第一話
今日は高3最後の体育祭。行ってきます。
「な~にやってんだよ、神崎ぃぃ!!」
「あ~あ、最っ低…行こ?あんな奴に構う方が不幸になる」
「ご、ごめんなさい…!」
朝方、ほのぼのしていた空気から一変。先輩方の怒涛でその場の空気が凍りついた。あの草原に長くいたせいで遅刻しそうになり、クラス前まで走ってきた所怖い3年の先輩の肩に身体が当たり大量の資料が廊下にバサッと落ちてしまった
「ちょっ…お~い嘘だろ…!?」
そして、廊下に資料が当たる直前、強い風が吹きほとんどの紙が窓の外へと飛び出していく。その様子を見た周りの人たちは一瞬呆然としていたが、そそくさとクラス内に戻っていった。
「おい!誰か手伝えよ!?あぁ~お前は触るな!」
「…っ」
廊下に散らばる数枚の資料を取ろうと手を伸ばしたが先輩に身体を突き飛ばされ尻餅をつく。でも自分がやった事だから諦められない。どうにかして手を伸ばした瞬間
「神崎さん…?これは一体どういう事……?」
「あ…っ」
生活指導の先生に見つかってしまった。先輩方はくすくすと目配せし笑いあっていた。また…やってしまった。
「……いい加減、直したらどうです?その不注意さ。今高3の先輩方がどういう状況かわかっていらしてこんな行動を取られたの?」
「い、いえ…ち、違うんです…」
「その声も。小さすぎるんですよ……まったく…」
盛大なため息をつかれてその場を後にされた。辺りを見渡すとどうやら先輩方もクラスに戻ったのか、廊下には私一人だけだった。
緊張から解けてへたっと地面に座り込む。でも、このままだとクラスに一向に入れない為、気持ちを切り替えてクラスの扉を開ける。
「まーたあいつやらかしてやんの~」
「こら、そういうこと言わないの。席につきなさい」
「…はい」
茶化してくるクラスメイトを担任の女の先生が宥めてくれた。ここで人気のあるクラスメイトなら心配する声もあがるのかな…と思う自分に、それではいけないと小さくかぶりをふる。もう、声も上がらない事はとっくのとうに慣れたのに…
「じゃあ、これで朝礼終わるわね?またね」
「またね~先生」
いつのまにか朝礼が終わっていて慌てて一時間目の準備を遅れないように始める。クラスメイトは相変わらずで楽しく話に花を咲かしていた。
◇◇◇
私には幼い頃からある生まれつきの不幸体質がある。まだ幼い頃は何もない所に転んだりする程度だったけど…年々酷く重くなっていく。さっきのはまだ軽い方だから。そう言い聞かせている。
「そ…っそれじゃあ、授業始めるぞ~」
「起立、礼、お願いいたします」
「お願いいたします~」
一時間の授業担当の先生が入ってくる。皆は気がつかなかったがふらっと立ち眩みしていた。ちらっとバレないようにその先生を見た瞬間、私の体が凍りつき思考が停止する。心臓の鼓動が速くなり冷や汗が止まらない。
ずずず…と先生の首をゆっくり巻き付いている蛇型の頭だけぶくぶくと太ったどす黒いその『異形』は今にも先生の頭を喰らいつきそうだった。ばちっと異形に目が合いにやりと笑顔を浮かべる。思わず力が抜けそうになる。
『…みぃつけたぁ……わしはこんな小娘こどきにやられる彼奴らでは無いぞ?……くくく…っ精々後悔すれば良い』
私には不幸と死が『異形』で視える。それに気づいたのは12歳の私の誕生日。突然現れて次々と大切な人が
この世から、消えた。
先生は数日後、自殺した。
遺体はまだ見つかっていない。