王様! 油断大敵ですよ!
〔王様~!
新しい朝ですよ! 希望の朝ですよ!〕
「あぁ……うん、そうだな……」
〔おはようございます!〕
「……おはよう」
「……♪」
いつも通りの迷宮と、いつも通りのマオに、欠伸を噛み殺しながら挨拶をする。
さて……今日はどうしようかな……?
〔王様~暇ですよ~……〕
「何にも無いなぁ……」
言葉通り、暇である……。
今は昼を少し過ぎたぐらい……。
何も無いって言うのは、良いことなんだろうが……流石に朝からずっとこのままなのは、退屈過ぎる。
「侵入者も無いんだろ?」
〔そうですね~。
マオと一緒に畑を見ていらっしゃってはどうですか?〕
「……正直飽きた」
昼前に、マオと一緒に畑を眺めていたんだけど……苗が植えられているだけだから、直ぐに飽きる。
最も、マオは気に入っているのか畑をじっと眺めている。
昼を過ぎてから様子を見に行った時は、畑――苗に向かって踊っていた……。
踊りとは言えないかも知れないが、採取して迷宮に貯蓄した毒キノコを両手に持って、その両手を交互に上げている。
何回か繰り返すと、力を溜めるように身体を小さく縮こまらせて、次には両手両足をンバッ! と広げている。
そして最後にドヤ顔でポーズを決める……その踊りを繰り返す。
…………。
……楽しそうなので、そっとしておいた。
〔王様? 侵入者ですよ!
入り口から侵入してきています。
……また、ゴブリンジェネラルとゴブリンマージですよ。
迷宮は交戦状態に移ります〕
「またか……。
今日は僕も1階層まで行こう。
自分の目で見れば、意図が分かるかも知れないからね」
〔分かりました!
王様……気をつけて下さい!〕
「あぁ! ……マオ、行くぞ!」
「……!?」
畑部屋から出て来たマオと一緒に2階層へ昇り、他の防人たちと合流しつつ1階層に向かう。
ゴブリンたちは、今日も警戒しているかのように、ゆっくりと迷宮を進んで来る。僕たちが1階層の大部屋に到着すると同時に、ゴブリンたちも大部屋に姿を現した。
「キィ……?」
先頭のゴブリンジェネラルが、僕たちを……いや、僕を見て僅かに首を傾げ、小さく鳴き声を漏らす。
その様子は、不思議に思っているようにしか見えなかった。
何故いるんだ? と、言いたいかのように……。
だが、そのことについて考える前に、ウッドゴーレムがゴブリンたちに突っ込んでいった。慌ててマリオンたちにも攻撃を命令する。
だが、また逃げるんだろうなぁ……。
そう思いながら18体の防人に、ゴブリンジェネラルとゴブリンマージ2体が応戦し始めるのを眺める。……ん? 3体?
〔王様! 危ないです!!〕
迷宮の声にはっとする! 目の前の乱戦から、1体のゴブリンジェネラルが銅の剣を右手に持ち、突くような構えで僕に向かって来ていた!
「なっ!?」
まずい! やられる……。
完全に油断していた。ここ最近の奴らが防人たちを倒さずに撤退していくため、誰も死なないだろうと根拠無く慢心していた!
……これが狙いだったのか?
僕が油断するか疑問に思うかで、前線に立つこの瞬間を!!
避けきれない!
僕の眉間を狙って、迫り来る切っ先に覚悟して目を閉じた……
カキンッ!!
と、何かがぶつかり合う音が直ぐ傍から聞こえた。
その音に目を開ける……。
目の前にはさっきまでと同じように、緑色の侵入者、ゴブリンジェネラルがいた。
だが、奴が構えていた銅の剣は、僕の横から伸ばされた小さな石細工の手が握る銅の剣によって、僕に届いてはいなかった。
「キィ……!!」
「…………!!」
横から銅の剣を突き出した小さな勇者――マオは、ゴブリンジェネラルと銅の剣を交差させながら、僕とゴブリンジェネラルの間に身体を入れて来た。
「マオ……あっ!
ス、ストーンマリオン!
こいつを攻撃してくれ!」
目の前のマオとゴブリンジェネラルの鍔ぜり合いを、呆けたように眺めていたが、直ぐにストーンマリオンたちにマオの加勢をしてもらう。
「ギキィ! ゲッヘ……!」
僕の前にいるゴブリンジェネラルは、マオの相手で手が回らず、後ろから来たストーンマリオンたちの銅の剣に突かれ……息絶えた。迷宮パワーが50増えた。
「キィ!」「キィ!」
その光景を見た残りのゴブリンたちは、慌てたように逃げ出していった……。
〔交戦状態を終了します……。
王様! 大丈夫ですか?〕
「……!?
…………?」
「あ、あぁ……。
何とか……。
迷宮……マオ……ありがとう、死んだと思った……」
目の前の脅威が去ったことで、身体の力が抜けてへたり込む僕に、心配して声を掛ける迷宮と、オロオロと慌てているマオに大丈夫なこととお礼を伝える。
〔いえ……迷宮が気付いた時には、手遅れでしたよ。だから迷宮は何も出来ませんでした……〕
「いや、あの声に僕が反応して、その僕の反応でマオも反応出来たのかも知れないだろ……?
だから、マオもだけど、迷宮にもありがとうだよ……」
〔…………はい。
ぐしゅぐしゅ……〕
その後、迷宮のぐしゅぐしゅを聞きながら寝室まで戻って来た。
「今までのは、ゴブリンたちの作戦だったのか……?」
〔うー……きっとそうですよ! 奴らめ……王様を狙うなんて!〕
僕を直接狙いたかったから、僕が出て来るように油断させるために侵入と撤退を繰り返した……?
……いや、だとするなら可笑しい!
採取のために迷宮の外にも行っている。
本当に僕を倒すつもりなら、採取中の方がずっと良い……。
それにゴブリンジェネラルは1階層で僕を見た時に驚いていたように見えた。
目的は別だったけど、突撃して来た……? いや、目的のためにあの突撃は必要だった?
…………。
頭が回らない。
今日は採取は無しにして、早めに休もう……。
嫌な予感が強くなっていく……。
今まで群れて突撃して来るだけだったゴブリンたちが、何かを考えている。
…………。
今日はもう眠ろう。
迷宮情報 8日目
迷宮評価 6
迷宮パワー 162 毎日+11
迷宮コスト 11+2
迷宮階層 全3階
迷宮部屋数 全10部屋
防人一覧
マオ ストーンマリオン
ウッドマリオン 10体
ストーンマリオン 6体
ウッドゴーレム 2体
罠一覧
簡易射槍壁 12個
施設一覧
畑 規模(小)




