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SS.04 レビュー通りの診察所


 最近、肩こりがひどい。

 おそらくはパソコン画面に向き合う中で、疲労が溜まったのだろう。

 ネットで調べた人気店へと会社帰りに行ってみようと探してみる。

 こういうのは行く前に調べておく方がいい。

 良い評価ばかりが並ぶが少々レビューに気になるものがある。

 

「診ても貰えず、帰宅した? ……絶賛コメントの中に、結構診て貰えなかったっていうコメントが目立つな」


 多少気になったが、診て貰えないなら態度が悪かったり、暴言を吐いたり、なにかしら迷惑をかける者だったのかもしれない。

 片方だけの意見ではわからないことも多いのだ。

 俺はこの診療所に決めた。


 

「うーん。まぁ、見たところじゃ、あなたにはウチは必要ないね」

「いやいやいや、ちゃんと診てくれていないじゃないですか?」


 まだ診察室の椅子に座っただけ、俺は何も言っていないのだ。

 しかし、医者は意見を変える様子はない。


「うん、見たよ。で、必要ないと思ったわけさ。ウチは忙しいからね、診察料は貰わないよ。次の人呼んで」

「いや、それはおかしいでしょう? 俺はなにも迷惑をかけていないし、ここできちんと診察して欲しいんです。肩こりで困ってる」

「そうだね。だから、ウチじゃないほうがいいんだよね。ウチは特殊だから。はい、出口はこっち」


 医師はわざわざ、ドアを開けて俺に退席を勧める。

 不快に思いつつ、診察室を出ると具合の悪そうな女性がいる。

 その女性を見た医師の表情が変わる。


「大変だ……! あの子にはすぐ施術が必要だ」


 おいおい、女性だからって優遇か?

 やはりレビューにある通りの診療所らしい。

 俺は苛立ちながら診療所を出て、別の病院を探すことにした。



***** 

 

「良かったんですか? 先生」


 看護師の言葉に医師は肩を竦める。

 

「だって必要ないもの、彼」

「だから誤解されちゃうんですよ、先生。ほら、レビューに『ちゃんと診て貰えない』って」


 不満顔の看護師に、医師は笑う。

 

「仕方ないよ。ほら、ウチ特殊な肩こり専門だからね。それより、さっきの患者さんはひどかったねぇ。あんなのが憑いてたら、頭痛に吐き気、ひどかったはずだよ」


 そう、ここは霊障による体調不良ならば見事に解決できる。

 しかし、それ以外なら他の医師を薦めてしまう。

 医師免許こそあるものの、霊への興味が勝るのだ。

 非常な優秀な霊媒師だが、医師としての腕は微妙、治療をしないのは良心的だと言えるだろう。


「僕はちゃんと見てるんだけどね」

「いえ、先生。患者さんは診て欲しいんです」

「ウチにかかる必要ないほうが幸福でしょ?」


 痛め止めやストレッチで治るほうが健康的なのには間違いないのだ。

 

「まぁ、確かにそうですね。私なら、ウチにかかりたくはないですね」


 レビューより辛辣な看護師の言葉に、医師は肩を竦めた。


 

 

 

 

 

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