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毒味
バレンタインの1週間程前の今日、駅から家がある住宅街に行くのに近道になる公園の階段の上で幼なじみのお兄ちゃんが帰宅するのを待っている。
『あ、帰って来た』
「お兄ちゃん!」
お兄ちゃんは私の顔を見た途端悲鳴を上げて階段の手すりにしがみついた。
「ヒィィィー! 近寄るなぁー疫病神!」
「えーそんな言い方は無いんじゃないの?」
「何だとー! お前に貰ったチョコレートの所為で、去年は三日三晩下痢と嘔吐でのたうち回り、一昨年は全身に蕁麻疹が出たんだぞ! 今年は俺を殺す気かぁー?」
「殺す気なんかは無いよ。
でもさ、大好きな彼に食べて貰う前に誰かに味見して貰いたいじゃない」
「だからって俺を毒味係にするなぁー! あ? アァ、ワアァァ―」
お兄ちゃんが階段を踏み外して転がり落ち、下で伸びている。
『ラッキー! お兄ちゃんの手足明後日の方を向いているは、アハハハ。
此れは入院が確定ね、明日お見舞いに行って口にチョコレートをねじ込んで味見してもらおうっと』