麦わら帽子と白のワンピース
最後に会ったのは三年前
またすぐに会えると言ったのに
キミはいない
あの夏
キミはいなくなった
次の夏になればまた会える
わたしは待ち続ける
やがて夏になる
太陽は降り注ぎ
庭にも太陽の花が咲く
蝉時雨が響き渡る
されどキミはいない
わたしは信じて待つ
今年は遅いだけ
そのうち悪びれもせず
ひょっこり顔を出す
わたしは怒ったふりをして
キミがわたしをなだめたら
頃合いを見て許すのだ
そしてもうどこにも行かないと
約束させるのだ
楽しみだ
楽しみだけど
キミはいない
夏はそのまま過ぎていった
次の夏
わたしはキミを待つ
すっかり大人になった
わたしを見せて
キミに後悔させるんだ
綺麗になったと言わせるんだ
白のワンピースと麦わら帽子で
キミを待つ
初夏が過ぎ
お盆が過ぎ
晩夏となれど
キミはいない
それでも
キミを信じて待つ
こんなにもわたしを待たせてるんだ
文句を言わないと気が済まない
ひどいじゃないか
どうしてこんな思いをさせるんだ
ううん
何も言えなくてもいい
手を繋いでくれればいい
弱虫だなって笑ってくれればいい
それすら無理なら
キミを一目見たい
一言で良いから
キミの言葉が欲しい
雫が地面を濡らす
太陽はすぐに乾かしてしまう
心はもうカラカラ
キミがいないと雨は降らない
夏はまた過ぎていった
次の夏
キミはいない
次の夏
キミはいない
次の夏
キミはいない
次の夏
キミはいない
次の夏
キミはいない
キミはいない
あれから何度も夏が過ぎたのに
また夏が来る
キミを待つつもりだったけど
もう待つのを止めるよ
キミを追いかけることにするね
でもね
眠いから
ちょっとだけお昼寝する
起きたらすぐ走り出すから
キミは知らないかもしれないけど
わたしは足が速いんだよ
絶対に追いつくから
もう離さないから
誰かがわたしに古ぼけた麦わら帽子をかぶせる
ゆっくりと目を開けると
日に焼けたキミがわたしに微笑む
待たせたなって
キミが言うから
待ってたよと
キミに言う
迎えに来たよと
手を差し出したくせに
わたしが手を伸ばすと
キミは走って逃げていく
わたしは苦笑いを浮かべて
白のワンピースがめくれるのも気にしないで
キミを追いかける
どこまでも
どこまでも
キミを追いかける
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