SS.08 女の勘は誤魔化せない
「ふぅん。それでそのあとはどうしたの?」
腕を組み、こちらを突き放すような瞳で見つめる妻に俺は動揺してしまう。
いつもは穏やかだからこそ、こういうときの妻は怖いのだ。
じっと見つめられ、俺は正直に白状する。
「……飲み直そうってことで後輩の佐藤の家に行った」
「へぇ、気付かれないと思ってたんだ」
「う……いや、その……」
どう考えてもこちらの分が悪い。
飲み会の後に後輩に誘われ、家に行ったのは事実だ。
これを浮気だと言われても仕方ないだろう。
可愛い俺たちのリリとルルもこちらをじっと見つめている。
俺の浮気に一番先に気付いたのはリリである。
ルルはまだ幼いため、よくわからないのだろう。
純粋な目で俺と妻のやりとりを不思議そうに眺めている。
「……隠してもさ、匂いでわかっちゃうんだよ? どれだけリリが傷付いたと思うの?」
それは十分、俺も気をつけた。
佐藤の家でシャワーを借りた。……これを言ったら余計に怒られのだろうか?
その辺の感覚は俺は鈍い方だ。
リリをぎゅっと抱きしめる妻。リリから俺に注がれる視線は冷たい。
「リリ……ごめんな?」
俺は妻の腕の中のリリにそっと手を伸ばす。
だが、リリーはその腕で俺の手を拒絶する。
「みゃう!!」
「いってぇ! 今、爪立てたろ? リリ!」
「仕方ないでしょ? 他の猫の匂いをつけて帰ってきたんだから!」
そう、愛猫のリリとルルがいるにもかかわらず、俺は後輩の佐藤の家に行った。
最近、結婚した佐藤の家には可愛らしい猫がいるのだ。
その誘惑に俺は勝てなかった。
シャワーをお借りして匂いを消したはずだが、リリにはお見通しだったらしい。
「浮気者ー! ね、リリ」
「んみゃう」
不服そうなリリは妻に抱かれ、部屋を出る。
ルルもその後ろの後をとたとたと歩いて行ってしまう。
浮気心を後悔しつつ、俺は酔い覚ましに水を飲む。
明日の朝には機嫌を直してくれるだろうか? なにか、特別なおやつを用意することで許してくれるだろうか?
浮気心の大きな代償に、俺は小さなため息を溢した。