今、チョコレートを強奪したガキに感謝してます。
バレンタインの今日、科学部の後輩の女の子から昼休みに放課後公園で待ってますと書かれた手紙を受け取る。
補習授業で帰りが遅くなった僕は駆け足で公園に向かった。
公園の待ち合わせ場所で後輩の女の子が泣いている。
「おそくなってゴメン、それでどうして泣いているの?」
と声を掛けた。
「あ、先輩。
先輩に受け取って貰おうと持って来たチョコレートを、子供に奪われたんです」
「なんだって、それじゃ警察行こう」
なんて事を後輩と話していたら、通り掛かった近所の主婦らしい人が教えてくれる。
「なに、あなたチョコレート奪われたの? 多分だけどその子あそこのアパートの住民よ行ってみなさい」
と公園から見えるボロいアパートを指し示す。
教えられたアパートに後輩と共に向かったら、アパートの1室から女の悲鳴が響いて来た。
慌てて悲鳴が響いたアパートの部屋のドアを開ける。
部屋の中では血反吐を吐いた男の子が母親らしい女の人に抱かれていた。
男の子の片手にはチョコレートが握られている。
そのチョコレートを見た後輩が呟いた言葉が僕の耳を打つ。
「アレーおかしいな? なんで血反吐を吐いているんだろう、先輩がアタシに惚れるように惚れ薬をチョット混ぜただけなのに」