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王様! 瀕死の少女と絶望ですよ!

「人間……? 盗賊とかか?」


〔えっと……情報を表示しますね?

シビリアン

戦術評価 5

魔術評価 12

技術評価 35

思考評価 55

です!〕


「……盗賊にしては弱いな……。魔術評価も僕よりは有るけど、ゴブリンマージやストーンガーゴイルどころか、ストーンゴーレムよりも無いな……」


〔シビリアンと表示されていますから、村人などですね……。

迷い込んで来たのでしょうか?〕


「……動かないな」


〔様子を窺っているのですかね……?〕


どうしたものだろうか……。

侵入者? は、僕でも勝てそうな評価だ。だが、つい前日に油断から命を失いそうになった身としては、見に行くのには躊躇いを覚える……。万が一この侵入者? が、囮だとして考える……。迷宮の外に仲間が待機しており、囮に近付いた瞬間攻撃して来る……可能性は有るな。


だが、迷宮の王になってから初めての人間である。迷宮やマオ、防人たちがいるけれど、やはり同族である人間に会いたいとも思う。


〔マオやストーンガーゴイルなどを連れて、見に行くだけ行ってみたらどうでしょう?

万が一の時には、マオとストーンガーゴイルに攻撃させれば良いのではないでしょうか?〕


悩む僕に迷宮が提案してきた。

……そうだな。入り口の通路に今もいるようだし、最初の小部屋からチラッとだけ見てみようか?


「良し! マオ行ってみよう!」


「……!」


コクコクと頷くマオを連れて入り口に向かう。途中でストーンガーゴイルを2体僕に追従させる。

……未だに入り口の人間は動かない。




「入り口の人間は結局動かず……か」


マオとストーンガーゴイルを連れた僕は、入り口から一番近い小部屋に辿り着いた……が、その間も入り口の人間は動か無かった。


「ストーンガーゴイル、偵察として行ってくれ」


入り口が直接見えない位置から、1体のストーンガーゴイルを、入り口の通路に送り込んでみる……。

入り口が見えない位置からと言う理由は、僕が直接姿を見せると、魔術や弓などの遠距離攻撃を放ってくる可能性が有るからだ。

自分でも臆病過ぎるように思えるが、出来うる限りの対応はしておいて損は無いだろう……。


「カカッ?」


……ストーンガーゴイルの鳴き声が聞こえる……が、相手の声が聞こえない……?


「……迷宮。

確かにいるんだよな?」


〔はい、入り口にいます……よ?〕


……ストーンガーゴイルには偵察を命令しただけだから、当然攻撃しない。だが、相手が攻撃しないのは何故だ? 仮に相手も攻撃をする気が無かったとしても、声を上げるぐらいはするはず……。


「仕方ない……マオ行こう! 僕を守ってくれ」


「……!!!」


相手が反応しないのならば仕方ない。僕の言葉にコクコクと強く頷き、銅の剣を構えるマオと一緒に入り口に向かう……。

……歩いて二十秒程度の通路がやけに長く感じる。

正直……怖い。

明確な死を感じた昨日の今日であり、更に相手は得体の知れない存在だ。

シビリアン――村人や町人なのに、こんな夕暮れ時―――もうかなり暗いが―――に迷宮に現れ、ストーンガーゴイルを見ても反応すらしない相手……余りにも不気味だ。

僕の前にマオがいなければ、きっと震えているだろう。

本当にマオ様々と言うべきだ……。

今度、何かお礼にプレゼントでも渡そう。




やがて入り口が見え、迷宮の淡い光と暮れかかった夕焼けの赤い光の中に、ストーンガーゴイルが見える。

そのガーゴイルの傍に、横たわった人間が見えた……。

うつ伏せになっているために顔は見えないが、顔の代わりに見える小さな背中から、全てが理解出来た!

倒れている人間が着ている服は、元は白かったのだろうが、今は真っ赤に染まっている。鋭利な刃のような物で切り裂かれた背中の傷からは、今も少しずつ血が流れ出ているようで鮮血が溢れている。




「なっ……!?

……くそっ!! ストーンガーゴイル! 直ぐに貯蓄してある薬草を持って来てくれ!

全速力で頼む!」


「カカッ!」


その光景に少しだけ呆然としていたが、直ぐに我に返り、出来うる限りの手当てを始める。


溢れ出る血を止血するための、布のような物が一切無いため、自分の上着を破いて傷口に当てる。

本当は清潔な布が良いが、無い物ねだりをしても仕方が無い。


〔お、王様!?

もしかしてお知り合いですか?〕


「いや、違う」


知り合いどころか、見たことも無い。

……それでも! 僕を狙って来た侵入者でも無さそうな、瀕死の人間を放っておくことはしたくない!

迷宮の王になる前もなってからも、動物や魔物を仕留めている。きっと迷宮に、人間の冒険者や盗賊が僕の命を狙って侵入して来ることが有っても、僕は遠慮無く仕留めるだろう……。


だからといって、敵かどうかも分からない瀕死の人間を、見捨てるようなことはしたくない。


何となくでも、僕の考えを理解したのか迷宮はそれ以上何も言ってくることは無く、僕は手当てに専念する。


「カカッ!」


「持って来てくれたのか? 随分早いな、ありがとう」


「カッ!」


ストーンガーゴイルが持って来てくれた薬草で最低限の手当てをする。

消毒作用の有る薬草を僕の口に含み、口の中を消毒してから、もう一度口の中に薬草を含み、歯ですり潰してそれを使って患部を消毒し、今度は止血の効果を持つ薬草を、口の中ですり潰して傷口に塗る。

塗り終わったら、破いた上着にも同じように消毒をして、包帯代わりにして患部を覆う。


〔王様は医学に通じているんですか?〕


「そんなわけないだろう?

全部一人暮らしの時のその場凌ぎの簡単な手当てだよ」


今更だが……迷宮内でも、治療道具や最低限の布ぐらいは必要だな。

……僕自身が怪我をする前に、改善すべきことに気付けたのは幸いだったな。


一応の手当ては済んだが、少女は酷く衰弱して身体も冷えきっていたため、寝室まで運び込んでベッドに寝かせる。


少女と言うのは、手当ての最中に顔と体つきで分かった。年齢は13~15ぐらいだろうか。綺麗と言うよりはまだ幼く、可愛いと言うのがしっくり来るような娘さんだ。

尤も、その可愛らしい顔は苦悶の表情と、衰弱に因る青ざめた顔色で痛々しい様子を見せている。


「随分と衰弱が激しいな……。

確か……滋養に良い薬草も有ったな?

それを食べさせよう」


畑に流れる水を手で掬い、その水と一緒に飲ませようとしたが、気を失っている少女は薬草を飲み込むことが出来なかった。


……結局、僕がまた口の中で薬草をすり潰し、水を含んで少女に口移しで流し込んだ。




「とりあえずは安心だな……」


すり潰したことから効きやすくなったのか、少女の寝顔が少しだけ穏やかになっている。もう大丈夫だろう……。


〔王様は凄いですね……。

何でも出来るんですか?〕


「さっきも言ったけど、一人暮らしの人間の最低限の対処だよ。

何でもは無理だろう……これが精一杯だよ」


〔それでも凄いですよ!〕


「そう言われると嬉しいものだな」


気が付けば、もう夜も遅いようだ。

ゴブリンたちは今日は来ないんだろうと思い、明日に備えて眠ることにする。


……少女を横にずらして、隣に寝ようと横たわる……直前。


〔!!?

…………王様、侵入者を確認しました!〕


迷宮が侵入者が来たことを告げる。


……ゴブリンたちか?


そう迷宮に聞こうとした僕に、迷宮が言葉を続けた……。


〔入り口から侵入して来ました!

数は……えっ!?〕


「……どうした?

数はどれぐらいだ?」


嫌な予感を感じつつも、迷宮に続きを促す。




〔数は……







……63です〕




絶望とは……今、僕が感じているようなことを言うのだろう……。







迷宮情報 9日目

迷宮評価 6

迷宮パワー 89 毎日+11

迷宮コスト 52+2

迷宮階層 全3階

迷宮部屋数 全10部屋


防人一覧

マオ ストーンマリオン

ウッドマリオン 10体

ストーンマリオン 15体

ウッドゴーレム 2体

ストーンゴーレム 4体

ストーンガーゴイル 4体


罠一覧

簡易射槍壁 12個


施設一覧

畑 規模(小)


人物一覧

シビリアン 1体


侵入者一覧

??? 63体

(いらない)補足




消毒作用の薬草の名前 キンキレイ

止血作用の薬草の名前 チトメタイ

滋養作用の薬草の名前 ゲキデール

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