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ある日、好きな子に魔法のチケットを渡された

作者: 柳


「幸太。これ、渡しておくっすね」


ある日、学校から帰ると既に偲が部屋にいた。毎度のことながらどうして俺より先に俺の部屋に来て、堂々とゲームをしているのかと疑問に思うのだが、今に始まったことではない。

偲はゲーム機をテーブルに置いて、俺に小さな紙切れを渡してきた。


「これ…なに?」

「なんと驚き、魔法のチケットすよ」

「また、変なのに影響されたのか?今度は魔法のあるファンタジー小説か?」


偲はよくアニメや漫画、小説などに影響をもろに受ける。

よく分からない変な事をし始める時はだいたい何かに影響を受けている事が多いのだ。

一時期は手首に包帯を巻き付けたり、眼帯をしていたりと大変だった時期もある。それを本人の前で掘り返すと恥ずかしいのか暫く口を聞いてくれなくなるのでしないが。


さて、偲に渡された紙を見る。その紙は普通の紙と何一つ変わらない紙切れだった。

変わった所を強いて言えば、紙の端っこには偲の名前が入っていることぐらいだろうか。

小さなチケットサイズの紙を俺に渡して何を企んでいるのだろうか?


「で?何が魔法なんだ?」

「ふふん、この紙に書かれたことだったら私は何でも言うことを聞いてあげるっす」

「なんでも?」

「そう!なんでもっすよ。……あ、え、エッチなのは駄目だめっす」

「いや、そこまでは考えてないんだけど」


顔を赤くして否定されるとちょっぴり反応に困るから止めて欲しい。


「この紙、どうやって使うんだよ」

「お願いをそれに書いて私に渡してくれればオッケーっす」

「ふぅん…なんでもね。というか、なんでこんなチケットをくれたんだよ」

「だって、今日は幸太の誕生日すよ?」


あぁ、そうか。今日は俺の誕生日か。

今日、2月9日は俺の誕生日でもあり、両親の命日でもある。

高校1年生の時、両親は二人で結婚記念日の旅行に出かけていた。俺は二人の邪魔はしたくなかったから家で留守番をすると言って、二人を見送ったんだ。

だが、結局二人はもう家に帰ってくることはなかった。別に日本にとっては特別大きな地震ではなかった。震度4程度の軽い地震だと思っていた。だから、平気だと…大丈夫だと思っていたのに。


「幸太、大丈夫すか?」

「ん?…あぁ平気だ。ありがとな、大事に使わせてもらうよ」

「駄目っす、今使って欲しいんすよ」


偲は俺に強い口調でそういった。


「エリクサー症候群って知ってるすよね?」

「あれな、貴重なアイテムとかを使わずにずっと持っておくことだろ」

「そうっす。人間は、使う場面に迫られても結局はそれを使わない選択を取る事が多いんすよ。だから、そうならないために、今直ぐに使うっす」


俺はチケットを見る。

何を頼めば良いんだろうな。ふと考えるとあまりお願いというものがパッとは浮かばない。

欲しい物があるのかと言えば特にない。したいことがあるのかと思えばあんまりない。


「……考えてもいいか?」

「うーん。まぁ、いいっすよ?でも、それが使えるのは今日だけっすからね?」

「あぁ、わかってる」


俺はベッドの上で考える。

偲は俺に言いたいことを言い終えたのかゲーム機を手に取り、またゲームを始める。

彼女がやっているのはいわゆる死にゲーと言われるジャンルのゲームだ。俺が買って、積みゲーにしていたのを勝手にやり始めて勝手にハマって、こうして俺の部屋に入り浸っている。

そう言えば、偲が俺の部屋に来た出したのっていつからだ?


「なぁ、偲」

「うん?な、なに…今、忙しいんだけど!あ、ちょっ、当たってないでしょ!?今の攻撃」

「楽しいか?そのゲーム」

「楽しいっす。死ぬほどムカつくけど」

「そっか…それは、良かったな」


いつからか、家にいるのが辛くなった。

家にいると思いだしてしまう。あの時の温かさを優しさについ手が伸びる。掴めるわけがないのに。

だから俺は漫画研究部という部活に入った。漫画はよく読んでいたし、興味が少しだけあった。

それに、時間を適当に潰せると思った。


「ねぇねぇ!その漫画、面白いっすよね?」

「あぁ、そうだな」

「どのキャラが好きなんすか?私はね悪役のこいつなんすよ」

「ぶっ!完全なネタキャラのこいつかよ!?」

「あ!私の推しを馬鹿にしたっすね!?これは高くつくっすよ?」


こんな感じだったと思う。それから段々と会話が増えていった。

部活だけだったのが廊下で会った時、昼休み、そして放課後といつしか一日中話している。

会話の内容も漫画から好きなゲームやアニメ、食べ物や曲なんかに発展していった。


そして気づいた。いつしかアイツのことを考えている自分がいることに。

今、何をしているんだろうか。この漫画ならあいつは誰が好きなんだろうかと、考える俺がいた。


「もーう……また最初からじゃん、うへ~」


…思い出した。

こいつが俺の家に入り浸りだしたのは、俺の両親が死んでいることを知ってからだ。

単純に親が居ない空間というのが珍しくて、都合が良いと言うのもあるのかもしれない。

だけど、そうだとしても。俺は偲に救われたんだな。


俺はチケットに俺のお願いを書く。

心臓が音を鳴らす。不安で一杯で、ためらう気持ちもあるが、俺が今持っているのは魔法のチケットだ。


「偲、これは叶えられるか?」


俺はチケットを偲に渡す。

偲はゲーム機を置いて、俺からチケットを受け取り、書いた内容に目を向ける。


「……楽勝っす!」


笑顔で嬉しそうに笑う表情を見て、俺も不思議と笑顔になるのだった。

読んでくださりありがとうございます。

もし少しでも良かったら評価をしてくださると嬉しい限りです。


全然これとは関係無いのですが、前回投稿した『どうやら俺の幼馴染は幼馴染を辞めたいらしい』が凄く好評いただけたことが嬉しかったです。

一時期、ランキングにも載っていたようなのでありがとうございます。


では次の投稿を楽しみにお待ち下さい。0_o

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