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ネグリと付与の魔剣  作者: 椎木唯
序章 ネグリと魔剣さん
6/12

ハッピーな都会スモークin自室

 食後の運動、もとい新生物退治を兼ねた実力を測る時間は終了した。団長さん的に言うとネグリ強化一日目終了である。マジでセンスがない。イケメン故の命名力の無さか…。

 もし、子供ができた時に名付けの際、


「ふむ…天上天下唯我独尊とかはどうだ。強そうで、良い響きの名前じゃないか」


「もうあなたったら…」


「役所に出しておいたから今日はゆっくりと過ごそうか」


「あなたァ!!??」


 的な展開になること間違い無しだろう。完璧に見えて欠点がある、って所に萌えるって言うじゃん。それはハゲに適応されるか疑問だけど。ハゲで萌えるなら茹で卵を見たら燃え尽きるだろう。

 団長さんの子供がきらきらネームにならない様に合掌しながら家に付く。まあ、厳密には家ではなく竜護舎なのだけど。



 今は良いご飯と恵まれたベットがある宿谷的な立ち位置の竜護舎であるが、そもそものルーツは今は亡き王国の守護を目的とした騎士の集まりだったのだ。見る影もないとはこの事を言うのだろう。

 剣を握り、鎧を見に纏い、竜と心通わせ、王を守護する。そんな由緒正しき集まりだったのだが時代の流れは強大である。

 新生物との戦いと、国内での権力争いは水と油のようなものである。両立は到底出来なかった。

 その結果の王国滅亡であり、王に従える騎士たちは主を失い、結果として竜護舎といった竜の寝床しか残らなかったのだ。強力なのは人の力ではなく、竜の力だと。暗にそう言われたように感じた昔の人達だったが、居場所としては一応残されたのである。王国時代に誕生した一人の聖女を至高とし、崇めるようになった。その部分を今考えると、その聖女とは大聖堂にあるセンシティブな像が当てはまる。


 そんな立派な志と、残念な解散理由がある竜護舎であるが時代の流れは強大である。そんな事を忘れ、神父服に身を包みピンクのハート柄のエプロンで食事を作り、病院設備でしかなし得ない個人的な情報を得る事で心を満たす。…最後のは気のせいである。


 過去は色々とあるが、結果として団長さんって言う一騎当千の人材が生まれたので結果オーライである。

 そんな集団なのにメイさんの話は聞いた事がないんだよな…僕の目から見ても強者感ぷんぷんに立ち込めているんだけど。


 まあ、実力者がいちいち「私、強いです!」って声を大にして言わないよね。


 そんな感じで自室である。


 どうやら今日のやる事は本当に新生物との戦いで終わりなようで、休むようにと団長さんに言われたのである。

 ベットに横になり呟く。


「休むようにって言われたって…確かに、疲れたっちゃあ疲れたけど…昨日の『侵略』の新生物程じゃないしなぁ」


『じゃあ、街に行って買い物とかしないか? ほら、街には煌びやかな服とか美味しい食べ物とかあるんだろ? アタシ、ネグリと会うまでソロキャンプで何年も森に居たから久しぶりに都会の空気が吸いたいのよ…』


 完全に化けの皮が剥がれたのか、清楚の皮を脱ぎ捨てた先に、付与の魔剣さんはギャルの皮を被っていた。都会の空気が吸いたい…ニコチンでも漂っているのか。

 バチバチ金髪の魔剣さんである。甘いタバコを吸っている絵が直ぐに浮かんでくる…。



 最初に会った時は化粧をしてなかったのか、それともナチュラルメイクと言うやつなのか。手が加えられていない原石のような容姿だったが今は違う。持ち味を最大限活かすようにメイクが施され、もし、チェリーボーイが話しかけられでもしたら直ぐに脳汁が飛び出て死に至るだろう。死因は…何だろうね。


 そんなチェリーボーイ代表である僕であったが、ギリギリであるが理性を保つ事に成功している。その理由としては魔剣さんが小人のようなお人形サイズなのが関係している。流石にお人形に発情出来る程、僕は異質に育ってないからね…。



 風変わりした魔剣さんであるが、ソロキャンプをしている経験を持つ山の民である。ギャルがソロキャンで何年も山の民とは…まあ、山姥ギャルみたいな感じだろう。悪い子はイネガー。それなまはげだ。

 話的に僕が魔剣さんと契約するまで『侵略』が統治していた森に一人ぼっちだったみたいで、街の発展を知らない様子である。

 心持ちとしては田舎育ちのギャル化した幼馴染に再会し、都会で暮らしていると言ったら嬉々としてついて行こうとする感じである。あら、妙に具体的。


 …あれ? なんか、少し心に引っかかるような…。


 田舎育ち…? 何年も森に…? 『侵略』がいた森で…?


 まあ、気のせいだろう。

 残念なお知らせがあると魔剣さんに伝える。街は凄い発展した良い場所だけど…。


「生憎、ここは竜護舎で前線だからね…。戻ろうにも戻れないよ。勝手に戻ったら僕、今度は本当に国家反逆で指名手配されちゃうよ…」


 そう、ここは前線も前線。最前線なのである。

 微妙に緩い団長さんと、絶世の美女であるメイさん。人智外の生命体魔剣さん。と、何その恵まれた職場!? と、思ってしまうが絶賛新生物が襲ってくる前線である。一つ気を抜いたら無様に殺されて、墓を建てられても中に収めるものがない状態になってしまう。そんな危険な場所であるのだ。妙に気が抜けているけど。


 戻っても団長さんとか、メイさんに口封じの為に殺されちゃうよ…戻ろうにも戻る道知らないけど。帰る為に彷徨って、新生物に食べられて終わりそうである。

 まあ、でもそんな事は他の前線に立っている騎士たちには関係ない話であるのだ。前提として、竜護舎に居たはずの男が街に戻っている、との話は重大な規約違反であるのだ。僕規約知らされていないけど。


 そんな話を魔剣さんに伝えたのだが…


『なら今すぐにでも新生物狩りに行こうぜ!! ほら、早く立てって! アタシ達が頑張って前線を上げて、元凶である新生物の親玉倒せば解決なんだろ!?』


 裾を掴まれ、全力で引っ張られる。その小さい体にどうしてここまでの力が…と、拮抗しながら考える。確かに、そう言われたらそうなんだけど…。


「まあ…確かに僕達が戻れないのって戦わないといけない相手がいるのが原因だけど…そ、そんな直ぐに行動して変わるもんじゃないと思うけど…」


 そう、変わるもんじゃないと思う。一人のガキと魔剣さんが行動したところで世界は広いのだ。牛が1匹いてゲップしたらオゾン層が破壊されて紫外線で人間殺されるかって話である。


『だ! か! ら! 何も行動しないくせに一丁前に口を開くんじゃねえって! 取り敢えず行動して、それから考えようぜ? そこら辺の有象無象と違ってお前にはアタシがいるんだぜ。一騎当千、いや一騎当万だぜっ!!』


 うーん…。

 とても考える。


 確かに魔剣さんが胸を張って伝える内容はわかる。魔剣さんの『付与』を使っての戦闘は全能感を感じるものだったし、今まで戦ったどの新生物とも苦戦した事はない。

 …じゃあ、別に停滞する必要なくね?


「だよね!! って事で一番近場の新生物は…はどこか知らないけど…。でも、取り敢えず新生物がいるところに向かえば最終的には親玉の所に着くよなっ!!」


『そう言う話! 行動は早い方がいいよな! これで、アタシの都会デビューが…』


 ベットから起き上がり、出発しようと立ち上がると…扉の前には団長さんが居た。気配も、物音もしなかったのに…!? 魔剣さんだって気配を察知出来ずに驚いて…いや、引いている顔だ。

 どうして団長さんが僕の部屋に? と、聞く前に察知したのか団長さんが手で静止を示す。黙る。


「言いたい事はわかるが…その話は実現は出来ないだろう。新生物は君達が思っている以上に、この世界に根付いているからな」


「根付いている…?」


『新生物って植物だったのか?』


 多分それは無いと思う。


「植物か…まあ、植物と言われれば植物らしい要素はあるだろう」


 植物だったのか…。


「まあ、真相はワシには分からないけどな!!」


「さいですか…」


 笑いながら団長さんは近くにあった椅子に座り、話し出す。


「新生物なる侵略者が現れて既に100年も経っているのだ。例え力を持った人であろうと、その歴史までは変えられん。砂漠の砂をピンセットで移動させるようなものなのだ」


「そこまで途方もない…」


『でもそれは有象無象の話だろ? アタシはピンセットじゃなくてユンボだぜ?』


 ショベルカーって大衆向けの名称じゃなく、ユンボ(正式名)……。何年も森でソロキャンプって話は…?

 いや、ソロキャンプで世捨て人プレイでもユンボくらいは分かるか。現代でもエルフの森に重機で開拓をする人間の悪いニュースがあったくらいだ。何十年も前の話だけど…。遠い親戚であるが、その事実は真実である。そう考えるとユンボと僕って因縁があるのか…。


 団長さんも同じようにユンボで引っかかったのか引き攣った表情になる。が、直ぐに表情が戻る。


「まあ、君たちの力も十分に承知している。そもそも魔剣シリーズはそのどれもが強力な武器であるのだ」


『天使ね』


「…強力な元天使であるのだ」


 及第点なのか魔剣さんが黙る。そんなに天使要素が大事なのか…。鏡を見たら天使も驚いて悪魔になってしまいそうな感じだけどね。ビンタ一発で許してもらいました。僕の発言の自由は…?

 まあ、時々見えるパンチラでトントンであろう。…僕が幼児向けの人形に興味が出てくるのも時間の問題か。


「そんな感じであるのだ。強力でも、強大でもその身が一つな事には変わりはない。今の所の現状維持、拮抗した状態が最大限であるのだ。だから無闇矢鱈に前線に向かうなよ? そうしたら今度こそは張り付けの魔女裁判にかけないといかん…」


 …僕達良い子にしますんで、魔女狩りだけは…。

 魔女ってより魔剣使いだけどね。外見的には使ってるのは僕だけど、性格的には僕が使われそう。魔剣さんが剣の姿と、小人の姿しかとれないのが唯一の救いだよ…。そう考えたが…初対面の時の等身大は?


『それは実体を持たない仮想体だな。契約以外では意味が無いな…マジで。別に実体があっても悪さとかしないのにな、酷いわよな。悪虐非道よ』


 その言葉遣いが天使なのか…。

 印象的に天使と言う名の名称で、暴言を吐かれまくるSMプレイの店を想像してしまった。まあ、僕の知らない話である。死んだ時に観に行こうかな、とそんな心持ちで十分だろう。


 …老衰で死ねるよね、僕。


 将来は魔剣さんの手腕にかかっているだろう。不安だなぁ…。

 団長さんが「用事がある」とそう言って出て行ったので二人っきりの空間に戻ったのだ。これがメイさんとかだったら心躍る青春が待って…はいないだろうね。胸躍る原因が恋心じゃなくて綱渡りに変化しそう。

 多分ツッコミで肩を叩かれるだけで脱臼とかしそうである。そんなレベルで力の差があるのだ。…今の時代は女に守られる草食系男子も流行るよね?


『アタシとしてはみっともないって思うけどな。男は女を守ってなんぼだろ。まあ、アタシは守られるような柔な女じゃねえけどな!』


「でしょうね」


 ノータイムで返事をすると、ノータイムで怒り心頭な魔剣さんが目と鼻の先まで来た。ほぼ瞬間移動である。


『何だとこの野郎ッ!?』


「ひ、ヒェ…」


 正解は「それでも君は僕の後ろにいて欲しい。僕なりに守って上げたいし、守りたいから」である。そんなの言える相手じゃない。逆言われて腑に落ちる程である。

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