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16、ランディア不在のほのぼの日常

いつものように図書室の隅に座り込んで本を読んでいると急に影が入り込んだ。


ふと目線を上げると、お母様が立っていた。


「リーン、どうして床で読んでいるの?椅子に座って読んだらどう?」


「いえ、あそこだとランに見つかってしまうので」


そう言ってリンディアはうつむき、少し眉をハの字にした。


…。

お母様?


お母様の上品な笑い声が漏れている。

何んだ?とリンディアはもう一度顔を上げてみた。


「うふふっ。あらあら、ランは今日王子様達と海に遊びにーー…んんっ。いえ、視察に同行させていただいてるわよ。だからランは今いないわ」


そういえばそうだった。

どうりで朝から静かだと思った。


ランがいないのであれば何も隠れるようにしてこんな隅に座って読まずとも良いのだ。


あれ?

ていうか今遊びにって言っちゃってましたよねお母様。


「そう、でしたね」


なんか毎日ランから逃げ回り、いかに静かに本を読むかを考えながら生きてきたからなぁ。

へんな感じ、物足りないっていうか。

あるべきものがないっていうか…。


私は読んでいた本をパタリと閉じた。


「あら、もういいの?」


「はい」


「それなら、お母様とお茶しない?」


そういうが早く、お母様は私を抱っこした。


うん。拒否権はないみたいね。

別に断るつもりもなかったけど。


でもラン抜きで過ごすのは何気に初めてで少し戸惑ってしまう。

なぜなら、いつもランが私の気持ちも伝えてくれたりするから基本黙っててもいい。


けど今日はそうは行かないわね。

ふむ、どう乗りきろうか。


ピタリとお母様の足が止まる。


私はもんもん考え事をしているうちにお母様の部屋に着いたみたいだ。


「何か、食べたいお菓子とかはあるかしら?」


「うへぇ?…あ、いえ特に。なんでも…」


どどどどどうしようっ。

分かんないよっ。へんな声出たって!


前は王子からの手紙をいかに回避するかで必死だったからちゃんと話せたけど…いざお母様と2人となると何を話せばいいのだっ!


「そう?」


お母様は優しく微笑むと後ろに控えているメイドに話しかけた。


「ねぇ、あなた達。リンがいつも良く食べているお菓子を用意してもらえないかしら」


すると、オレンジがかった茶色の髪をした綺麗な若いメイドが目を輝かせながら「あのっ!」と声をあげた。


「それでは、紅茶の茶葉を使用したクッキーはいかがでしょう?リンディアお嬢様はよくダージリンティーを飲まれていらっしゃいます。そしてっ!ちょうど先日、町で見つけて購入してみたのですっ!」


「紅茶のクッキー…」


美味しそう。

ていうかよく見てるな〜私なんかを。


「ふふ、では決まりね。お願いするわね」


お母様は私の頭を撫でながらなんだか嬉しそうにしている。

そして、そのままソファに腰を下ろした。


…。

えーーっと?


「お母様?私1人で座れます…よ?」


「だーーめっ」


だーーめっ…かぁ。

いい笑顔だなぁ。


私とお母様が座るやテーブルの上にお茶の準備が進んでいく。


「リンディアお嬢様、こちらが紅茶の茶葉を使用したクッキーでございます。どうぞ」


先程のメイドがわざわざ膝をつきしゃがんだと思うと、私にクッキーを一枚手渡してくれた。


「あり、がとうございます」


はむっ。

もぐもぐもぐーーーっごくん。


「っっっ!口の中が紅茶!クッキーなのに紅茶の味がします…おいしぃ」


何これ!

クッキーの食感なのに口の中に紅茶の味が染み渡る感じっ。


「それはようございましたっ」


そのメイドは嬉しそうに微笑んでくれた。


あ、やば。

無我夢中で食べてたよっっ。


リンディアが両手で頬に添えてクシャッと幸せそうに食べているのを周りも幸せそうに眺めていたことにリンディアは気づいていない。

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