僕の君への想いを未来の僕の為に記憶のファイルに保管する。
20XXX年。
未来に残す大事な記憶を、銀行の金庫に保管する事が
出来るようになった。
どうしても、忘れたくない記憶や消せない記憶、思い出深い
記憶や資料として残しておきたい記憶まで保管される。
高齢化社会になり、お年寄りが多い中。
若い人まで、若年性認知症になり記憶が失われる世の中になった。
こういう事もあって、“大切な記憶を金庫で保管する”という事
ができるようになった。
【愛する家族や子供達、親しい人や愛する人達の為に記憶を残そう。】
そういったCMのキャッチコピーまでできたほど。
当たり前の事になりつつある、記憶の保存。
僕の名前は、『山口 佐久馬』25歳、会社員。
僕は、ごくごく普通の家庭に産まれて、それなりに幸せな生活を
送る事が出来たと思う。
サラリーマンの父親と専業主婦の母親、3つ下の妹の4人家族だ。
父親は、仕事が休みの時は、家族と一緒に何処かに遊びに行く事
を心掛けてくれていた。
母親は、料理上手で美味しい料理をいつも作ってくれた。
妹は、泣き虫で怖がりだったが、ある日。
外で、捨て猫を拾ってきた。
最初は、両親に反対されていたけど? “私が責任を持ってお世話を
する!”と言って、家で飼う事になる。
確かに! 妹は、拾ってきた猫を15年間も大事に育てお世話をしたのだ。
責任感のある妹を、僕は尊敬している。
・・・そんな僕も大人になり。
大好きな女性ができた! 優しくて可愛いらしいひとだ。
僕は、彼女と結婚したいといつの間にか思うようになった。
彼女となら、きっと幸せな生活を送れると思ったからだ!
でもある時、彼女が健康診断をして大きな病気が見つかる。
【末期がん】で、既に施しようがないという事だった。
既にあちこちに転移していて、もう治す事が出来ないと医者は
匙を投げた。
別の病院で診てもらうと? 抗がん剤の薬を飲むように勧められる。
彼女は、抗がん剤を飲む事を選択してくれた。
『・・・ご、めんね、こんな事になってしまって。』
『何を言ってるんだ! 病気が治ったら? また美味しいモノでも
ふたりで食べに行こうな!』
『・・・ううん。』
彼女は、ガンになり10キロ以上痩せてしまう。
体は、みるみるうちにやせ細ってしまい骨が浮き上がるほど。
抗がん剤のせいで、綺麗な長い黒髪も抜け落ちてしまった。
抗がん剤を飲んだ後は、声を出すのもやっとで。
辛くても、僕の前だとニコニコ笑顔でいる彼女を見ると僕の
胸は張り裂けそうになった。
何度も何度も、彼女の前で泣きそうになる僕。
それでも、僕は必死に彼女の前では泣かないと決めた!
彼女の方が辛いのに、僕が先に泣けないよ。
彼女は、僕との未来の為に必死で生きようと頑張ってくれた。
僕もできるだけ! 彼女の力になれる事は何でもした。
それでも、、、彼女は亡くなってしまった。
僕を、一人置いて、、、。
・・・僕は、この大切な記憶を忘れない為にも記憶を保管する
事を選んだんだ。
愛する彼女の為にも、僕の大事な記憶を色褪せたくない!
いつまでも、新鮮で昨日の事のように残していたいと。
彼女は、既に亡くなってしまったのだけど?
僕の記憶の中では、いつまでもキラキラと彼女は輝いている。
いつでも彼女の記憶を僕が感じたい時に見る事ができるんだ。
自由に僕は彼女との思い出に浸り、いつも僕の傍には彼女がいる。
永遠に、薄れる事のない僕と彼女との記憶の中で僕は生きているんだ。
最後までお読みいただきありがとうございます。