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風雷坊!  作者: カタルキ
一章、炎
14/17

十四、 炎出づ

 水がゆるりと流れていく。

 大陸を横断する大河は地上のいざこざになど気にも留めず、ゆっくりとうねり、海への遠道のりを進んでいった。

 

 その岸辺に横たわった青年の姿がある。

 齢は十七、十八。身には一見して高価とわかる紅の衣をまとい、脇にはひと振りの剣が鞘に納めて置かれていた。平民とはかけ離れた、貴族か皇族を思わせる姿をしている。

 髪は燃え立つ炎の色を宿し、顔立ちも炎の苛烈さを秘めたような鋭さが備わっていた。

 誰が見ても、彼を一般の武人とは思えないだろう。

 そんな異質さを放つ青年は昼だというのに、腕を枕にし、寝入っている。

 はたから見れば無防備そのものの姿をしていたが、本人は気にすることもなく熟睡していた。

 

 そこへ。

 ひそかに影が忍び寄る。

 濁った河底から地上の少年をうかがい、ゆっくりと、確実に地上へ這い上がっていく。

 ひたり、ひたりと。

 その巨体を完全に地上へと引き出した影は、しばらく周囲をうかがうように巨大な眼を泳がせる。きょろきょろと動き回っていた視線が、うっそりと青年に定められた。

 

 影が跳躍する。

 それまでの動きとは一転。巨体に似合わぬ俊敏な動きを見せた影は、一気に獲物へ飛びかかった。

 宙を跳びながら影は口を開く。顔全体が横に裂け、無防備な獲物を丸のみにしようと舌が覗く。

 そのまま、影は一気に降下し、青年に覆いかぶさった。

 


 瞬間、

 業火が立ち上る。


 

 周囲を飲み込み、紅でそめる炎。

 直撃を受けた影はたまらずに後方へ跳んだ。

 炎で焼かれ、焦げ付いた皮膚はぷすぷすと音を立てる。影は苦しげな唸りをあげた。


 その視線の先では、獲物としていた青年がゆらりと立ち上がる。

「……だれだ。俺を起こしやがったのは」

 ぼそりと呟かれる声。

 怒りにふるえ、殺意を秘めた言葉。

 たった一言で、熱で満ち溢れていた周囲の気温は一転、氷点下並みの寒さに包まれたかのように。

 影は直観的な恐怖を感じ取り、無意識のままに身を震わせる。

「……お前か? お前だよな? お前以外いないよな?」

 ゴウ、と。青年から湧き出る炎。

「――覚悟はいいか?」

 青年が言うと同時に、身の周りで蛇かなにかのようにとぐろを巻いていた炎が周囲へ放たれる。

 地をすべり、四方へ広がっていく紅の焔。 

 

 炎が狙う獲物は一体の獣。

 前身は闇を映した漆黒。体は硬質な毛におおわれ、どれも針のような鋭さを持っていた。

 炎を忌々しげに振り払おうとする蛙を模倣した頭、その額には縦に割れ目が走り、焔とは対照的な赤が宿っている――巨大な、額でぎょろりとうごめく眼。

 本来あるべき場所とはかけ離れた位置にある赤い眼が、この獣の異常性を物語っていた。

 古より生き、地上へ災厄を放つとされる獣。

 人々が妖魔と呼ぶ存在であった。

 

 妖魔は一つ吠え、剛毛ごうもうに包まれた前足を振った。

 対象は妖魔をいら立たせている一人の青年。

 妖魔の大柄な胴体にも関わらず、前足に備わった鋭いヒレは俊敏に、空気を引き裂きながら青年へ向けられる。

 青年は地を蹴り、妖魔の攻撃を巧みにかわしていった。

 妖魔が動きを停止する瞬間。

「――焔よ――」

 青年の足元から紅の炎が吹き上がり、その姿は焔に包まれる。

 骨まで炭にしてしまう業火に抱かれながらも、青年は不敵に笑んだ。

「――滅せよ――」 


 

あ、どうも。

知っている方も知らない方も忘れ去ってしまった方も、どうもカタルキでございます。

前回の投稿より随分と時間がたってしまいました。

これからは不定期投稿でのんびりやっていきたいと思ってます。

では、読んで下さりありがとうございました。<礼>

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