SS.02 昼下がりの過ち
乱れた服を整えて、雑踏を歩く。
胸の苦しさと共に後悔が俺を襲う。
甘ったるい残り香は俺にまとわりつく。
不相応な真似をした自分に対し、苦々しい思いが込み上げてきた。
――もう四十になるって言うのにいつまでも若いつもりだったのか?
甘い誘惑に勝てなかった自分が今更ながら情けない。
堅実で石橋を叩いて渡るような性格というのが周囲からの俺への評価だ。
自分自身でも一途でブレない男だとそう信じていたのに。
今日の俺はどうかしている。
皆がこれを知ったならどう言われることだろう。
まったく年甲斐もない真似をしたものだと、過ちを悔やみながらポケットを探る。
過ちを後悔しても救われないのなら、それから逃げる必要があるだろう。
弱さを笑うならば笑えばいい。
苦みのあるそれの封を開け、自販機で買ったペットボトルのお茶と共に一気に飲み干した。
あのカフェを出てまだ10分と経っていない。
皆が注文する可愛らしい見た目のドリンクをつい誘惑に負けて注文したのが間違いだ。
濃厚なソースとクリームのドリンクに40歳の胃袋は耐えられなかったのだ。
営業途中の休憩を兼ねていたのだが、かえって胃に負担をかけてしまった。
やはりコーヒーはアメリカンしか信じられん。
浮気は二度とするまいと、昼下がりの俺は深い後悔と胃もたれと共に歩くのだった。