表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

なつの夕凪詩集

麦わら帽子と白のワンピース

作者: なつの夕凪

 最後に会ったのは三年前


 またすぐに会えると言ったのに


 キミはいない


 あの夏


 キミはいなくなった


 次の夏になればまた会える


 わたしは待ち続ける





 やがて夏になる


 太陽は降り注ぎ


 庭にも太陽の花が咲く


 蝉時雨が響き渡る


 されどキミはいない


 わたしは信じて待つ


 今年は遅いだけ


 そのうち悪びれもせず


 ひょっこり顔を出す


 わたしは怒ったふりをして


 キミがわたしをなだめたら


 頃合いを見て許すのだ


 そしてもうどこにも行かないと


 約束させるのだ


 楽しみだ


 楽しみだけど


 キミはいない


 夏はそのまま過ぎていった



 次の夏


 わたしはキミを待つ


 すっかり大人になった


 わたしを見せて


 キミに後悔させるんだ


 綺麗になったと言わせるんだ


 白のワンピースと麦わら帽子で


 キミを待つ


 初夏が過ぎ


 お盆が過ぎ


 晩夏となれど


 キミはいない


 それでも


 キミを信じて待つ


 こんなにもわたしを待たせてるんだ


 文句を言わないと気が済まない


 ひどいじゃないか


 どうしてこんな思いをさせるんだ


 ううん


 何も言えなくてもいい


 手を繋いでくれればいい


 弱虫だなって笑ってくれればいい


 それすら無理なら


 キミを一目見たい


 一言で良いから


 キミの言葉が欲しい


 雫が地面を濡らす


 太陽はすぐに乾かしてしまう


 心はもうカラカラ


 キミがいないと雨は降らない


 夏はまた過ぎていった




 次の夏


 キミはいない


 次の夏


 キミはいない


 次の夏


 キミはいない


 次の夏


 キミはいない


 次の夏


 キミはいない





 キミはいない







 あれから何度も夏が過ぎたのに


 また夏が来る


 キミを待つつもりだったけど


 もう待つのを止めるよ


 キミを追いかけることにするね


 でもね


 眠いから


 ちょっとだけお昼寝する


 起きたらすぐ走り出すから


 キミは知らないかもしれないけど


 わたしは足が速いんだよ


 絶対に追いつくから


 もう離さないから






 誰かがわたしに古ぼけた麦わら帽子をかぶせる


 ゆっくりと目を開けると


 日に焼けたキミがわたしに微笑む


 待たせたなって


 キミが言うから


 待ってたよと


 キミに言う


 迎えに来たよと


 手を差し出したくせに


 わたしが手を伸ばすと


 キミは走って逃げていく


 わたしは苦笑いを浮かべて


 白のワンピースがめくれるのも気にしないで


 キミを追いかける


 どこまでも


 どこまでも


 キミを追いかける

お越しいただきありがとうございます。


お時間がございましたら代表作(☆の下のバナー「なつの夕凪」を押す)

もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
https://img1.mitemin.net/d9/fw/5rxsk5zxfnvu6olkkwnealsygys1_3ce_dw_5k_28yl.png
― 新着の感想 ―
読み進めていると、悲しい詩なのだろうかと思っていたのですが、最後の部分を読んで一気に印象が変わりました。想いが純粋に表現されているところが、とてもいいと思います。あの暑い夏の光景と、もういなくなってし…
2025/02/24 17:54 退会済み
管理
[良い点]  盆の日和に零れる想いが射す陽に照らされ枯れ行く歳月すらも早く感じられる表現は、夏の陽炎に浮かぶ幻影のようでした。
[良い点] 活気に満ちた夏の風景と、「キミ」を一人で待ち続ける「わたし」のコントラストが鮮やかだなと思いました。待っている間は来ないのに、追いかけようと決意すると手が届いた。示唆的で素敵ですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ