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第1章 星位昇格試験
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高い天井の円形の部屋。
中央には巨大な星盤儀が据えられ、周囲の窓からは淡い昼光が差し込んでいる。
受験者は一人ずつ呼ばれ、提示された星図を読み解く。
星の位置。周期。軌道のずれ。
そこから未来の変化を導き出すのが、占星術師の仕事だった。
エレナが呼ばれたのは三番目だった。
星盤の前に立ち、配られた星図を一瞥する。
「あ」頭の中で、星が動いた。
理論を積み上げるより先に、配置の違和感が形になる。
――この星は、このあとずれる。
ほんのわずかに。
計算すれば説明できるだろう。
だがエレナは、先に答えを書いた。
教授の一人が眉を上げる。
「ずいぶん早いな」
「……はい」
「理由は?」
エレナは少しだけ考え、星盤を指した。
「この三つの星の引力が、均衡を崩すと思います」
教授は腕を組んだ。
「理論式で説明できるか」
「できます」
「では説明してみなさい」
エレナは深呼吸し、頭の中で数式を並べる。
さっき感じた“直感”を、理屈に翻訳する作業だ。
説明を終えると、教授はゆっくりうなずいた。
「……なるほど」
もう一人の教授が小さくメモを取る。
「次」
それだけだった。
試験は数分で終わった。
観測室を出ると、廊下の空気は少し重く感じられた。
実技試験のあとには、最後の関門がある。面接だ。




