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風雷坊!  作者: カタルキ
一章、炎
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十六、一服大事

「で、その砂族という盗賊が街を荒らしまわっていると?」

「ああ、その通りだ。奴らめ、白昼堂々ときては作物は根こそぎ奪っていくわ、家に押し入って食料はぶんどるわでこっちとしてはえらい迷惑していてな、今度入ってくるならなりふり構わず叩き潰そうと思っていたのだっ!!」

「…………で、オレがその砂族とやらに間違われたと?」

「う、うむ。すまなかった。俺もすっかり頭にきていてな………どうも昔から熱くなると分別を失っていかん」

 

 目をそらしつつなにやら独自している男を雷太はじと目で見た。隣では風太が我関せずといった様子で椅子に着いている。

 

 

 喧噪という嵐が過ぎ去り、ようやく平穏を取り戻した食堂はあまり無事とはいえなかった。ここで起こったやりとりを知らない者が見たならば、本当に嵐が過ぎ去ったのかと目をみはっただろうほどの惨事。

 

 机やいすは奔放に転がり、ヒビが入ったもの、足が折れたもの、真っ二つに割れたり原形をとどめないほど破壊されていたものもあった。なかには補強程度では修復できないものもある。当然、店としては大損害なわけで、気の弱そうな店の主人は悲痛な面持ちでなんとか元通りにしようとあれやこれや工面していた。

 

 店主の苦労を横目にしつつ、雷太は転がっていた椅子を拾い、比較的無事そうな長机を起こしてその前に座った。風太もそれにならい隣に腰をおろす。


「はらへった………しぬ~……」

 雷太が恨めしげに言うものの、食事を作ってくれるはずの店主は呆然としており、とてもこちらを気にかけてくれる余裕はなさそうだ。先ほどからぶつぶつとつぶやきを発しながら膝を抱えて床に円を書いている。

 はたして、食事にありつけるのは一体いつのことになるのだろうか。

 雷太は店主を絶望的な面持ちで見ながら、ぱたりと机の上に伏せった。


「―――ほらよ」

 コトンと、突っ伏す雷太のまえにおかれる硬質ななにか。

 ゆらりと視線だけ向けた雷太は、そこに湯気をたてるものを見出した。ゆるやかにこうばしい香りが広がっていく。


「わるいな、店主があの状態でまだこんなもんしかだせねえが、迷惑掛けた侘びだ。受け取ってくれ」

 そこにはこんがりと焼けた見目うるわしい炒め飯が大皿の上に盛られていた。


「油で簡単に炒めただけのものだ。まあこれくらいしかねえんで勘弁して―――」

「―――っつ、のうわぁあぁぐぁああっ!!」


 雷太が吠え声とも慟哭ともつかない奇声を発した。その魂を震わせるような叫びには大男どころか、どこか遠くへ意識が離れてしまった店主までもが思わず雷太に眼を向けたのだが、獲物をえた空腹の獣のごとき雷太は全く意に介さなかった。両手でけして逃がさないとばかりに皿をつかむと同時に中身を素手で搔き込んでいく。


 その怒涛のような勢いに気圧され、大男は発する言葉もなくあっけにとられていた。大盛りをさらにもった炒め飯はみるみるうちに平らげられていくさまは、夢でも見ているかのように。


 大男が瞬きした瞬間、大皿はきれいな白さを取り戻していた。まるで炒め飯が幻であったとでもいいたげに、残されたのは米粒一つない皿とすっかり元気をとりもどした少年。 


「あー、くったぁ。久々に、ほんと久々にっ、切実に死ぬかと、餓死するかと思った……。ありがとな、おっちゃんッ!」


 満足そうに雷太は伸びをした。その生き生きとした姿からは先ほどの力なくうなだれていた様子はみじんも感じられない。


「…………あ、ああ。まあ、せめてもの侘びだ。こんな程度しか差し出せないが、これに免じてさっきの早とちりは許してくれ」

「いいって、いいって。町の様子が変だなーとは思ってたし、考えなしに飛び込んだのはオレだしな~。それにむしろおっちゃんのおかげで助かった! ありがとうっ! 危うく飯屋で行き倒れるかと思った」


 大男は苦笑する。

「気に入っていただき光栄だ。それにしてもあんちゃんいい食いっぷりだったじぇねえか。砂漠越えでもしてきたか?」

「へ? そうだけど、なんでわかったんだ?」


 彼としては冗談で言ったつもりだったのだが、目の前に鎮座する少年があっさりと肯定したことにより、顔色を変えた。

「まじかよ………」

 呻きにも似たつぶやきがもれる。


 本来砂漠越えなんてものは危険極まりない。いつなんどき妖魔に襲われるかわからないし、なによりも砂漠は過酷な地だ。強い日差しであっというまに水がなくなる、もちろん補給はできない。たびたび予測のできない砂嵐が吹き荒れ、なにもない砂地は簡単に方向を見失わせる。

大人でも十数人単位の隊列をつくってようやく超えることができるのだ。それをこんな小さな子ども二人で渡ってきたとは。


 単に運が良かったのか、それとも、それだけの実力者なのか。

 考え込んだ男をよそに雷太が再び腹減ったと呟いた。軽い口調も、見せる動作も、年相応の少年のものとしかみれない。それを聞いた風太があからさまにため息をついて男のほうにむきなおる。


「……あの、他にも料理ありませんか。」

「ああ、悪りぃ。そりゃあ飯屋に来たんだから、食べにきたんだよな。ようし少し待ってろ、あの馬鹿に言い聞かせて作らせる」


 男はおもむろに店主に近寄り、がっしりとその首根っこをつかんだ。

「おら、なにを未練がましく机に抱きついてるんだ。この店の店主ならさっさと料理つくってやれ。さっきからこいつらがお待ちかねだぜ」


 男はうじうじと嘆く店主のをそのまま、ずるずると厨房まで引きずっていく。どうやら雷太達に聞かれないように説得とやらをするらしい。

(どうでもいいからもっと飯……)

 雷太が再びばったりと机に伏せた、その時。



「砂族だ、砂族が出やがった!!」

 外がにわかに騒がしくなり。面倒事の到来を告げた。

お久しぶりです^^;

長い間放置してしまいました。それでも読んでくださった方!ありがとうございます。

次に掲載するのがいつになるかわかりませんが、よかったらこれ以降もよろしくお願いします。

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