王様! 新たなゴブリンと不穏な気配ですよ!
〔王様はもちろん、人形の皆さんも人形な皆さんも、迷宮で暮らす皆さん! おはようございます!
今日も朝がやって来ましたよ~!〕
「おはよう……今日も元気に変なことを言っているなぁ……何か悪い物でも食べたのか?」
〔お、王様が迷宮に酷い発言をしました!
もう……立ち直れません!〕
「……」
迷宮の言葉を軽く無視〔放置ぷれいですか~? 迷宮にはまだ高度過ぎますよ!〕……して、相変わらず僕の周りをちょこちょこと動き回るマオに、おはようと言って頭を撫でた。
昨日のゴブリンとウォルグのおかげで、迷宮パワーも100を超えた。
だから今日はのんびりとしようと思う。
「連日大変だったからな。たまにはゆったりまったりしよう!」
「♪♪♪」
〔そうですね! ゆっくりしましょう!〕
朝から水浴びも良いな……。
迷宮の入り口から近い川岸なら、魔物が来ても直ぐに迷宮の中に戻れるからな……。水浴びが終わってからは採取もしよう。
〔王様!
侵入者を確認しました!
入り口から侵入! ……数は4体です!
迷宮は交戦状態に移ります〕
……少しは空気を読んでほしい。
……魔物に空気が読めるとは思わないが、それでも言いたくもなる。
〔侵入者の情報を表示しますね?
ゴブリンジェネラル 2体
戦術評価 30+3
魔術評価 3
技術評価 25
思考評価 36
ゴブリンマージ 2体
戦術評価 10+1
魔術評価 28+1
技術評価 14
思考評価 33
以上です!〕
「うん?
新しいゴブリンがいるな……魔術評価が高いから、魔術を使うのか?」
〔だと思いますよ?〕
魔術評価と言う評価でも分かる通り、『魔術』と呼ばれる物が存在する。
僕は魔術師ではないため、詳しくは―――迷宮もだが―――分からないが、伝え聞くところには、火の玉を出したり、傷や病を治したりと、何か色々と出来るらしい。
便利過ぎる! というのが僕の率直な感想だ。
だが、街に行っていた時にも魔術師は見掛けず、魔術を見ることは出来なかった。
だから、迷宮からガーゴイルのことを教えられ魔術を使えると分かった時、直ぐに作成したかった。
魔術……格好良いだろうなぁ。
ガーゴイル……作成したいなぁ……。
でも、迷宮パワーが…………ゴブリンジェネラル2体? 確か……前に討伐した時に増えた迷宮パワーは70。
ゴブリンウォリアーの迷宮パワーが10で……70の中にゴブリンウォリアーは2体いた。70から20を引けば……50。
……50?
…………50!?
2体で……100!!?
…………。
「全防人! 突撃ぃ!!!
逃がすなぁ!!!」
〔えぇっ!?
ちょっ!? 王しゃま?〕
「何だ迷宮!?」
〔お、落ちちゅいて下しゃい!〕
「さっきから噛み噛みな迷宮、お前が落ち着いたらどうだ?
それに僕は落ち着いているぞ?」
〔……王様が興奮し過ぎていたので、びっくりしたんですよ!
それに、良く考えて下さい……。
1階層の通路には、射槍壁が設置されてるんですよ?〕
「……あっ!
……全防人待機だぁ!!」
地図を見ると、大部屋から射槍壁の設置されている東西の通路に、防人が差し掛かっているところだった!
……危なかった。
もう少しで僕の馬鹿な命令で、防人を失うところだ。
「迷宮、ありがとう。助かったよ」
〔構いませんよ~!
冷静になっていただけて良かったです!〕
「迷宮の王として、防人の主として、命令はしっかりと冷静に……だな!」
迷宮に助けられたな……うん? マオは?
……地図で確認すると、2階層の迷路の中で迷っている印があった。
…………マオォ。
その後、マオを呼び戻してゴブリンたちを確認する。
防人たちには、1階層の大部屋で待機してもらっている。
「……やけにゆっくりと進むな」
〔そうですねぇ。
警戒しているのでしょうか?〕
その言葉通りなのか、ゴブリンたちは少しずつ進んでいる。
東西の部屋への通路では、分かれることもせずに一丸となって東の通路を進んでいる。
……あっ! 射槍壁が発動させられた。
罠は一度発動すると、再び発動するまでには時間が掛かる。射槍壁の発動範囲で武器でも振るったのだろう。
4体全員、思考評価が高いからな。
そういえば……ゴブリンやゴブリンウォリアーは何故いないんだろうか?
あの種が全滅したとは思えないし……たまたまか?
〔王様! 侵入者が大部屋に到着しますよ!〕
考えに耽っている間に、ゴブリンたちは大部屋に辿り着いたようだ。
今回は、逃がしたくはないので大部屋の通路前での迎撃をせずに、中央まで誘き出す。
……本当はゴブリンたちが東の通路に入った時点で、西の通路から防人を数体回り込ませ、通路内で挟撃しようと思ったが、西の通路の射槍壁は健在で防人を失うだろうから、この布陣で戦うことにした。
〔防人18体が戦闘を開始しました!〕
4倍以上の数である。
ウッドマリオンなどは確かに戦術評価が低いが、それを数で補う!
伝説の神話の世界の言葉でも、『戦いは数だよ、アーニィ!』と言う言葉があるほどに、時に数は質を圧倒する。
……何故だろうか? 神話の言葉を使ったら、何かの圧力を感じた……。使えば使うほどに圧力が増していきそうだ!
神話の言葉は、余り使うべきではないのかも知れない……。
……閑話休題。
防人とゴブリンたちを表す印が入り乱れる。
「……どういうことだ?」
戦闘開始から五分も経ってはいないだろう……しかし、ゴブリンたちが撤退し始めた!
お互いに倒された者は1体もいない……。
魔術がどういう物かは分からないが、防人たちは魔術評価が高いとは言えない。ウッドマリオンに至っては3しかない。
それだけ低ければ、ウッドマリオンが1体ぐらいは倒されるはず。
実際何体かは失う覚悟があった……。
仮に乱戦で魔術を使えなかったとしても、ゴブリンジェネラルの戦術評価ならば、それこそ何体かは倒されるはずだ。
……勝てないと悟って撤退した?
それなら、大部屋で対峙した時点で撤退するはず……。
どういうことだ?
意図が……分からない。
〔侵入者が迷宮から完全に撤退しました。
……交戦状態を終了します〕
分からないが……嫌な予感だけはする。
……警戒するべきだろうな。
交戦状態が終了してから、少しだけ迷宮を変化させる。
最初の小部屋の北側にも大部屋に向かう通路を作成する。
だが、大部屋には届かずに行き止まりとする。
更に、大部屋に続く東側の通路も行き止まりにする。1階層の大部屋への通路は西側だけとなった。
更に、西側の射槍壁を東側の通路に移し、中央の通路にも射槍壁を2つ設置した。(通路と射槍壁に使用した迷宮パワーは合計8)
これで、少しは侵入者を牽制出来るだろう。
三つの通路の内、二つは罠がある行き止まりだ。
初見では大部屋へ行くのに手間取るだろう。
その後は予定通りに、まったりゆったりするために迷宮の外に水浴びと採取に向かったが……茂みにゴブリンがいた。
ボロボロの法衣のような布の服に、杖の代わりだろうか? 木の枝を両手で持ってこちらを窺っていた。
初めて見る姿だが、その格好の特徴から直ぐにゴブリンマージだと気付いた。
「……!!!」
てててっ! と音がするかのような走りで、マオが突撃して行った!
危ないから戻れと言う隙も無く、ブンブンと銅の剣を振り回しながらゴブリンマージに襲い掛かる!
突撃してくるマオに何を思ったかは分からないが、ゴブリンマージたちは、してててっ! という音が聞こえてくるような走りで、逃げ出して行った。
追い払ったことで満足したのか、ドヤ顔―――顔は無いが雰囲気で分かる―――で戻って来るマオに、拳骨を落としてから水浴びをした。
……余談だが他の防人たちは、あの茂みまでの距離では勝手には動かない。
もう少し近ければ、『ウッドゴーレムは』勝手に動いてしまっただろう。
僕の持つギフト、マイムマイムの今の効果範囲は実験した結果、視界に映っている防人だけにしか効果は無いらしい。
更に効果も、マリオン種の思考評価では命令を優先してくれるようだが、ウッドゴーレムはまだ無理なようだ。
僕の思考評価によってはウッドゴーレムも命令を優先してくれそうだが、まだまだ先だろうなぁ……。
考え込みつつも採取する。
……マオが集めるのは毒物ばかりなのは諦めて……おっと?
怒られたからか、ぷるぷると震えるマオが持って来たのは、トロモイの苗だった。
トロモイとは、パンと同じく大陸中で食べられている主食と言っても良いぐらいに出回っている食べ物だ。
そのまま蒸して食べて良し、粥にして食べても良しで、更にパンの原料である小麦と違い、何処でも育つ。
水さえ有れば、日光すら必要としないという他の植物に喧嘩を売るような植物だ。更に、無駄に繁殖力も高いという都合の良さ。
「でかしたぞマオ! 迷宮を変化させて、下層に畑を作ろう! 迷宮内で自給自足も夢じゃ無くなるぞ!」
「!!?
…………♪♪♪」
マオは、いきなり抱き上げられてびっくりしていたが、直ぐに褒められていると理解して喜び出した!
その後、日が沈むまでにトロモイの苗を30株ぐらい採取して迷宮に帰る。
……帰る時に茂みに目を向けると……再びゴブリンマージたちが、こちらを窺っていた。
意図が分からないため不安を覚えるが、特に何かをして来るわけでもないため、そのまま迷宮へと帰ることにする。
来たら来たで、迷宮内で迎え討つと思いながら……。
迷宮情報 6日目
迷宮評価 5
迷宮パワー 101 毎日+10
迷宮コスト 11
迷宮階層 全2階
迷宮部屋数 全7部屋
防人一覧
マオ ストーンマリオン
ウッドマリオン 10体
ストーンマリオン 6体
ウッドゴーレム 2体
罠一覧
簡易射槍壁 12個




