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第五話 2   

「んだぁ!!うぜぇ!!くたばれこの野郎っ」


触手を巡らせればたちまちそれを斬られる。斬られた部位は血を流し、空に舞うがそこから新たに生やして小僧にダメージを与える。奴は涼しい顔をしているが、動きが鈍くなったのかダメージを負う回数が着実に増えていく。


『キエロキエロ!!ヒツヨウナイ』

「お前らは黙れ!!いやさグラフィックつーか文面綺麗だけどさ、綺麗だから臓器とかさ良くねぇもんも見えるんだよ!!全然話が優しくねぇじゃん!!グロじゃねぇか!!」

『……フッ』

「ドヤるな!!顔ねぇから表情見えねぇーんだよ!!残念だったなぁ!!」


 ケタケタ笑う花達と小僧がギャク展開を繰り広げている中、さっき斬られたときの黒い塊…ドロドロとしたやつに蝕まれながら体を再生していった。


「あれで良いんだよな?」

『ああ』


 そう。ミラーでの戦いの前に小僧が何を思ったのかある条件を持ちかけてきた。攻撃はするが代わりに殺しはしないと。

 時間稼ぎをしていることはここに来てから分かっていてこんな長期戦に持ってくる奴は今までいなかった。段々正気に戻り、再度小僧は伝えた。だが、実際にはあの姿が一番楽なのだ。わしはこの姿も保つ事さえきつくなっていた。


「…っ」


 小僧は時々口から血を吐いては少しよろめくが、まだ足元はしっかりと立っているも、小僧は今まで出していた武器を消して、後ろの壁に倒れるように座り込んだ。


「あんたも、疲れたろ?……休もうぜ」


 そうして弱々しく言い、両手を広げ今ならオレを殺れるぞと笑い、冗談をほのめかす。今ここで止めを刺せるというのに、わしは出来なかった。出来ないというよりかは出来なくさせておるのだ。

 何か妙だ。人間だれしも心に隙というものがありそこを狙うというのに。奴は別な事を隠している。使う武器も能力も、一般とは違うのだ。

 

 こやつは…………まさか…。


「さてと。もー流石に良いだろ?……本編に関係ねぇこの戦いを見せられている、画面越しのあんたらも飽きただろうし」


 ふぅと大きく息を吐いた後、よっこいせと言いながら後ろの壁に右手をついて小僧は立ち上がった。

そろそろ合図だと悟ったわしは、武器を構えるほんの少しの時間で、わしは今まで巡らせていた花達をひとまとめにし、無数の瞳だけの黒い花に変えた。


「…え…ちょっとま………きっっっしょ」

『本音出てるぞ。もろに本音が』


 どこがぼぉーとしていた小僧は異様な雰囲気に気付いたのか引き気味にリアクションを取った。口だけのものよりもさらに大きく、どこを見ても無数の目。流石に小僧も顔を青ざめた。


「待て、一体待て。このシーンがイラスト化か映像化したら集合体恐怖症の人どうす…ていうかここなりそうだけど。明らかに使われるけど」

『…いや、そもそもなら』


 わしの後ろにある壁にザクッと壁に刀が数本刺さる。にっこりと違う意味で微笑んだ小僧に色んな意味で消滅させられるという殺意と圧を感じ、すかさずわしは謝罪した。それにくすっと笑った小僧はため息をついた後、これからやろうとすることを言い当てられる。もう戦いどころか考察し始めた。


『す、すまん…冷静になれ小僧、目の奴は』

「これでどう冷静になれって!?口だけは…あ~…あれだったけど!!」

『…フォローになっておらんだろうが』


 ザザとノイズが走る。小僧も気づいたのか武器を消してわしの目の前に立った。ぐるりと黒花は小僧を囲んで小僧からはわしが見えなるので、花を通じて話しかけた。


『確かにわしは願いを叶えるが…ちょいとお前さんはどこか勘違いしとるようだ。……お前さんにもし殺させたとしても自業自得だから後は好きにしてくれ。……考えられんな。こうしてわしが正気で話しているということに』

「まぁな……想定外だったか」

『そういうことじゃ』


 あの娘はよくも悪くも忌み嫌われるということは他から聞いていたが、小僧が来る前わしが奴の首を絞めた時娘の願いが見えた。……わしは「願い」事が餌となるだけだから良い。だが連中は「あれ」は「最高級の餌」なのだ。だが、その前に小僧のを見ておきたかった。


 バチンと手を叩くと、それに共鳴して小僧の心の内部に白い触手がするりと侵食していく。正気のままで願いをこの姿で見るのは初めてなのだ。手探りだったがなんとか成功した様だ。


「…けっこう、痛いな、これ」

『すまぬな…あと3秒後お前さんは眠りにつく。体感時間は精々5秒だから耐えてくれ』

「了解」


 小僧にカウントダウンをし3秒後にはきっかり眠りについた。触手が底無しの空間にもうすぐ差し掛かるところでわしは目を閉じた。



 ____さぁ見せておくれ、お前の願いを。























な ぜ だ ?


  お か し い 。


 な ぜ ?   な ん に も み え ぬ の だ ?


































「……おはよう」


 小僧の願いが見えなかったわしは小僧の言葉でハッと現実に戻ってきた。その様子に弱々しい笑みを浮かべながらもはっきりとした声で小僧はわしに言った。


「どうだ、中々攻略難しいだろ?…早ぇよてめぇには。オレの事を理解すんのも、知るのも」

『隠していたのか?』

「んまぁ〜…そうだな」


 最後の言葉に少し空白があり疑問に思ったが声に出してはいけないと無意識に判断していた。本能が強く疑問jを聞くことに警告をしていた。

 しばしの静寂の後、小僧は立ち上がりどこからもなく一本の刀を右手に持った。戦いに出していた色とは違い、刀は白と金の鞘に収まっている。それがどんなものか悟った。


「一応説明しとくが、あんた自体は殺さないし痛みもない。長いことこんな見た目にして、悪さしてた『根本』を殺すだけだ。「素の姿」に戻るが、眠り作用がある。眠ってから目覚めるのはあんた次第っていう所だな」

『…分かった」


 スウッと鞘から刀を大切に取り出した彼はドンッと飛び出し、わしの胴体を一文字に斬った。

 言ったとおりに痛みも来ないどころか、光がぽおっと溢れ包み込む。何百年も触れられなかった温もりを感じる。「僕」は自然と暖かい涙が出てきた。


「…セット」


 彼が一言言うと異形の体が灰が舞い上がる様に消えていき、異形の『根本』が顔を覗かせた。彼はまだ癒えてない傷だらけで僕の身体を優しく抱きしめた。


「……今度はお前の番だぞ?「焔」。目覚めたら翡翠の彼を護ってやれ。今度は呑み込まれんなよ?」

「うん。少し性格冷たくならないとね……あの子を生かしてくれたお姉さんの分まで」

「そうだな」


 段々眠くなる僕の頭を優しく撫でてくれた。これで二回目。他人だけどお兄ちゃんみたいな存在の彼に救われた。彼の言うとおり…目覚めたら護らないと。


「また、どこかの世界観で会おうね」

「あぁ。会おうな」


 もう眠りかける寸前、彼は封と言うとまたさっきの光にからだが覆われ…僕は眠りについた。


































◇◇◇


『アアアアア…!!!』

「……リセット」


 カチリと音がして、『根本と呼ばれるモノ』の体が再生した。焔を狂わせた『根本』は怨念の塊であるが胴体も頭も手足もある人型だった。

 彼はそれをすかさずぐしゃりと潰すように刀を頭から振り下ろす。ドロドロとした黒いものを斬ってはリセットし、また同じ行程を何十回も繰り返している。

 この場所が際程まで焔がいたとは思えないほど、異形と彼の血で無惨になっていた。


『モ、モウヤメ』

「終わらねぇぞ?…オレの気が済むまで、何度も何度もリセットしてやる」


 深紅色に染まった光の無い目で時折笑いながら『異形の根本』を見下す。斬殺していく彼は、心陽や焔と接していた時の表情とはまったく性格がからりと変わった。

 彼は殺気を抑えないまま、また刃を振う。


『タタラレルゾ!!コゾウ!シンデモイ』

「あの蛇の異形だって指図したのはてめぇだろ?偽善ぶるな」


 言葉も聞かないままぐしゃりと今度は細い体を握りつぶす。彼はリセットと言い、再生させ攻撃を始めた。


「何も罪もない奴らを洗脳して病ませて自殺させる。便乗した連中は洗脳を解かぬまま生活させ、被害者は人として死なねぇなんてよ………ざけんな…殺す」


 そう言っている間にも、根本の体を彼は刀で突き刺していく。それに耐えきれなかったのか

『ワシハ、願イヲ、叶エタダケダ!!アイツガ、マンマト騙サ』

「____罪人のてめぇが、焔の名を口にするんじゃねぇ」


 馬乗りになったら彼は、グサッと根本に心臓に刀を突き刺す。びちゃっと異形の怨念に染まった血が彼の顔に降りかかる。機械的に彼は何度目かわからないリセットを行った。


『~~!!』


 もとに戻った根本は、体を彼に結界を縄状にしたもので縛られ動けなくなっていた。自分は殺させるが記憶も痛みも無くならない。繰り返される地獄に、根本はまさに絶望し、ガタガタと震えた。

 絶望する根本の表情を見るや否や、彼はくしゃっと前髪を刀を持っていない左手で強く掴む。それが数秒続いた後、感情が消えたのか聞き取れない声で何かを呟いた。


 

「なぁ…疑問に思ったろ?オレがどうして、てめぇに会った瞬間から、作者が書く創作上から消さなかったか…分かるかぁ?


 この瞬間、根本は例えリセットされようがもう二度と存在は再生されないと悟った。刀の全ての怨念達が彼の背後にいた。


『コ、コロサナイデクレ!!懺悔デモナンデモス』


 言い終わらないうちに根本を一体となった怨念らは大きく口を開け……そのまま根本を噛み潰した。

 咀嚼音が響く中、彼はポツリと弱々しい声で呟く。


 ____そう。これは「優しい物語だから」と。

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