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18.誕生日プレゼント

あれから5年が経ち、後1週間後に私たちランとリンの10歳を迎える誕生日がきます。


今年もそろそろ両親が聞きに来るころだ。




「ラン、リン。今年の誕生日は何が欲しいんだい?」


お父様は、食べている手を止めて私たちに微笑んだ。


「私は家族で海に行きたいですっ!私は5年前行ったけど、やっぱり海は家族でしょっ!」


ラン…あんた私がだいぶ前に、家族で出かけてみたいって言ったの覚えてたのね。

いい奴かよ。

純粋にキュンときたーーーっ。


ありがと。


(あれちょーー楽しかったんだよね〜。次こそ貝殻もっといっぱい拾ってこなくちゃねっ!むふーっ)


…。

私のためだよ、ね?


え、もしかして…あれかな。

海から帰った際にハマってた、石で貝殻すり潰す遊びのことなのか?


その遊びが久々にしたくなっただけなのかもしれないなコイツ。

私のキュンを返せこの野郎。



リンディアはこの時、ランと念力で話していたのでお父様とお母様がニヤリと口角を上げたのに気づかなかったのである。


「まぁ!ランは相変わらずリンが大好きなのね。自分が経験したのをリンにも味わって欲しいのね」


なんだ、いつもに増してお母様はうんうんと嬉しそうにしている。


妹思いだと思って感激…しているのか?

違うと思いますよーー。

自分が遊びたいだけですよー。


リンディアは冷めた目でランディアを見つめながら、黙々とフレンチトーストを口に運ぶ。


「そうか…では、頑張って王様から1日だけでもお休みをぶんどってくるとするかっ。それでリンはどーだい?何が欲しいんだい?」


なんか例年に比べてお父様が笑顔は気のせいか?

笑顔っていうよりかはニヤニヤだなこれ。


てかぶんどるて、言い方よ。

まぁお父様はこの国の宰相をしているからすこぶる忙しいんだろうけどさ。


おっと、答えないとだな!

私に話が張られていた。

ま、毎年同じ答えだけどねー。


「あの、私は特に…」


「リーン」


お母様の笑顔が怖い…のもいつものこと。

予想範囲内だ。


そしてこの後も決まって毎年のやりとりだ。


「では、ランと同じものを…お願いします」


「ん?私は今年物じゃないよ?」


…。

そういえばそうだ。


途端に、両親が待ってましたかのように気味悪く笑い出す。


なに、なにが始まるのだ。


「ふふふっ、そうねぇ。毎年ランと同じものをって言ってたから…まぁ、それでもいいかとしぶしぶ同じ物を用意してましたけど。今年はそうはいかないわよ?」


お母様は何やら楽しそうだ。


「そうだね。残念ながら今年のランがねだったのは私の休暇だ。そしてリンが同じものをねだるとなるとお父様的にはとても嬉しいが、この国の有能な宰相が2日も休むとなると王様が困ってしまうね」


自分で有能なて言ってるよ。

自信家なのはお父様に似たのねラン。


っってそこじゃないな!


やばい。

欲しいもの特に無いんだよな。


そうだなのだ。

私は物欲がそもそもない。


「あの、でも。本当に欲しいものなんて…特に無いのです。私はお父様とお母様が愛してくれて優しくしてくれるのでもう十分幸せなのです」


私は本当に思っていることを伝えてみた。


「リンディア。君がそう思ってくれてるのはとても嬉しい。けれどね、親が子を愛し大切にするのは当たり前なんだ。だから君にはもう少し欲を持ってもらいたいんだ」


お父様はとても優しい口調で穏やかに答えた。


でもね、お父様。

当たり前なんかじゃ無いんです。


私にはこの普通に愛されるということが、どれだけありがたいことか。

私をみて私を愛してくれることが本当に嬉しいのですよ。


リンディアは手を止めて俯く。


するとお母様は、私の横まで来て私は抱きしめてくれた。


「リン、お父様もお母様も別に怒っては無いのよ?むしろリンがそう思っていたことを口に出してくれたのがすごく嬉しいわ。だからこそ、もっと甘えて欲しいの。もっともっとリンを可愛がらせてちょうだい?」


お願いされてしまったよ。

ここまで言われたら、さすがに考えるしか無いよ。


欲しいもの。

…ランみたいに物じゃなくてもいい、か。

うむむむむむむ。


「んんぅっ!このフレンチトースト蜂蜜かけるとさらに美味しいっ」


呑気かよ。


ランディアは嬉しそうにパクパク食べている。


っ!

そうか。

前世から1つだけ私憧れてたことがあった。

ま、ランのおかげで半分叶ってるようなもんだけど。

ここが乙女ゲームの世界であり、貴族だからこそ叶えてくれそうなことっ!


「あ、あのっ!きょ、兄妹…。兄妹が欲しいです」


「私がいるじゃんっっ⁉︎⁈」


ランディアがフォークとナイフを置きガタンと立ち上がる。


お父様とお母様はポカーンとしている。


しまった。

確かに今のは言い方が悪かったな。


「えと、ラン違うの。つまりー、えと。下!弟や妹に何か教えたり、遊んだりするのに憧れてるっていうことよっ。…なんて、やっぱり無茶ですかね?」


リンディアはいつもより声を張り上げてあわあわと弁解したかと思うとしゅんと、下を向いた。


「無茶じゃないよ。けど、なるほど…そうかい。実にタイミングがいいね。ちょうど君たちの1つ下の男の子を向かい入れようか迷っていたところなんだ。リンが望んでいるのなら、是非とも彼を迎えることにしようっ」


お父様はうんうんと機嫌が良さそうだ。


「まぁ、そうなのですね!よかったわねリン」


おおおおぉーーー。

すげぇ。

さすが貴族かよ。

瞬殺で異例なプレゼントゲットしちゃったよ。


っていうよりも、元々お父様が悩んでいたところを後押ししただけのような気もするけどね。


にしても弟か〜。

楽しみ。


(なによもうっ、私がいれば十分じゃないっっ)


リンディアは、横でぷくーっと頬を膨らますランディアにはちっとも気付かないのであった。

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