13、自由と愛
あれからランは何度も王宮に行って王子とお茶をしているみたいだ。
私はって?
行くわけがない。
今日も元気に仮病を使いお誘いを断ってベットの中にいる。
何故かって?
それは自分から悪役令嬢になるためのステップなんて踏みたくないから…めんどくさそうなことは関わらないのが一番よ。
ランはなんだかんだ言って、自分はストーリーとやらに関係ないと思うからこその行動だと思う。
私は…。
私はもう嫌なのよっ!
決まったレールの上を、笑顔を貼り付けて歩くだけの人生なんて。
まだ自分の好き嫌いや、はっきりしたやりたいこととかもわからないけど…それでも私はこのランが与えてくれた人生を自分なりに自分のペースで歩んでいきたい。
自分の意思を、自分の意見を口にできるようになりたいの。
もう諦めたくない。
幸いにも、今世のお父様とお母様にはすごく恵まれている。
だからこそこういう風に思えたんだと思う。
お2人とも本当にありがとうございます。
…あとランも一応ありがとうね。
まだ上手く甘えたりとかできないけど、それでもちゃんと“私”自身を見てくれる。
前世の母のように私ごしに父を見たりなんかしないし、父の代わりにしない。
誰かの代わりじゃなくて、私を見て愛してくれる喜びを知ったの。
やっと…やっと、私の人生を手に入れたのよ。
それなのに王子と仲良くなって、それを周りが勘違いして婚約話を進めたらと考えたら恐ろしいにも程がある。
王族になんてなりたくない。
私は自由なの。
コンコンーーーーー
ゆっくりと部屋の扉が開かれたと思うと、お母様がぴょこっと顔を覗かせた。
「リン、1人で心ぼそくはない?お腹はまだ痛いのかしら。その、何かあったら遠慮なくお母様様にっ」
お母様はあわあわと、それでもすごく私を心配してくれているのがわかる。
お母様はとても優しい。
こうやって様子を見にきていただけるだけで私は十分なのですよ。
愛されてるって実感できるから。
こんな素敵なお母様に仮病を使うのは、正直毎回とでも心が痛む。
私は謝罪も込めてお礼を伝える。
「…お母様、ありがとうございます」
リンディアはへにゃりと眉を下げ申し訳なさそうに少し微笑んだ。
とたん、お母様含め後ろに控えていたメイド達が何やらざわつく。
「……っ!!うちの子は天使なの!?天使なのかしらっっ」
「奥様、私にもリンディアお嬢様の背景に今翼が見えました」
「そ、そうよね!最近リンの表情が豊かになったおかげかよく私にも翼が見えるの」
…お母様、私残念ながら空は飛べないの。
前世の母とは違い、お母様の望みは何だって答えたいって自ら思える。
でも、流石に翼は無理ね。
リンディアは目をパチパチと瞬いた後、くるっと体の向きを変え布団を深く被った。




