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8、初めての経験(レオ・カラーナイト視点)

お母様は言った。


「王族は全ての人間のトップに立つ存在。つまりは、誰にも弱みを見せてはならないのです」


「ククノア、それはあまりにもーー」


「あなたは黙っていてくださいっ!私はこの子のために言っているのです」


王よりトップの存在になっていますよお母様。


まー。冗談はさて置き…母が僕の為に言っている事は確かだ。


僕、レオ・カラーナイトはこの国の王太子だ。

その為母はより熱を入れて僕を育てた。


弟は一歳しか変わらないのに周りに溺愛されている。気楽そうでいいよね。

カイーザのように笑顔でいれば周りは認めてくれ、愛してくれるのだろうか?


僕はその日から、弟のように笑顔の仮面をつけた。

おっと失礼。

弟は仮面ではなく素直な嘘のない笑顔であり、自然に笑っているものだろう。


だが結果はどうだ。

その笑顔が本物であっても偽りのものであっても変わらない。

笑顔は周りを味方にできる手段だ。


王太子とは周りに悪く言われる事もあるが僕が笑顔でいると、「なんと寛容な!」など褒め称えられらようになった。

まぁ、王族というだけあって顔は整っているから尚更笑顔の効力は抜群だ。




また女の子相手にも笑顔は有効だ。

今日は僕達王子のお披露目会だ。


笑顔を張り付けて、

「綺麗な髪だね、この色はきっと君のためにあるんだろうね」

など甘い言葉を付けるだけで目の前の女の子は熱を上げ「へ?あ、あの…ありがとうございます」と瞳をうるわせる。


女の子ってなんかみんな同じだよなー。

まともに会話できる奴はいないのか。


僕達はある程度の挨拶を終えた所で一度人混みから抜け一息つく為にお菓子に置いてあるテーブルにむかった。


ーーーー?

あんなところにテーブル席があったのか。

チラリと目線をやった先には人混みから離れたテーブル席に2人の…。いや、双子か。双子の女の子が座っていた。


しかも、その2人を遠巻きで見つめる男達が大勢いる。

話しかけたくても話しかけられないのだろう。

なんせ1人でも眼福になる少女が2人もいるものだからね。


あの2人の双子の空間だけまるで異質だからな。

恐ろしく美人な双子のうち1人はモグモグと笑顔でお菓子を食べ、もう1人は無表情で紅茶を飲んでいるようだ。

それは一枚の絵として完成されているかのような美しさだった。


へぇ、おもしろいね。

他の令嬢達は僕達はのところへ自ら進んで挨拶に来たっていうのに、彼女達は僕達には全く興味が無いんだろう。


僕は足は進め、彼女達に近づいて声をかけた。



…………。


嘘だろ気づかないのか!?

この僕が自ら来てあげたというのにっ。


少しすると無表情だった方の子の目が僅かに見開いた。僕に気づいたみたいだ。

すると女の子は、もう1人にすぐ顔を向けジッと見つめ出した。


その視線に全く気づかないのかひたすらお菓子を食べる女の子。


とたんテーブルが少し揺れた。


ぷっ。

うそだろ。

足を踏みつけたのか?こんな大人しい見た目をして意外と思い切ったことをするなこの子は。


その女の子は、バレてないと思って安心したのか少し息をついた。…可愛いと不覚にも思ってしまった。


気付かせたいのなら普通に声をかければ良いのではないのか?

そんなことを思っているうちに、お菓子を食べてた方の子がスクッと立ち上がる。


とたん。とても優雅な淑女の礼をとり、完璧な挨拶をした。

そのランディア嬢という名の女の子はさっきとは別人のような変わりようだった。


そして気になる横の女の子に目をやると、そのリンディア嬢という女の子は姉に続けて静かに礼をとった。


…照れているのか?

照れて声が出ないとかなのか?


ふむ。

そう思い、僕はいつものように笑顔を張り付け、彼女のことを褒めてみた。

そうすることで僕と話すきっかけになるだろ?


すると、彼女は一瞬眉を下げた。


っっ!

意味がわからない。


リンディア嬢は決して照れたのではない。

こんな表情を向けられたのは初めてだ。


そう、彼女は僕に同情したんだ。


全てを手にしている、王太子であるこの僕に向かって、だ。

…普通他人から同情されたりするのは、気持ち良いものではない。なぜなら同情とは、相手を下に見ているからこそ生まれるものなはずだからだ。


だが、僕はこの時不思議とそんなに嫌じゃなかった。ただただ気になった。

なぜ彼女がそんな顔を僕に向けたのかを。


そして一言も発することなく僕の目から去ってしまった。

ランディア嬢は僕にお礼の言葉を述べると共に、リンディア嬢が調子が悪いから帰ると言って去っていった。

あまりにも急な切り口で止める間も無く、僕達はその場に取り残された。


ーーーーモヤモヤが残る。

彼女を、リンディア嬢の声が聞いてみたい。

彼女は一体どんな声で話し、どのように笑うのだろうか。

そして、なぜ僕にあんな顔を向けたのかを知りたい。


あぁ、ブルーノ家に手紙を書かなければ。

なぜって?

ふっ、お茶会でも開こうかなってね。

僕と彼女とでゆっくり話し合えるように。

お読みいただきありがとうございます。


ぜひ、ブックマーク・評価よろしくお願いします。

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