える。鉄の剣を持ち、鉄の鎧に身を包み、赤いマントを羽織っているゴブリン……。
奴が……ゴブリンキング。
睨みつけるように眺める僕の視線と、奴の視線が交差する……。
ゴブリンの王は勝ち誇った笑みを浮かべていた。
奴の眼には、怯えを隠そうと強がっている僕の姿が映っているんだろう。
……事実そうなんだが。
「同胞タチヨ!! 死ヲ恐レルナ!!
我ラノ同胞ヲ喰ライ、我ラノ住ミ処ニ災イヲ齎ス迷宮ノ王ヲ今コソ討タン!!」
「―――!!!」
ゴブリンキングの咆哮とも言える言葉に、ゴブリンたちが同じく、咆哮のような言葉で返す。
「はははっ!
その同胞を盾にして、自分は安全な後ろから高見の見物か!?
ゴブリンの王は口先だけでなれるんだな!」
お前が言うなと言われそうな言葉で、ゴブリンキングを罵る。
奴が……奴だけが突っ込んで来てくれなければ意味が無い。
「ホウ……?
我ヲ愚弄スルカ?
安イ挑発ダナ……。
ダガ! 我モコノ群レノ王トシテノ誇リガ有ルノデナ……ソノ挑発ヲ受ケテヤル!!
我ガ、オ主ノ息ノ音ヲ止メテヤロウ!!
」
ゴブリンキングが……動いた!!
奴はゴブリンジェネラルを連れて前に……僕に向かって来る!
「今だストーンガーゴイル! 空から強襲しろ!!
狙いは……ゴブリンマージだ!!」
「カカッ!」
「ヌゥ!? 何ダト!!?」
3体のストーンガーゴイルが、ゴブリンキングがいる中央を避け、左右に迂回しながら後方のゴブリンマージへと突撃する!
総じて魔術評価が低い防人たちが、一番やられやすいのはゴブリンマージの魔術だ。
挑発をしてでもゴブリンキングをこちらに向かわせたのはこのためだ。
先にストーンガーゴイルたちを向かわせても、ゴブリンキングやゴブリンジェネラルに遮られる……だからこそ、せめてゴブリンキングだけでもゴブリンマージたちから遠ざけたかった。
……ゴブリンジェネラルまで離れて行ったのは、嬉しい誤算だが……。
「小癪ナ真似ヲ!
構ワヌ!
迷宮ノ王ヲ討テバ終ワル!
全軍! 迷宮ノ王ヲ狙エ!!」
ゴブリンキングが檄を飛ばす!
その声に前線の全てのゴブリンたちが、僕に狙いを定めて突撃して……来ない!
依然として、周りにいる防人たちと争っている……。思考評価の低さから、前線のゴブリンとゴブリンウォリアーは目の前の敵にしか集中出来ない。
それでも、防人たちとの数の差から戦いにあぶれた何体かと、ゴブリンキング率いるゴブリンジェネラルたちが向かって来る!
「マオ! 下がるぞ!」
「……!」
1階層の防人は全て戦っているため、僕とゴブリンキングたちを阻める防人はマオ以外に誰もいない!
単純に考えて、2対10以上!
そんな戦いをするわけが無い。
マオを連れて、決戦の舞台である2階層の大部屋に逃げる。
「迷宮ノ王ヨ!!
我ヲ愚弄シテオキナガラ、オ主ハ逃ゲルノカ!?」
「僕は蛮勇を持って戦う王じゃないんだよ!
ゴブリンの王!
僕を倒したいんだったら、追い掛けて来い!
それとも、臆病風に吹かれて来れないか!?」
……本当に臆病風に吹かれているのは僕だろうな。
……だが、どんなに無様にでも、ゴブリンキングを2階層に引き込まなければならない。
個々の強さでも、全戦力でも勝ち目が無いこちらが勝つには、絶対にゴブリンキングを2階層に連れ込まなければ!
「……良カロウ!!如何ナル罠ガ有ロウト、ソノ罠ゴトオ主ヲ粉砕セシメテクレル!!」
更にゴブリンキングは激昂したようで、争う防人とゴブリンたちには目もくれずに、階段を降りる僕に向かって来る。
挑発している自分が言うのも何だが……挑発に乗りやすいものだな。
王としての矜持か? ……何でも良いか。その矜持か何かのおかげで、突出してくれているんだから。
1階層で勝つためにやらなければならなかったことは、全て出来た。
唯一の遠距離攻撃を持つゴブリンマージを止めることと、2階層に攻めて来る数を減らすこと……。
後は、2階層で少しの時間だけで良い……ゴブリンキングを孤立させ、その上でゴブリンキングを油断させること……。
……難しいな……。
だが、この作戦しか勝つ方法が無い。
何としてでも……勝つ!
……ストーンガーゴイルの断末魔の鳴き声が聞こえる中で、迷宮パワーが合計で96増えた。
迷宮情報 9日目
迷宮評価 7
迷宮パワー 223 毎日+12
迷宮コスト 26+2
迷宮階層 全3階
迷宮部屋数 全10部屋
防人一覧
マオ ストーンマリオン
ストーンマリオン 10体
ストーンゴーレム 3体
ストーンガーゴイル 1体
罠一覧
簡易射槍壁 12個
施設一覧
畑 規模(小)
人物一覧
シビリアン 1体
侵入者一覧
ゴブリンキング 1体
ゴブリンジェネラル 6体
ゴブリンマージ 1体
ゴブリンウォリアー 14体
ゴブリン 14体




