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銀河大戦  作者: 岡田 浩
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第2部 2重人格の女王

第1章地球歴2470年の銀河系

1-1銀河系の各星々

 時は、地球歴2470年。

 18年前の地球歴2452年春、地球での「ダイトラン・コラム事変」後、「銀河同盟」は解消され、「ヒト」系の生命体が存在する星々の交流はなくなった。各星々の動きはそれぞれである。

 まず、「銀河同盟」の中心的役割を担っていた、ウエスタン・リーチ星系の惑星アディナであるが、「銀河系に民主的なコミュニティーをつくる」と構想し、その中心的な役割を担っていたマッカーシー・メムス、アルティア・メムス親子を亡くして、かつての勢いを失ってしまった。惑星アディナは、星内の国々からなる国際連合のもと、非軍事化をかかげ、他の星々との交流を断絶。マッカーシーの部下であったマナのもと、戦後復興と星内のさらなる民主化を進めていた。マナは、戦後復興と民主化を見届けた上、国際連合の長の職を辞し、今は、後進に道を譲っている。

 「銀河同盟」を破り、銀河大戦の戦犯であるミッド・リム星域の惑星ダイトランは、地球でのダイトラン・コラム事変での敗戦、王のドラゴン・ヒルおよび王女のロザリーの死、それから、ウエスタン・リーチ星域の惑星サミュエル、ミッド・リム星域の惑星タグからの反撃に合った。ドラゴン・ヒルが率いていたダイトラン軍は、地球、サミュエル、タグ、それから、マラスティア星域の惑星パイソンから撤退し、惑星ダイトランに戻った。現在は、ダイトラン星内がどうなっているのか、他のどの星もわからない状態である。ダイトランは他の星との星交を断絶し、沈黙を保っている。

 惑星パイソンは、ダイトラン星に一番近いこともあったため、ダイトラン軍制圧の被害の爪痕が大きかった。当時の政府はなくなり、現在は、民衆を中心とした新たな政府をつくって、少しずつはあるが、復興を進めている。

 地球は、ダイトラン・コラム事変後、人類は解放され、復興の道をたどっている。民主化とともに、二度と今回のことがないように防衛力を高め、かつ、太陽系の星々の開拓を行っている。現在、火星や土星の衛星「レアル」を、人類が住めるような環境に改造している。

 一方で、防衛力とともに、軍事力を高めているのは、ウエスタン・リーチ星域の惑星サミュエルとミッド・リム星域の惑星タグである。

 惑星サミュエルは、新たな指導者で科学者でもある「ダートマス」の元、マッカーシーの開発した技術力を習得・拡張し、防衛力だけではなく、軍事力を高めている。ダートマスは、惑星名もサミュエルから「ダートマス」へ変更した。ウエスタン・リーチ星域を巻き込んだ、ダートマスを中心とした連邦国家の構築を目論んでいる。

 惑星タグも同様である。ダイトラン軍への反撃のレジスタンス隊を指揮した中心人物で、当時の若き戦士だった「アシュトン」を長とし、ダイトラン軍が残していった軍事力を増強させている。惑星名をタグから「アシュトン」とし、帝国化が進んでいる。虎視眈々と、銀河系征服の機会をねらっている。


1-2 ダイトラン・コラム跡地の墓標

 地球歴2470年4月1日。一組の親子が、ダイトラン・コラム王宮跡地の廃墟の横の広場にある、2つの墓標の前にいた。古海 亘、美穂夫婦と、子供の崇である。18歳の崇と母の美穂は、それぞれ墓標に花束を手向け、腰をおろし、祈りをささげている。その後ろに、亘が立って、美穂・崇同様、祈りをささげている。

 2つの墓標は、ダイトラン・コラム事変の時に亡くなった、ロザリーとタイモンのものだった。

 

 「18年前の今日、この地で惑星ダイトランの王女ロザリーと執事のタイモンは、命を賭けて惑星ダイトランの王、ドラゴン・ヒルを殺害し、僕ら地球人とダイトランのレジスタンスたちを開放してくれたのだ」


 立っている亘が、2つの墓標を立って見つめながら、悲し気な顔をして語った。


 「・・・。その出来事があったから、今の地球の平和があるのだね」


 崇が答えた。その横で、美穂が亘にたずねた。


 「ロザリーの娘のマリカちゃんの消息はわからないの?」


 「ああ。僕とビー・バレー教授がロザリー王女の部屋に行った時は、部屋中一面、炎でつつまれていた。中央にあったベッドも燃えていた。おそらく、亡くなったのではないかと思う」


 「そう」


 「僕らは、多くのダイトラン兵を追放し、ダイトラン・コラムを占拠した。格納庫の戦艦テクノスター・プラスやニュー・トリノは、タイモンによって自動制御されたサイキット・ラーンでほぼ壊滅的に破壊された。残党のダイトラン兵たちは、当時のダイトラン・コラムの研究室兼工場にあった、製造途中でかろうじて稼働する戦艦テクノスター・プラスに乗って、逃げて行ったよ。とても痛ましい出来事だった」


 亘は、王宮跡地の廃墟に転がっているコンクリートの焼け粕を踏みつぶしながら、悔しそうに言った。その時、彼らの周りを春風が舞った。


 「さあ。帰ろうか」


 古海 亘がそう言うと、彼らは、ダイトラン・コラムの研究室兼工場の跡地に建てられた「地球防衛基地」に戻っていった。


1-3 地球防衛基地

 ダイトラン・コラム研究室兼工場の跡地に、地球政府は「防衛基地」の本部を建設していた。その他には、アメリカ・アジア・ヨーロッパ・オーストラリアなど、地球の各大陸、それから、火星と土星の衛星「レアル」に防衛基地が構築されていた。

 ダイトラン・コラム跡地も含めた地球の「防衛基地」の局長は、古海 亘が担っていた。地球歴2052年のダイトラン・コラム事変後、古海 亘は、防衛基地の局長になるために、科学だけではなく、格闘技や銃、サーベルの使い方を学び、自身を鍛え上げた。また、その際、自身の息子の崇にも同様の訓練を行っていた。ビー・バレーは、故郷のダイトラン星へは戻らずに、防衛基地の科学者として、地球で研究を行っていた。ビー・バレーは、かつての「銀河中央大学」で教鞭をふるっていた時に、地球人と結婚し、息子がいた。息子の名は「ノア」。ノアはビー・バレー以上に有能な科学者として成長し、今は土星の衛星「レアル」に同僚の科学者たちとともに向かい、レアルを地球人が住めるよう、人工太陽をつくり、レアルの環境整備・防衛基地建設などを行っていた。また、今日から、ビー・バレーの元で、古海 亘の息子、崇が研究を始めることになっていた。

 美穂は、防衛基地の横にある、防衛基地で働いている「地球防衛隊」の研究員や兵士たちの家族が住む宿舎に戻っていった。亘と崇は、防衛基地の管制室に戻っていった。管制室にはビー・バレーがいた。


 「おかえり」


 「ただいま」


 ビー・バレーと亘が軽く会話をした後、崇がビー・バレーに挨拶をした。


 「今日から、防衛基地内の『防衛大学校』で、教授のもとで科学技術の研究を行うことになりました。古海 崇です。よろしくお願いします」


 「入学、おめでとう。こちらこそ、よろしく。お父さんに似て、科学が好きなようだね。頑張って、お父さんのようになってください」


 「はい」

 

 そう言うと、崇は、ビー・バレーと亘に礼をして、管制室を出て行った。

 崇が出た後、亘がビー・バレーに語りかけた。


 「息子をよろしくお願いします」


 「ああ。君の息子さんだから大丈夫だよ。彼には、『防衛力』だけではなく、私の息子の『ノア』とともに、これからの太陽系、しいては銀河系の発展に向けての科学力を習得してもらいたいと思っている。かつて、惑星アディナのマッカーシー・メムス、アルティア・メムスが目指した『銀河系の平和的なコミュニティー』をつくれるように」


 「そうですね」


 二人は、管制室の強化ガラスでできた窓から、窓の外の、ダイトラン・コラムの王室跡地の廃墟と、ロザリー、タイモンの墓標をあるところを眺めながら、しみじみと語り合った。


第2章 2重人格の女王

2-1 マリカ救出 一瞬の差

 時は2452年4月1日に遡る。

 ロザリーとタイモンの命をかけた反逆行為により、毒を盛られ、タイモンが仕掛けたサイキット・ラーンのレーザーで溶けていくダイトランの王、ドラゴン・ヒルを王室の入り口で目の当たりにしたオントロジーとインベンターは、王室のバルコニーに出た。ダイトラン・コラムの広場は、地球人、ダイトラン・レジスタンスとダイトラン軍との紛争になっていた。インベンターが言った。


 「ここは逃げましょう」


 オントロジーは頷き、二人は王宮のエレベーターを使って、下に降りようとしていた。その時、タイモンの部下の女性の執事が、一人の赤ちゃんを抱え、王女の部屋から逃げてきていた。


 「それは何だ。何を抱えている」


 インベンターが聞くと、その執事が答えた。


 「私は、ロザリーさまの執事の『フライヤ』と言います。今まで、タイモンさまにより、秘密裏と言われていましたが・・・、今、私が抱いているのは惑星アディナのアルティア・メムスさまと我がダイトランの王女、ロザリーさまとの間にできたご息女、『マリカ』さまでございます」

 

 「何?それは誠か?」


 「誠でございます」


 それを聞いていたオントロジーが、あることを思いついたのか、インベンターとフライヤに行った。


 「その子もいっしょに連れて行く。逃げるぞ」


 オントロジー、インベンターとフライヤは、エレベーターで1階へ下った。

 オントロジーたちが逃げた後、一瞬の差であったが、ビー・バレーと古海 亘が、王宮の王女の部屋に行き、マリカを探したのである。しかし、時すでに遅く、マリカはオントロジーたちに連れ去られていた。

 ダイトラン・コラムの王宮と格納庫は、タイモンが仕掛けたサイキット・ラーンで攻撃を受けていた。また、ダイトラン軍の兵士は、逃げ出した地球人とダイトラン・レジスタンスの反撃に合い、防戦一方となっていた。


 「インベンターよ。お前の衛士団の兵士たちを研究室兼工場に逃げるように命令せよ。研究室と工場は、サイキット・ラーンに攻撃されていないようじゃ。そこには、建造中で未完成であるが、完成間近で稼働するテクノスター・プラスが数台残っているはずじゃ」


 「御意」


 インベンターはそう答えると、無線で、ダイトラン兵に、撤退と研究室兼工場へ逃げるように、命令を出した。

 彼らは無我夢中で逃げた。途中で、地球人・ダイトラン・レジスタンスの攻撃を受け、死んだダイトラン兵もたくさんいた。オントロジー、インベンター、マリカを抱きかかえたフライヤを守るために盾となって死んでいった兵士もいた。

 そのような状況の中で、オントロジー、インベンター、フライヤ、それから数十名のダイトラン兵は、研究室兼工場にあった、稼働するテクノスター・プラスに乗り、地球を脱出した。

 その時、王宮と格納庫をすべて破壊したサイキット・ラーンは、役目を終わったかのように自爆した。

 逃げていくテクノスター・プラスを見ながら、地球人の一人が叫んだ。


 「我々の勝利だ。地球は解放されたーーー」


 その声に、周りの地球人、ダイトラン・レジスタンスたちは喝采し、それぞれがこぶしを天に突き上げた。その様子を、ビー・バレーと古海 亘は、サイキット・ラーンの攻撃によって崩れ落ちた王宮の横で見守っていた。


2-2 混乱するダイトラン星の制圧

 オントロジーたちは、逃げるようにダイトラン星に帰って行った。しかし、ダイトラン星にも、王のドラゴン・ヒルが死んだことが伝わっており、ダイトラン星内に残っている「衛士団」と「ダイトラン・レジスタンス」の間で紛争が起こっていた。

 そのダイトラン星に、地球・惑星タグから追われ、また、惑星パイソンを制圧していたダイトラン軍が戻ってきた。

 インベンターは、戻ってきたダイトラン軍のテクノスター・プラスに無線で命令を出した。


 「ダイトラン星のレジスタンスどもを制圧する。ダイトラン星に残っている「衛士団」と協力して、レジスタンスどもを抹殺しろ」


 インベンターのその命令を受け、戻ってきたテクノスター・プラスは、ダイトラン星内のレジスタンスたちを一網打尽にしていった。数か月の時間を要したが、ダイトラン星のレジスタンスたち、反乱分子はすべて処刑された。


2-3 新たなる策略

 オントロジーやインベンターは、地球から連れてきたマリカとともにダイトラン星の王宮内の王室に入った。オントロジーは、マリカを抱きかかえながら、かつて、ドラゴン・ヒルが使用していたソファーに座った。その前に、インベンターが立って聞いた。


 「これからどういたしますか?」


 すると、オントロジーは、ある者へ通信で連絡を取り、王室に来るように伝えた後、答えた。


 「わしは『摂政』となり、この子『マリカ王女』が成人になるまでダイトラン星の政権を担う。お前は、これからここに来るものとともに、わしの片腕となり、わしとともに、この星を再興するのじゃ。そして、この子が成人を迎えた時に、再び、地球のダイトラン・コラム奪還と銀河系制圧を行う」


 その時、一人の者が、王室に入ってきた。


 「お久しゅうございます。オントロジーさま」


 「キェヒェヒェヒェ。元気でおったか。ニューロン。まあ、近くに寄れ」


 いかにも科学者という身なりの、白衣を着たニューロンは、オントロジーの前、インベンターの横に跪いて、頭を下げた。

 すると、オントロジーはインベンターに話した。


 「この者は、『戦略科学団』でのわしの片腕。ニューロンじゃ。ビー・バレーは裏切り、わしの元を去ったのでな。わしの研究をこの者に手伝ってもらっていたのじゃ。この者は、わしのつくった『ニュー・トリノ粒子砲』の原理も理解している。これから、このニューロンに『戦略科学団』の長をまかせ、軍事力強化の研究と開発を行わせる。お前は、この星の兵力をより強固にするため、『衛士団』を再構築してもらいたい」

 

 「御意」


 それを聞くと、オントロジーは、抱きかかえているマリカの頭をなでながら言った。


 「この子は、わしの願いをかなえてくれる、思いもかけなかった『宝物』じゃ。大事に、大事に育てなければならぬ。キェヒェヒェヒェ」


2-4 2重人格

 オントロジーは、フライヤとタイモンが残した執事たちにマリカの世話を任せ、摂政の業務を遂行していた。並行して、ニューロンは現状の兵器の増強と新たな兵器の開発、インベンターは、衛士団の兵力の増強に努めていた。

 マリカはフライヤの元ですくすくと育って行った。しかし、フライヤはマリカの世話をしている時、あることに気づき、それをオントロジーに相談した。


 「オントロジーさま。ご相談があります」


 「なんじゃ」


 「マリカさまのことです。マリカさまは、日頃は穏やかでお優しい性格なのですが、『火や炎』がお嫌いのようで、先日、マリカさまのお誕生日のお祝いで、ケーキに刺したキャンドルに火をつけると、マリカさまは急に眼の色が変わり、泣き叫び、暴れ出しました。キャンドルが倒れ、火が消えるとマリカさまはおとなしくなりました。このような状況は他でもありました。暖炉の炎を見た時なども同様に、急に泣き叫び、暴れ出すのです」


 「何?火や炎がお嫌いで、泣き叫び、暴れ出すじゃと?」


 「はい」


 「そうか。わかった。さっそく、戦略科学団の専門医に相談できるよう、手配する。しばらく待つのじゃ」


 数日後、オントロジーとフライヤはマリカを連れて、戦略科学団に所属する医師に、マリカを診察してもらった。

 医師の診断は次の通りであった。


 「確かに、マリカさまは、火や炎に過剰反応して、泣き叫び、暴れ出します。マリカさまは過去に、火や炎で、何か、ひどい目や恐怖を受けるような体験をされていませんか?」


 しばらく考えた上で、フライヤはあることを思い出した。


 「幼少のころでしたが、マリカさまは、ダイトラン・コラムという地球の私たちの基地の王宮が襲われ、マリカさまがいた部屋は一面火の海、炎につつまれた部屋の中で置き去りにされ、泣き叫んだという経験がございます」


 「そうですか?それが原因かもしれません。もしかしたら、マリカさまは、ある種の『2重人格』をお持ちになられているかもしれません。今は幼少期で泣き叫び、暴れるだけに収まっているかもしれません。しかし、ご成人になられたら、日頃は穏やかな性格でも、火や炎を見ると、恐怖を感じ、凶暴な性格に変わる可能性がございます」


 それを聞いたオントロジーは、あることを閃いた。

 

 「火や炎を見ると、恐怖を感じ、かつ凶暴な性格になる可能性があるということじゃな?逆に、火や炎を見ると、凶暴になり、敵と思うものを攻撃するように『洗脳』するということはできぬか?」


 「それは、可能かと・・・」


 「キェヒェヒェヒェ。わかった。これは使えるわい。フライヤよ。良いことを教えてくれた」


2-5 洗脳

 マリカが10歳を越えるあたりから、オントロジーは、インベンターに協力を仰ぎ、マリカに「洗脳」教育を行い始めた。

 兵士の射撃や戦闘訓練を行う部屋にマリカを連れていき、部屋に入った後で、マリカの前でキャンドルに火をつける。すると、穏やかだったマリカの目の色が変わり、凶暴になる。その上で、インベンターは、マリカに先端からレーザーを出せるサーベルを持たせ、射撃やサーベルの使い方を教え、敵とみなした者(人形)を切り刻み、頭や胸をレーザーで打ち抜く訓練を行った。マリカは徐々にサーベルの使い方に慣れ、また、殺傷の訓練を楽しむようになった。また、オントロジーは、マリカに、部屋のスクリーンの右側に、あらかじめ撮影していた「地球人の捕虜」を、左側にダイトラン・コラムの王室にサポート・ベクターマシンで攻め入って来た時の「古海 亘」の画像を映しながらしゃべった。


 「ダイトラン星人はすべて良い人々。ダイトラン星人を攻撃してはなりませぬ。ダイトラン星人以外は、すべて悪者。殺してもかまいません。特に地球人は、とても悪い者たちです。なお、前の左側のスクリーンに映っている地球人は、あなたの祖父のドラゴン・ヒルさまやお母様のロザリーさまを斬殺しました。あなたは、この敵を倒さなければなりません。あなたさまの使命でございます」


と毎日のように、マリカにささやいた。

 マリカは、オントロジーとインベンターに、火や炎を見ると、敵を攻撃するように洗脳され、成長していった。そして、地球歴2470年を迎えたのであった。


第3章.ダイトラン軍の逆襲

3-1 牙を剥く「二重人格の女王」

 時は地球歴2470年4月1日に戻る。

 地球で、亘や崇たちが平和への祈りをささげている調度その時、沈黙を守っていた惑星ダイトランで動きがあった。王宮の「女王の間」の上座、左右には炎がともされたキャンドルがあり、その間の豪華なソファーに座る、紺色の戦闘服と黒いマントを纏った、金髪で長髪、細身の女王と、その横のソファーに座る残柄の白髪の老人、それにその老人の後ろに立っている50歳代くらいの頑強な長の前に、多くの兵士たちが跪いていた。

 すると、女王は立ち上がり、兵士を鼓舞するように叫びながら話した。


 「我らダイトラン軍が、地球の基地、ダイトラン・コラムで苦汁を味わってから18年。幾多の内乱を抑え、新たに王国を再建し、武力を増強してきた。

 我らが力を再び銀河系に轟かせる日が来た。最初のターゲットは地球。我が祖父のダイトラン王、ドラゴン・ヒルと母のロザリーの命を奪った、憎き地球人やダイトラン・レジスタンスの残党たちを根絶やしにし、銀河系征服の起点となるダイトラン・コラムを再構築する。みな、我に続け」


 すると、兵士たちは、右手を突き上げ、

 

 「オー」


と女王に続いて雄たけびを上げた。

 左右のキャンドルの炎の間に立つ女王は、惑星アディナのアルティア・メムスと、惑星ダイトランの王女、ロザリーとの間に産まれた、二人の忘れ形見の「マリカ」。白髪の老人は、執事タイモンの部下、フライヤが助けたマリカを18歳に成人するまで育て上げ、今は「戦略科学団」の長を弟子の「ニューロン」に任せ、「摂政」として君臨し、実質的なダイトランの権力を握っているオントロジー。オントロジーの横は、「衛士団」の長として、惑星ダイトラン内のレジスタンスの紛争を抑え込み、オントロジーとともにダイトラン王国を再建したインベンターであった。


3-2 ダイトラン軍出撃

 女王・マリカの掛け声とともに、ダイトラン兵たちは、格納庫に向かい、次々に最新鋭の「テクノスター・ネオ」と呼ばれる、旧テクノスター・プラスの2倍の威力のトリチウム・レーザー砲を撃てる戦艦に乗り込んで出航した。約200艦ほどであろうか?

 また、各テクノスター・ネオは、改良を施された爆撃機「サイキット・ラーン・ネオ」を積んでいた。


 「さあ。わしらもまいりましょう、マリカさま。ニューロン、最後尾はお前に任す」


 オントロジーはそういうと、先端が透明な高強度プラスチックの球でできており、その中で炎が燃えている杖を持ち、立ち上がった。そして、女王マリカ、インベンターとともに、「テクノスター・ネオ」の2倍の大きさはあろうかと思われる、これも最新鋭の「クイーン・テクノスター」に乗り込んだ。また、フライヤはマリカの執事として、クイーン・テクノスターにすでに乗り込んでいた。クイーン・テクノスターのトリチウム・レーザー砲の威力も旧キング・テクノスターの2倍になっている。


 彼らは、クイーン・テクノスターの艦橋に乗り込んだ。そして、艦橋の前の操縦席にインベンターが座り、続けて、左右に炎がともされたキャンドルがある艦長席にマリカが、副艦長席にオントロジーが座った。フライヤは、マリカの横に立っていた。


 「クイーン・テクノスター。出航」


 インベンターの掛け声とともに、クイーン・テクノスターは格納庫から出航した。

 また、クイーン・テクノスターの後方には、ニューロンが乗る旧戦艦ニュー・トリノの2倍の大きさで、ニュー・トリノ粒子砲も2倍の破壊力を持つ戦艦「ニュー・トリノ・ネオ」が続いている。

 地球歴2452年当初から、すべての戦闘力が2倍になった大規模なダイトラン軍は、超光速移動法ワープを使い、進軍していった。ターゲットは、もちろん地球である。


3-3 地球防衛網作動

 地球のダイトラン・コラム跡地の地球防衛基地。管制室から窓の外の、ダイトラン・コラムの王室跡地の廃墟と、ロザリー、タイモンの墓標をあるところを眺めていたビー・バレーと古海 亘の耳に、緊急アラームの警告音が鳴り響いた。


 「何事だ?」


 ビー・バレーが言うと、管制室内で、レーダーのモニターを見ていた管制員が叫んだ。

 

 「ダイトラン星の方向から、大規模な戦艦と思われる大部隊が地球に向かってきているようです」


 「詳細はわからないのか?」


 「太陽系の外周に張り巡らせているサポート・ベクターマシンに探らせています。映像が入り次第、管制室前面の大型モニターに映します」


 しばらくして、サポート・ベクターマシンからの映像が届いた。


 「これは・・・」


 管制室の前のモニターには、約20年前に見た、戦艦テクノスター・プラスの改良版、ニュー・トリノの改良版と思われる戦艦の大部隊が地球に、超光速で向っているのが映されていた。ビー・バレーと古海 亘は一瞬、絶句した。


 「おそらく、ダイトラン軍とみて間違いないだろう。まずは、私が、ダイトラン軍とおぼしき戦艦の大部隊に通信を行ってみよう」


 古海 亘はそう言うと、ダイトラン軍とおぼしき戦艦たちに通信を行った。


 「ダイトラン軍と思われる戦艦の諸君。こちらは地球の防衛基地の局長、古海 亘である。あなた方の戦艦は、その進路から、地球に向かって来られているようだが、どのような用件で地球に向かわれているのか?」


 その問いかけに、戦艦の大部隊からの返事はなかった。それどころか、有無を言わさず、偵察用のサポート・ベクターマシンをテクノスター・ネオのレーザー砲で次々と破壊していった。古海 亘は、改めて通信を行った。


 「今行った行動が、あなたたちの答えだと思ってよいのだな。それでは、我々も地球を防衛する体制に入る」


 すると、一言だけ、女性の声で返信が来た。


 「我らはダイトラン軍。我が軍隊は、戦艦テクノスター・ネオ、ニュー・トリノ・ネオと戦闘機、サイキット・ラーン・ネオである。今から地球を、太陽系を制圧する」


 その声と同時に、テクノスター・ネオからは、次々と、サイキット・ラーン・ネオが飛び立ち、太陽系の外周を飛んでいた、残りのサポート・ベクターマシンを破壊した。


 「太陽系外周のサポート・ベクターマシンでは対処できない。新たな防衛網を稼働させなけば・・・」


 ビー・バレーがそうささやいた時、管制室に土星の衛星「レアル」から通信が届いた。通信主はビー・バレーの息子のノアである。


 「父さん。僕らも、ダイトラン軍の大艦隊を検知したよ。大変な規模で地球に攻め入ろうとしている。お父さんと僕が開発した『アレ』を使って見てくれないか。今、レアルや火星は、ダイトラン星から地球より遠い位置にある。ダイトラン軍は、まず、地球に侵攻してくるつもりだよ」


 「わかった」


 「『アレ』か」


 「そうだ。このようなことがあろうかと思い、君にも相談をして、地球を含む太陽系の防衛網を息子のノアと整備していたシステムだ」


 それを聞いた古海 亘は、地球の国連本部へ連絡し、了解を得た上で、ビー・バレーに言った。


 「頼む」


 「わかった」


 亘から許可を得たビー・バレーは、管制塔の前面にある機器の中の、赤色のボタンを押して言った。


 「エキスパート・システム 作動」


3-4 エキスパート・システムによる対抗

 ビー・バレーが赤色のボタンを押した途端、地球の各基地からさまざまな兵器が稼働し始めた。

 ・地球の地上、海面の各地から、威力を倍増された「高濃縮YAGレーザー砲」を撃てる砲塔が出現。

 ・アメリカ・アジア・ヨーロッパ・オーストラリアなど、地球の各大陸の「防衛基地」から、装甲を頑強にし、かつ、威力を倍増させた「高濃縮YAGレーザー砲」を撃てる最新鋭戦艦「アジョイント・クロス」が出航。

 ・アジョイント・クロスと並行して、両目からは「高濃縮YAGレーザー砲」が、胸からはレーザー砲と同様の威力を持つミサイルを撃てる、飛行型ロボット「ランダム・フォレスト」が無数と言えるくらいの数、飛び立った。


 「ダイトラン軍は、サポート・ベクターマシンを破壊し、太陽系圏内に突入した。エキスパート・システムによる反撃を開始する」


 古海 亘の命令と同時に、アジョイント・クロス、ランダム・フォレストによる反撃が開始された。ダイトラン軍と地球の間には、木星と小惑星群があり、その場が、ダイトラン軍と地球防衛隊との戦場になった。


3-5 均衡する攻防

 木星と小惑星群の周辺で、ダイトラン軍と地球防衛隊との戦闘が始まった。

 お互いに、地球歴2452年当時よりも、戦艦等の装甲、レーザー砲の強化によって、

  ・テクノスター・ネオとアジョイント・クロス間のレーザー砲の撃ち合い

  ・サイキット・ラーン・ネオとランダム・フォレスト間の空中戦

が激化した。互角の戦闘である。互いに同レベルの被害を受けながら、一進一退の攻防が一昼夜続いた。業を煮やしたマリカが叫んだ。


 「えーい、手ぬるい。これから、クイーン・テクノスターとテクノスター・ネオは、左右に避ける。オントロジー、インベンターよ。ニューロンに命じ、ニュー・トリノ・ネオから強力なニュー・トリノ粒子砲で我々があけたど真ん中を撃ち放て」


 女王マリカの命により、攻撃を行いながら、クイーン・テクノスターとテクノスター・ネオは、中央を開け、左右に舵をきった。ニュー・トリノ・ネオに乗ったニューロンは、地球防衛隊、および、その遠く背後に見える地球の大西洋に向かって、ニュー・トリノ粒子砲を撃つ準備を行った。


3-6 中央突破

 「やつら、ニュー・トリノ粒子砲を撃つつもりだ。このまま、中央にまとまっていたら、18年前の太陽系決戦と同じように、アジョイント・クロスの部隊は、ニュー・トリノ粒子砲にやられてしまう。早く、分散するのだ」


 古海 亘の命令により、アジョイント・クロスやランダム・フォレストは、中央から分散していった。

 そのさなか、ニューロンは、戦艦ニュー・トリノ・ネオからニュー・トリノ粒子砲を放った。

 巨大なニュー・トリノ粒子砲が、分散していこうとするアジョイント・クロスやランダム・フォレストを一部巻き込みながら、地球の大西洋に着弾した。地球の大西洋は陥没し、その周りのヨーロッパ、アメリカ大陸の「高濃縮YAGレーザー砲」を撃てる砲塔は壊滅的な被害を受けた。大西洋から巨大な水の柱が立ち上った。


 「よーし。今がチャンスだ。中央突破。我に続け!!」


 女王マリカの掛け声とともに、分散しているアジョイント・クロスやランダム・フォレストを攻撃しながら、クイーン・テクノスターを中心とした、テクノスター・ネオ、サイキット・ラーン・ネオのダイトラン軍が、数基のテクノスター・ネオとニュー・トリノ・ネオを残して中央突破を図り、地球へと向かっていった。


 「狙いは、地球のダイトラン・コラム跡地。そこを占領する」


 女王マリカの命令が下った。


第4章 ダイトラン・コラム跡地での攻防

4-1 ダイトラン・コラム跡地へ

 激しい攻防の上、木星周辺の攻防を制したダイトラン軍は、クイーン・テクノスターを先頭に、100艦強のテクノスター・ネオとその周りを飛行する多くのサイキット・ラーン・ネオを従えて、地球のダイトラン・コラム跡地の元「格納庫」あたりに進軍してきた。その後を、木星周辺に取り残されたアジョイント・クロスとランダム・フォレストが追っていた。


 「地上の高濃縮YAGレーザー砲塔と、後方のアジョイント・クロスたちで、ダイトラン軍を挟み撃ちにするのだ。」


 古海 亘の命令で、地上からのレーザー砲塔とアジョイント・クロス、ランダム・フォレストの高濃縮YAGレーザーで、地球に進軍しているダイトラン軍を挟み撃ちにした。

 しかし、地球の自転でニュー・トリノ・ネオの砲塔に向いた地球の太平洋と後方のアジョイント・クロス、ランダム・フォレストは、再び、戦艦ニュー・トリノ・ネオからのニュー・トリノ粒子砲のエネルギーを浴び、壊滅的な被害を受けた。

 地上の高濃縮YAGレーザー砲は、数に勝るダイトラン軍の戦艦に破壊されていった。

 

 「全艦。ダイトラン・コラム跡地に降りる。地上戦で残った地球防衛隊を抹殺する」


 女王マリカの命令の元、クイーン・テクノスター、テクノスター・ネオなどダイトラン軍は、地球のダイトラン・コラム跡地に降り立った。


4-2 衛星レアルからの反撃

 「くそー。エキスパート・システムはこのダイトラン・コラム跡地以外、ほぼ壊滅だ。やはり、カギを握ったのは、ニュー・トリノ粒子砲か・・・。あとは、地上戦を行うしかない」


 ダイトラン・コラム跡地の地球防衛基地の管制室で古海 亘がそういった時、衛星レアルから通信が入った。


 「こちら、衛星レアルのノア。衛星レアルから、援軍を送ったよ。おそらく、火星からも援軍が来ると思う。それまで耐えてくれ。それから、戦艦ニュー・トリノ・ネオのことだけど、こいつの始末は、俺に任せてくれ」


 「戦艦ニュー・トリノ・ネオを倒せるのか?」


 古海 亘とともに通信を聞いていたビー・バレーが聞くと、ノアが答えた。


 「衛星レアルの人工太陽をつくっている時に思いついた兵器で、今回、はじめて使うのだけど、戦艦ニュー・トリノ・ネオを倒せる可能性のあるエネルギーを出せる砲塔が完成したのだ」


 「何?どのようなエネルギー砲だ」


 「ニュー・トリノ粒子よりも威力のあるタキオン粒子を使ったエネルギー砲だよ。テストをしようと思っていたのだけど、時間がない。ぶっつけ本番で撃ってみるよ」


 「大丈夫なのか?」


 「やってみなければわからない。失敗したら、衛星レアルも、人工太陽も吹っ飛ぶかもしれないけどね。まあ、成功しなかったとしても、どうせ、衛星レアルもダイトラン軍に占領されるのだ。腹をくくって、やるしかないよ」


 「わかった。お前のことだ。勝算があってのことだろう。任す」


 「了解」


 すると、ノアは、衛星レアルに設置してある「タキオン粒子エネルギー」を出せる砲塔を、木星の近くを航海しているニュー・トリノ・ネオに向けた。ちょうど、ニュー・トリノ・ネオの遠い先には、惑星ダイトランが射程内に入った。


 「やつら、地球への攻撃に気を取られていて、衛星レアルの存在に気づいていないようだ。今が千載一遇のチャンスだ。早速、『タキオン粒子砲』をお見舞いしてやる」

 

 そういうと、ノアは、エネルギー充填用のスイッチを入れた。タキオン粒子の砲塔は、高濃縮YAGレーザー砲の2倍くらいの大きさだったが、砲塔の先端に「ウィーン」と音をたてながら、クリスタルのように輝くタキオン粒子のエネルギーが集約していった。


 「エネルギー充填200%」


 そう言った上、射程をニュー・トリノ・ネオと惑星ダイトランに合わせ、大きく息を吸い、腹をくくったのか、ノアが続けて叫んだ。


 「タキオン粒子砲、発射」


 同時に、ノアは、エネルギー充填用のスイッチの横のレバーを引いた。

 すると、砲塔から、聞いたことのないくらいのけたたましい音をあげ、タキオン粒子のエネルギーが発射された。

 ニュー・トリノ・ネオの艦橋に搭乗していたニューロンは、斜め左から来る光に、


 「何だ。これは・・・」


と叫んだ。これが、ニューロンが残した最期の言葉だった。タキオン粒子砲は、ニュー・トリノ・ネオを含む、木星近辺に残っていたテクノスター・ネオの艦隊を粉砕した。そして、そのクリスタル状に輝くエネルギーの帯は、その先にあった、惑星ダイトランをも打ち抜き、惑星ダイトランをも爆破した。

 タキオン粒子砲を放った砲塔も無事ではなかった。ところどころにヒビが入り、暴発の一歩手前だったのだ。

 ノアは、驚嘆の声をあげながら言った。


 「これほどの威力があるとは・・・。まさか。ニュー・トリノ・ネオの部隊を倒すのが目的だったのに、その先のダイトラン星までタキオン粒子のエネルギーの帯が伸び、ダイトラン星まで粉砕するとは思わなかった。俺は、大変な、痛ましいことをしてしまったのかもしれない。ダイトラン星人すべてには罪がないのに」


 ノアは、自分自身がつくりあげた科学力に驚愕するとともに、罪の意識を感じ、涙を流した。


 「これは、使い方によっては、『神にも悪魔にもなれる』エネルギー砲だ。想定以上の威力だった。使い方に注意しなければならない。ただ、エネルギーに対して砲塔の強度が足りないみたいだ。ダイトラン星はなくなったとしても、まだ、地球にダイトラン軍の残党がいるはずだ。ダイトラン星にいた人々には悪いことをしたが、次の攻防にそなえ、砲塔の強度アップに取り掛からざるを得ない」


4-3 地上戦

 「ニュー・トリノ・ネオの通信が切れました。また、ダイトラン星とも連絡が取れません」


 「太陽系の土星の近辺から、ニュー・トリノ粒子砲とは比べ物にならないくらい強力なエネルギー砲が発射されるのを確認しました。そのエネルギー砲は、木星周辺を航行していたニュー・トリノ・ネオやその周りのテクノスター・ネオを粉砕し、我々の母星、ダイトランをも爆破した模様です。そのエネルギー砲が通り過ぎた後、ニュー・トリノ・ネオやダイトラン星の存在が確認できません」


 クイーン・テクノスターの艦橋の通信班、およびレーダー班の者から、女王マリカ、オントロジー、インベンターたちに報告があった。


 「何。地球の武器が、我々の切り札の戦艦と、母星を滅ぼしたというのか?」


 インベンターが驚くような声で叫んだ。一気に、クイーン・テクノスターの艦橋内は動揺が走り、あわただしくなった。その動揺を抑えるように、オントロジーが杖を握りしめてしゃべった。


 「わしの最高傑作、ニュー・トリノ・ネオのエネルギー砲を上回るエネルギー砲をつくるとは・・・。小賢しい地球人どもめ。じゃが、インベンターよ、あわてるな。わしらは今、地球に降り立っておる。よもや、やつらは自身の母星、地球にそのエネルギー砲を撃ちはしないはずじゃ。早く地球を占領し、地球人どもを人質にするのじゃ。地球のほとんどの武力は我々が制圧した。あとは、ここのダイトラン・コラム跡地にいる残党を始末すれば、わしらの勝利じゃ。さあ、マリカさま。ご指示を」


 それを聞いた女王マリカは、クイーン・テクノスターとその他のテクノスター・ネオの『衛士団』に通信で叫んだ。


 「我らにはもう帰る地がない。この地球を征服し、我々の住かとするのだ。ねらいは、ダイトラン・コラム跡地につくられた地球の防衛隊がいると思われる基地。あそこを火の海にする。我ら、『衛士団』全軍は、地上戦と、サイキット・ラーン・ネオからの総攻撃に移る。かかれーーー!!」


 瞬く間に、地球防衛隊の基地のまわりは、壮絶な戦場と化した。地上では、互いにサーベルや銃を持ち、せめぎ合うダイトラン兵と地球防衛隊の兵士たち。空中では、地球の防衛基地に残っていたランダム・フォレストとサイキット・ラーン・ネオの攻防が激化していた。

 その中に、執事のフライヤたちとともに、クイーン・テクノスターから装甲車で出て、地球防衛隊の基地にせまっている女王、マリカがいた。


4-4 衝突・捕獲

 さまざまな攻撃をすり抜け、マリカたちが乗る装甲車が、地球防衛基地の管制室の強化ガラスの窓を突き破ってきた。

 そして、装甲車から、取っ手に、中で炎が燃えている透明な高強度プラスチックの球がついており、先端からレーザーを撃てるサーベルを持ったマリカたちが降りてきた。


 「ここがやつらの指令室か。ここを占拠すれば、やつらは降伏する。みなども、かかれーーー!!」


 マリカに続き、フライヤなど、マリカの執事たちが降りて来た。そして、装甲車によって砕かれた窓の隙間から、ダイトランの兵士と地球防衛隊の兵士たちが、攻撃をしあいながら、入り乱れて管制室に入って来た。

 フライヤたち、武装した執事たちがマリカを守るように銃やサーベルなどの武器を持ち、前に出て来た。

 燃え上がる装甲車の炎を背に、マリカがサーベルを持ち、仁王立ちをして立っていた。その視線の先には、装甲車に突き飛ばされ、管制室の壁にたたきつけられ、体中傷だらけになり、跪いていた古海 亘と悶絶しているビー・バレーがいた。


 「我が名は、ダイトランの女王、マリカ。お前の顔、忘れないぞ。我が祖父、ドラゴン・ヒルと母、ロザリーを斬殺した地球人だな」


 マリカの問いかけに対して、古海 亘は答えた。


 「君はマリカというのか・・・?マリカ、生きていたのか?私は古海 亘。あなたの父、惑星アディナのアルティア・メムスと母、惑星ダイトランのロザリー・ヒルからあなたを保護するように頼まれたのだ。私はあなたの祖父、ドラゴン・ヒルと母、ロザリーを殺してはいない。何かの間違いだ」


 「そのような戯言、誰が信じるものか?とどめを刺してやる」


 そういうと、マリカは、サーベルの先からレーザービームを放ち、古海 亘の腹を貫いた。


 「うっっっ」


 腹を抑えながらうずくまる古海 亘。悶絶していたビー・バレーが、体の痛みを堪え、故障した足を引きずりながら、古海 亘をかばうように、彼の前に立った。


 「やめろ。マリカ。彼の言ったことは本当だ。武器を捨てろ」


 「お前もそいつの味方か?いっしょに葬ってやる」


 マリカが、サーベルからビームを撃とうとした時、管制室のドアの方から、サーベルを持っているマリカの手元に、銃弾が数発撃たれた。その衝撃で、マリカの手からサーベルは吹き飛び、また、マリカの右手に銃弾の一つが当たった。

 それと同時に、管制室の入り口から、古海 崇を中心とする数人の地球防衛隊の兵士たちが飛び込んできた。

 

 「父さん。大丈夫か?」


 マリカは右手を抑えながら、うずくまった。その時である。マリカの後ろの装甲車が爆発した。マリカやフライヤたち、ダイトランの執事や兵士たちが、その爆風で、管制室の壁に吹き飛ばされた。マリカとフライヤは気を失った。その他の兵士たちも、爆風で死んだ者、気絶した者が入り乱れていた。装甲車を爆破したのは、火星や衛星レアルから来た、地球防衛隊の援軍のアジョイント・クロスやランダム・フォレストたちだった。

 遠のく意識の中で、古海 亘は、そばにいたビー・バレーや、ドアから入ってきた崇たち、地球防衛隊の兵士たちに言った。

 

 「女王マリカやその側近の気を失っている執事、兵士たちを捕獲して、地下の防空壕兼医務室に連れて行くのだ。殺してはならん。彼らに聞きたいことがある」


 そういうと、古海 亘は気を失った。代わりにビー・バレーが続けて言った。


 「亘の言うとおりにするのだ。彼らも含め、僕と亘を地下の防空壕兼医務室に連れて行ってくれ。彼らを捕虜にし、負傷したものは治療をしよう」


4-5 オントロジーの作戦

 マリカや古海 亘たちが地球防衛隊の管制室で格闘している時、ダイトラン・コラム跡地の地上では、火星や衛星レアルから来た地球防衛隊の援軍のアジョイント・クロス、ランダム・フォレストと、ダイトラン軍のテクノスター・ネオ、サイキット・ラーン・ネオが壮絶な攻防を行っていた。戦力は互角で、互いに同程度の被害を受けながらの消耗戦になっていた。しかし、徐々に惑星ダイトランを失ったダイトラン軍が窮地に追い込まれつつあった。

 

 「このままでは、ダイトラン星とニュー・トリノ・ネオを失い、援軍が来ることがないわしらダイトラン軍は全滅してしまう」


 クイーン・テクノスターの艦橋にいたオントロジーとインベンターは、打開策を検討していた。


 「かつての格納庫跡地に行ってみよう。もしかしたら、昔の戦艦で、使えそうなものが残っているかもしれん」


 オントロジーはそう言うと、インベンターに、残っているテクノスター・ネオを従え、クイーン・テクノスターを、ダイトラン・コラムの格納庫跡地に着陸させるように命じた。格納庫は、18年前の戦闘状態のままに放置されており、ほとんどのテクノスター・プラスなどは破壊されていた。しかし、オントロジーが確認したかったのは、18年前の戦艦ニュー・トリノだった。


 「もし、戦艦ニュー・トリノが稼働できる状態で残っていれば、ニュー・トリノ粒子砲を放つことができる。今の劣勢を打開できるかもしれん」


 オントロジーは、戦略科学団、数名を引き連れ、クイーン・テクノスターから、サイキット・ラーン・ネオを使って、格納庫に残されていた戦艦ニュー・トリノの艦橋に降りた。

 艦橋の中央にある戦艦の稼働スイッチを入れると、バチバチっといったショートした音が聞こえたが、艦橋の電源が稼働した。かなり破壊されており、飛び立つことはできそうになかった。しかし、ニュー・トリノ粒子を集めるトリチウム・レーザー装置が半分ほど稼働した。ただ、ニュー・トリノ砲を放つ方向を制御する装置が壊れていた。


 「完全ではないが、半分のエネルギー程度のニュー・トリノ粒子砲が撃てそうだぞ。ただ、ニュー・トリノ粒子砲を撃つ方向を制御する装置が壊れている。戦略科学団の者どもよ。急いで、ニュー・トリノ粒子砲を撃てる方向を制御する装置を修理するのだ。そうすれば、飛び立てないとしても、ここから、通常の50%程度の威力のあるニュー・トリノ粒子砲を撃てるぞ。インベンターよ。クイーン・テクノスターなどを使って、わしらが修理している間、戦艦ニュー・トリノを守るのじゃ。そうすれば、形勢は逆転できる。キェヒェヒェヒェ」


 すると、クイーン・テクノスターの艦橋に残っていたインベンターが、


 「御意」


と答えた。


第5章 真のマリカ

5-1 防空壕兼医務室に

 ダイトラン・コラム跡地での、ダイトラン軍と地球防衛隊との激戦が行われているころ、地球防衛隊基地の管制室の攻防で気を失い、捕らわれの身となったダイトラン軍の女王マリカやフライヤを含む執事たち、およびダイトラン兵数名は、手足に鎖をつけられ、地球防衛隊の兵士たちとランダム・フォレストにより、基地の防空壕兼医務室に運ばれた。また、マリカのサーベルからのレーザーに腹を撃ち抜かれた古海 亘も担架で運ばれた。手足のところどころに傷を負っているビー・バレーや、亘の助けにはいった息子の崇も防空壕兼医務室に同行した。

 防空壕兼医務室には、数名の医師と地球防衛基地の横の宿舎から、命からがら逃げることができた、研究員たちの家族たちがいた。その中には、古海 亘の妻、美穂もいた。

 亘が担架で医務室に担ぎ込まれると、亘に気づいた美穂が、血相を変えて、亘のそばに近づいて聞いた。


 「亘、亘?どうしたの?大丈夫なの?」


 その時、亘は、おぼろげながら気を取り戻したのか、とても小さな声で答えた。


 「だっ大丈夫・・・だよ」


 防空壕兼医務室に運ばれた彼らのうち、負傷している者たちは、地球人・ダイトラン星人とはず、すぐに、待機していた医師たちから、懸命の治療を受けた。手足を負傷しているビー・バレーも同様である。

 崇は、地球人の兵士たちと協力して、捕虜となったダイトラン人のうち、意識のない者たちはベッドに寝かせ、意識のある者たちは部屋の隅に座らせた。マリカは右手を負傷し、気絶していたので、ベッドに寝かせられて右手の治療を受けた。

 その作業が終わった後、崇は言った。


 「母さん。父さんのことを頼む。僕は外の様子を見てくるよ」


 崇がそう言って、医務室を出ようとした時である。


 「うっ。ううん・・・」


と言いながら、マリカが目を覚ました。


5-2 真のマリカ

 マリカは、右手を押さえながら、少しずつ起き上がり、両手、両足につけられている鎖の手錠と、自分が着ている戦闘服を見ながら、おもむろにしゃべり始めた。


 「ここは・・・どこ?私はなぜ、このような格好をしているの・・・?」


 すると、医務室の出口を出かかっていた崇が戻ってきて、マリカの胸ぐらをつかんで叫んだ。


 「君はどれだけひどいことをしたと思っているのだ。大艦隊で地球を襲い、また、装甲車で僕らの基地に突入して、僕の父をサーベルで撃ったのだぞ!!罪の意識はないのか?」


 今にも、崇がマリカに殴り掛からんとした時、部屋の隅に座らせられていたところから、一人の女性が叫んだ。フライヤである。


 「おやめください。女王・マリカさまは、何も覚えていらっしゃらないのです」


 「何も・・・?なぜだ?」


 崇が、おびえた顔をしていたマリカの胸ぐらを離してそう言うと、フライヤは理由をしゃべり始めた。


 「私たちの医師の診断によると、マリカさまは幼児の時に、炎に囲まれる怖い体験をされたことが身についていて、炎を見ると人格が変わり、恐怖を感じ、狂暴になるという『二重人格』の持ち主だということのようです。マリカさまは、炎を見ている時に行ったことは、炎を見ていない時は覚えていらっしゃらないのです。炎を見ていない今が『真のマリカさま』で、穏やかで大変優しい性格なのです」


 手足の治療を終わり、フライヤと崇のやり取りを聞いていたビー・バレーがたずねた。


 「炎の恐怖体験・・・。ダイトラン・コラム事変の時の体験か?」


 「医師の話では、おそらく、母のロザリーさまの部屋で受けた、炎に囲まれた体験ではないかとのことです」


 すると、今度は崇が聞いた。


 「それはわかった。でも、どうして、僕の父、亘を目の敵にするのだ?」


 「それは、摂政のオントロジーさまが、ロザリーさまにあなたのお父さまの画像を見せ、『この人は地球人の中でも一番ひどい人。マリカさまの祖父のドラゴン・ヒルさまや母のロザリーさまを殺した方』だと洗脳したからです」


 それを聞いて、ビー・バレーも、古海 崇も何も言えなかった。マリカはその話を聞いて、ベッドの上で顔を手錠でつながれている両手で覆い、泣きながら、小声でしゃべった。

 

 「私が、そんなにひどいことをしたなんて知らなかった。ごめんなさい・・・」


 そう言うと、マリカはベッドを降り、鎖でつながれている足を引きずりながら、古海 亘のベッドのそばにいき、ひざまずいて、手錠でつながれている両手で、古海 亘の右手を握りしめ、額をあてて涙を流しながら言った。


 「ごめんなさい。お願い。生きて・・・」


 古海 亘は気を失ったままだった。治療はしたものの、助かるかどうかは微妙だった。ビー・バレーは、マリカに近づき、胸ポケットから古い写真を取り出し、マリカに見せながら言った。


 「この写真を見てごらん。これは約20年前に写したものだよ、この写真の中央に写っているのが、君のお父さんのアルティア・メムスとお母さんのロザリー・ヒル。そして、それを囲むように写っているのが、ここにいる古海 亘と妻の美穂、それに私だ。当時、ロザリー、亘、美穂は大学生で、アルティアと私は彼らの講師をしていた。私たちはとても仲が良く、将来の夢を語り合っていたのだよ。これはその夢を語り合ったレストランの前で記念に撮った写真なのだ。このような仲の良い私たちが、君のお父さんやお母さんを殺すと思うかい?亘の言ったことが本当で、オントロジーは君をだまし、洗脳したのだよ」


 「これが、私のお父さんとお母さん・・・」


 マリカはビー・バレーの話を聞き、写真を見て、父親と母親を指でなぞりながら、すすり泣きをした。

 それを見ていた古海 崇は、最初は父の亘を撃ったマリカを憎んでいたが、徐々に、彼女をかわいそうになり、また、彼女の映ろった美しい姿に、徐々に惹かれていってしまった。

 その会話を行っている時、捕虜となった一人のダイトラン兵が、胸ポケットに入れている通信機を、鎖の手錠のついた手で取り出し、それを口元にあてて、小声でこっそりとしゃべっていた。


5-3 マリカ捕虜の知らせ

 ダイトラン軍と地球防衛隊の壮絶な戦闘の中、クイーン・テクノスターに、通信が入った。


 「こちら、地球防衛隊の基地で捕虜になったダイトラン兵です。インベンターさま、聞こえますか?」


 その通信をキャッチした、クイーン・テクノスターの通信班の一人がインベンターを呼んだ。


 「インベンターさま。地球防衛隊の基地にいる、我が軍の兵士から通信が入っております。こちらに来ていただけますか?」


 インベンターはすぐに通信班のところに行った。


 「こちらから通信してください」


 インベンターはその通信機を持ち、話した。


 「こちら、クイーン・テクノスターのインベンターだ。どうした?」


 「大声ではしゃべれません。今、私は、地球防衛隊の基地の医務室にいます。捕虜となっています。女王のマリカさまも捕虜となっています。援軍をお願いします」


 「わかった」


 インベンターは、その通信が終わると、続けて、戦艦ニュー・トリノにいるオントロジーに通信で連絡をとった。


 「オントロジーさま。女王マリカさまが、地球防衛隊の基地で捕虜になっているとのことです。私は、残る兵士とともに、クイーン・テクノスターで地球防衛隊の基地に向かい、装甲車を使って、マリカさまを救出に参りたいと思います。オントロジーさま。クイーン・テクノスターへお戻りください。あなたさまに、これから、クイーン・テクノスターの指揮をお任せしたいと思います」


 その時、オントロジーの元に、戦略科学団の1名が報告に来た。


 「戦艦ニュー・トリノを放つ方向を制御する装置の修理が終わりました。ニュー・トリノ粒子砲、自由に撃てます。」


 その連絡を受け、オントロジーはインベンターに話した。


 「わかった。こちらは、半分のエネルギーじゃが、ニュー・トリノ粒子砲が使える状態まで修理を完了した。ニュー・トリノ粒子砲で地球防衛隊の戦艦どもをことごとく破壊するよう、戦略科学団の面々には申しつけ、わしはクイーン・テクノスターに戻る。お前はマリカさま救出に動くのじゃ」


 「御意。こちらの兵力は、クイーン。テクノスターとテクノスター・ネオ、サイキット・ラーン・ネオが2~3台残っているのみで、他は援軍に来た地球防衛隊の戦艦たちに撃ち落とされました。ニュー・トリノ粒子砲の攻撃をよろしくお願いします」


 オントロジーは、戦略科学団に、ニュー・トリノ粒子砲で地球防衛隊の戦艦を撃ち落とすように命令を下した後、乗ってきたサイキット・ラーン・ネオでクイーン・テクノスターに戻っていった。

 オントロジーが戻ると、クイーン・テクノスターは、地球防衛隊の基地の方へ航行し、防衛隊基地の近くで着陸。インベンターが乗っているものも含め、数台の装甲車を降ろし、再び浮上し、残るテクノスター・ネオ、サイキット・ラーン・ネオとともに、地球防衛隊の戦艦と戦闘を開始した。


第6章 最終決戦

6-1 ニュー・トリノ粒子砲による反撃

 衛星レアルおよび火星から来た地球防衛隊のアジョイント・クロスおよびランダム・フォレストによる攻勢で、ダイトラン軍は、クイーン・テクノスターとそれを擁護するテクノスター・ネオ、サイキット・ラーン・ネオ数台のみを残した状態で窮地に追い込まれ、ほぼ壊滅状態になっていた。

 最後のテクノスター・ネオ、サイキット・ラーン・ネオも撃ち落され、クイーン・テクノスターも、地球防衛隊の戦艦からの攻撃を受け、不時着した。不時着のショックで、戦艦クイーン・テクノスターは、ところどころから爆発を起こし、ダイトラン兵はオントロジーを残し、すべて死んでしまった。

 その時である。最後の攻撃をしようとしていた地球防衛隊の艦隊は、ダイトラン・コラムの格納庫跡地で、浮上はできないがニュー・トリノ粒子砲の修理の終わったダイトラン軍の戦艦ニュー・トリノからの砲撃を数発受け、ほぼ壊滅状態になった。


 「戦艦ニュー・トリノ。やってくれたか?」


 クイーン・テクノスターで指揮をとっていたオントロジーが、戦艦ニュー・トリノに通信したが、戦艦ニュー・トリノの戦略科学団から、回答が来た。


 「緊急で修理をしたため、戦艦ニュー・トリノも限界に来ています。撃てる砲撃は、あと1撃が精一杯です。もう、ダメです」


 「あと1撃じゃと。わかった。最後の1撃を、土星の近くの衛星の、巨大エネルギー砲の発射場付近に標準を合わせ、撃ち放て。こいつらの最大の武器を葬ってやるわ。キェヒェヒェヒェ」


6-2 防御

 オントロジーの命令を受け、戦略科学団の一員は、戦艦ニュー・トリノの砲撃の方向を土星の衛星レアルに向け、標準を合わせ、最後のニュー・トリノ粒子砲を撃つ準備をしていた。


――――― 


 その頃、衛星レアルから、地球をモニタリングしていたノアは、戦艦ニュー・トリノの砲塔が衛生レアルのタキオン粒子砲の砲塔の方に向きを変えようとしているのをとらえた。


 「やつら、俺たちが地球に『タキオン粒子砲』を撃てないのを逆手にとって、こちらを攻撃しようとしている。こちらはただでさえまだ、タキオン粒子砲の砲塔の修理が終わっていないのに・・・」


 その時、ノアはあることを思いついた。


 「衛星レアルを周回している『人工太陽』を盾にしよう。『人工太陽』なら、ニュー・トリノ粒子砲を吸収できるかもしれない」


 すぐさま、ノアは、人工太陽を、戦艦ニュー・トリノの砲塔と衛星レアルの中間に移動させた。


―――――


 戦艦ニュー・トリノから、ニュー・トリノ粒子砲が撃たれた。しかしながら、威力の弱まっているニュー・トリノ粒子砲のエネルギーは、ギリギリ間に合った人工太陽に吸収されていった。ノアの策略通りだった。

 戦艦ニュー・トリノから、戦略科学団員より、オントロジーに通信が入った。


 「オントロジーさま。土星の衛星の破壊に失敗しました。ニュー・トリノ粒子砲のエネルギーは、土星の衛星の前にある、人工物と思われる太陽によって吸収されました。ああーーーー」


 そこで通信は切れ、戦艦ニュー・トリノは暴発を起こし、吹き飛んでしまった。


 「キェヒェッ、キェヒェヒェヒェ。おのれ、地球人。それでは、ここから、トリチウム・レーザー砲で地球防衛隊の基地を爆破してやる」


 オントロジーは、気がふれたようにクイーン・テクノスターの砲撃装置のところに行って、まさぐるように稼働する砲塔を探し、地球防衛基地にトリチウム・レーザー砲を撃とうとしていた。


6-3 地球防衛基地での戦闘

 オントロジーがトリチウム・レーザー砲を撃てる砲塔を探している時、インベンター率いる、装甲車に乗ったダイトラン兵たちは、地球防衛基地の外壁をことごとく、サーベルによるレーザービーム、拳銃等で破壊し、防衛基地内に突入した。そして、防衛基地内にいる地球人の兵士やランダム・フォレストと格闘した。

 インベンターは、いち早く、格闘している兵士たちをすり抜け、防空壕兼医務室の前までたどり着き、そのドアをレーザーで破壊し、突入した。突入したインベンターを見たビー・バレーは、マリカが使っていたサーベルを持ち、インベンターと対峙した。


 「私はダイトラン軍のインベンター。女王 マリカを返してもらおう」


 「お前は、オントロジーの手下か?私はビー・バレー。ダイトラン・レジスタンスの長だ。マリカはお前には渡さない」


 インベンターとビー・バレーは、サーベルを使い、戦い始めた。そのさなか、ビー・バレーは叫んだ。


 「美穂。亘のことを頼む。崇、マリカとともに、外に逃げるのだ」


 「マリカ、逃げよう」


 インベンターとビー・バレーがサーベルで格闘している間をぬい、崇はマリカの手足の鎖をはずした。そして、拾ったダイトラン兵のサーベルを右手に持ち、左手でマリカの右手をつかみ逃げた。美穂も亘に肩をかしながら、崇とマリカの後をついていき、彼らは防空壕兼医務室を脱出した。

 防衛基地内は、ダイトラン兵、地球防衛隊の兵士、ランダム・フォレストが入り乱れながら格闘を行っていた。崇はサーベルを使い、彼らの攻防を避けながら、地球防衛隊の基地の外で脱出した。だが、逃げる途中で、亘と美穂を見失ってしまった。

 崇とマリカが地球防衛隊を脱出して、少し離れた時、クイーン・テクノスターの稼働する砲塔から、トリチウム・ビーム砲が放たれた。おそらく、オントロジーが稼働する砲塔を見つけ、トリチウム・ビーム砲を放ったのであろう。

 地球防衛基地は大爆発を起こし、ビー・バレーやインベンター、兵士・捕虜などのヒトが死に、ランダム・フォレストも破壊され、炎が立ち上った。


第7章.崇とマリカの運命

7-1 炎を見たマリカ

 地球防衛基地から立ち上がる炎を見て、マリカの目の色や表情が険しくなり、地球防衛基地に攻め入った時のマリカに戻っていた。

 マリカは、崇の手を放し、すばやく崇からサーベルを奪い、言った。


 「わっ私はダイトラン星の女王 マリカ。地球人はすべて抹殺する」


 「何を言っているのだ。マリカ。正気を取り戻せ」


 「やかましい」


 そう言うと、マリカは、サーベルを崇に向けて、攻撃の態勢をとった。


 「マリカ。ビー・バレー教授の言ったことを思い出すのだ。君は洗脳されている」


 続けて崇は言った。


 「今の君は本当の“君”ではない。取り戻そう。本当の“君”を。僕といっしょに・・・」


7-2 戦争の結末

 マリカは、右手で頭を抑え、左手でサーベルを崇のほうに向けて叫んだ。


 「あああああぁぁぁぁ・・・」


 それとともに、マリカは左手に持つサーベルの先端からレーザーを放ち、崇の胸を撃ちぬいた。崇は、四つん這いに倒れ、口から血を吐きながらも、這うようにマリカに近づき、改めて言った。


 「マリカ。今の君は本当の“君”ではない。取り戻すのだ。本当の“君”を」


 崇は、マリカに捕まるように立ち上がり、マリカを抱きしめた。

 マリカは、左手に持っていたサーベルを手放し、涙を流しながら言った。


 「崇。崇。あああああぁぁぁぁ。私はなんてことをしてしまったの・・・」


 マリカは、穏やかなマリカに戻り、泣き叫んだ。


 「よかった。マリカ。正気にもどったのだね・・・」


 そう言うと、崇は笑顔を浮かべながら、マリカからずり落ちるように倒れ、力尽き、死んだ。


 「わたしさえ、私さえいなければ、このようなことにはならなかったのに、ごめんなさい。ごめんなさい・・・」


 そう言い残し、マリカは、落としたサーベルを拾い、胸を刺して、自ら命を絶った。

 それを見ていたのか、クイーン・テクノスターの残骸のそばに立っていた、正気を失っていたオントロジーが叫んだ。

 

 「これで、これで、ダイトランも地球もわしのものじゃ。すべてわしのものじゃ。キェヒェッ、キェヒェヒェヒェ」


 その時、一筋のレーザーが、オントロジーの頭を打ち抜き、オントロジーは死んだ。

 レーザーを撃ったのは、命を賭した美穂に助けられ、地球防衛基地の横に逃げていた、瀕死の古海 亘だった。

 亘は、戦闘の中で拾ったサーベルでオントロジーを撃ったのだ。

 しかし、亘の手からはサーベルが落ち、亘は崇同様、力尽きるように倒れた。

 そして、最期の一言を残し、息絶えた。


 「この戦争はなんだったのだ。戦争で得られるもの、それは、何もないのに・・・」


最終章 新たなる火種

 この状況を冷ややかな目で見ていた、二つの星の長がいた。「アシュトン帝国」のアシュトンと「ダートマス連邦」のダートマスだ。

 「アシュトン」は言った。


 「惑星ダイトランが消滅した今、銀河系を支配するのは、この『アシュトン』だ」

 

 「ダートマス」は言った。


 「『ウエスタン・リーチ』の星々の者どもよ。このような混乱はもう収めなければならない。銀河の安定のために、この『ダートマス』が銀河系の政権を握る」

 

 ここに、「ダートマス連邦」と「アシュトン帝国」の銀河を2分する新たな戦闘がはじまった。


第2部完。この続きは、SF小説「無限軌道☆クリスタルロード」へ。













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