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運命

作者: 司 征

 筆者は「運命」という言葉が好きではない。

 より正確に言えば、事象や結果を「運命」の一言で片付けるのを良しとしない。


 もちろん創作において、「運命の人」だの「運命の出会い」だの「運命の絆」だのはとてもロマンティックに映るし、キャラクター同士の勝敗は「戦う運命」だとか「運命の決着」だとかドラマティックに演出される。自身が物語を書くときには使いもしようし、物語を読みながら一喜一憂もしよう。

 しかし、現実に立ち返ってみればこの限りではない。幸運なことを運命と呼びたい気持ちもわかるが、フィクションならいざ知らず、現実でそれを認めるのならば不運も運命と捉えなければならない。


「運命」は「(天)めいめぐらす」と書く。「命」はいわゆる天命であり、天あるいは神様が決めたことをいい、「運らす」は一定のまま推移させる、決められたとおりに経過させることを表す。つまり人知の及ばぬものに決められた避けようのない、変えようのない事柄のことである。

 運命を奉じる者の中には「運命は努力で変えられる」などというものがいるが、馬鹿をいっちゃいけない。変えられない、変えようがないから「運命」なのだ。第一「努力で変えられた」ことをどうやって証明できるのか。運命などというものを認めるのならば、変えられたその結果自体そうなるよう決められていた、ということもできるのではないか。どうしてこれを否定できよう。


 誤解なきよう言っておくが、筆者は決して努力を否定するものではない。むしろ努力は肯定するものである。「運命」は変えられないものなのだから、人は努力しようがしまいが同じ結果にたどり着くことになってしまう。つまり「運命」を信ずるものの方が努力をないがしろにしているのだ。


 個人の未来は、過去から現在、将来に渡ってその個人が積み重ねたものによって決定されるのであって、決して何ものかによってあらかじめ決定付けされるものではない。もちろん個人の努力だけではいかんともしがたいことがあるのもまた事実である。

 今の状況で言えば、たとえばこのコロナ禍の中で、職を失うなどの不運に見舞われたとして、これを過去の努力不足と言ってしまうのは甚だ暴論であるといえよう。過去のあるいは現在の、努力とは関係なしに訪れる不幸、不遇というものも確かに存在する。


 さらに言うなれば、人生において不慮の事故や不意の病、他人の身勝手な欲望で若いあるいは幼い命が脅かされることも往々にしてある。若年者に限ったことではないが、これらが個々の努力でどうにも出来ない事柄であるのは言うまでもなく重々承知している。


 だが、だからといってこのような「結果」を「運命」で片付けてしまっては、残されたものがあまりにもやるせないではないか。日々ニュースを見れば親が子の、子が親の、不埒な理由で他者の、身体ばかりでなく心も命さえも傷つける例が枚挙に暇がない。

 どうして虐待などでいたいけな命が奪われるようなことが「運命」などと言えようか。

 だからやはり現実において「運命」という言葉は好きではないし、受け入れたくもないのだ。


 すべてにおいてではないにしても、日々の積み重ねが自らの未来を構築するという考えは、否定されるべきものではないと思う。


 ゆえに我々は、今日という日々を精一杯生きていかなくてはならないのだ。

 創作物ならばともかく現実では運命などというものに振り回されたくはないと思うのである。

あくまでも筆者個人の考えです。

実践しているとは限りません。

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