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異世界に咲く青い薔薇  作者: 走れロマン
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1.プロローグ

 ここには何もない。


 人がいなければ、太陽だってない。

 あらゆる万物。あらゆる概念というモノがこの世界には欠落している。

 あるのは僕という存在だけ。

 直観がそう言っている。


 僕には記憶がある。

 意味記憶という奴だ。

 言葉の意味、一般常識。知識などの情報を、記憶として保存する機能のこと。

 この記憶があるから僕は思考することができるし、言葉だってわかる。


 ただその対となる自伝的記憶というモノがない。

 自分という存在がどんな人物で、どんな生活を送っていたのか。

 なぜこんなところにいるのか。その記憶が欠落している。

 ただ全てが欠落してる訳じゃないけど。

 名前、それだけは記憶にあるから。


 自嘲の笑みを溢す。


 これではまるで悲劇のヒロインだ。

 まぁ男なんだけどね。


 もちろん概念が存在しないこの世界には、時間というモノがない。

 時間とは出来事や変化を認識するための基本的概念だ。

 その時間がなければ何も認識できない、

 出来事を起こすことが出来ないということになる。

 そうなってくると必然的に、身体を動かすことも

 言葉を発することもできない。


 ただ不思議なことにこれは体外においてのことだった。

 体内に宿る意識には時間が流れていた。


 だからやることは決まってくる。

 意識を覚醒させ、自分の中に眠る知識に没頭する。

 時にはあるはずのない冒険譚を想像し夢に馳せる。

 それだけだ。


 そんな日々を過ごしていくうちに、

 知識という情報の渦から魔法というモノを識る。

 

 人は必ず魔力を持って生まれてくるらしい。

 その魔力を対価とし発せられる現象を魔法という。


 今まで感じたことのない感情が宿る。

 流れることのない血液が熱くなり、気分が昂る。

 心の中でだがニヤリとしたのがわかる。


 だって魔法を扱えるようになれば、この世界から出られるかもしれない。

 そんな希望を抱きながら、ただひたすらに魔法の研鑽をした。


 それから長年の月日が経った。


 研鑽を続けて分かったことがある。

 この世界でも魔法が使えるということだ。

 問題なく魔法を発することができた。


 魔法を発する場合には魔力を対価にする。

 対価にするにも手順があり、魔力を体内から外に出してやらないといけない。

 その魔力を外に出すために必要となるのが魔力操作と魔力回路というものだ。

 簡単に言えば、魔力が水。

 魔力操作が水を強めたり弱めたるすることのできる蛇口で、

 魔力回路が水を通すホースだ。


 この3つの要素をうまく使いこなして初めて魔法が成り立つ。

 特に魔力操作と魔力回路は非常に大切だ。

 さっきみたいに魔力を水、魔力操作を蛇口、魔力回路をホースに例える。

 

 蛇口を捻り過ぎるとホースは暴れ、水は四方八方に撒き散らされる。

 この蛇口を自分の意思でコントロール出来れば、

 ホースが暴れることなくスムーズに水を出すことができる。


 それに加えてホースの大きさを自由に変えることができれば、

 たとえ蛇口を捻りすぎたとしても、

 ホースを大きくすることでスムーズに水を出すことができる。

 さらに、上手く小さなホースに変えれることができれば、より強く出すことができる。

 魔法も同じ原理だ。

 

 ただこのやり方だとこの世界からは出ることが出来ない。

 どんなに魔力操作、魔力回路の操作に卓越していようとも

 限界というモノがある。

 

 僕だけの力では、この世界から出るほどの大魔法を扱うことが出来ない。

 あくまでこれは僕自身の力の話だ。


 魔法は魔力を対価にして初めて使える。

 ならその対価はどこに払われているのか。

 答えは簡単だった。

 試行錯誤で魔法を使っていくうちに、

 あるモノを感じるようになった。

 そう、魔力だ。

 この世界には新しい概念が新たに生まれていた。

 これこそが答え。

 対価は世界に払われいた。

 あとはこの世界に満ちた魔力を使えばいいだけの話だ。

 

 いつものように魔法を行使する準備に入る。


 人は身体と魂によって出来ている。

 ただこの世界では身体を動かすことが出来ない。

 けど意識自体には時間という概念があった。

 ならいっそ、その意識を外に出してやればいい。


 動かない身体から魔力が溢れる。

 溢れた魔力が一箇所に集まり精神体を造り上げる。

 

 「よし準備完了っと」


 視界には白が無限に広がる世界がある。

 自分が立っているのか横になっているのかさえ

 分からないほどの白を内包する世界が。


 空っぽになった身体の方を見る。

 綺麗な黒髪にきのこみたいな髪型。

 見た感じまだ十歳そこらの少年で何故か全裸。

 それが僕。

 ノアという人物の外見だ。


 初めて見るわけじゃないが少し笑ってしまう。

 少し伸びをした後に、自分を背後に回し右手を高らかに上げる。


 この方法を思いついた時、すぐ行動に移すことが出来なかった。

 成功する確率が低いから。

 方法は自分の意識が入った精神体を、

 魔力回路に置き換えて世界の魔力を使う。

 精神体が死ねば、僕という意識が消えると同意。

 その精神体を魔力回路にする、それがどんだけ危険なことか。

 それでもこれしか方法はない。


 それに今は、直観が成功すると告げている。

 必ず成功する。

 

 精神体を世界の魔力回路に造り替え、

 世界に溢れる魔力を取り込む。

 

 身体中に痛みが走る。

 あるはずのない骨が軋み血が溢れる。

 臓物が暴れ回り体温が低下する。


 あるはずのない事実。

 これは精神が悲鳴を上げてそう錯覚させているだけだ。


 気にせず魔力を集める。

 

 そして満ちる。

 

 全てを出し切るように声を荒げる。

 高らかにあげた手と共に全身全霊で魔力を振り下ろす。


「おおおおおお、砕けろぉぉぉぉぉぉーー!!」


 遍く光の輝きが天から降り注ぐ。


 この魔法は万象であれば全てを燃やし尽くす。

 神ですら扱うことのできない魔法。

 

 起源魔法【アマテラス】


 彼はこの魔法が何かわからない。

 ただ、死力を尽くした結果起源魔法の行使に成功した。


 それは世界法則を燃やし、概念を燃やし世界すらも燃やし尽くした。

 

 光が収まると、この白い世界に黒い線が描かれていた。

 線は徐々に広がり、卵のからが割れるように世界が割れる。


 薄れる意識の中、身体の中に戻り割れた世界の向こう側を見る。


 世界が崩壊する中思う。

 正直世界を壊しさえすれば自由になれると思っていたが間違いだった。

 大事なのは壊した後どうするかだった。

 このままこの世界とともに朽ちるのか。

 そんなの嫌だ。

 僕は…僕は。

 

 「自由が……欲しい」


 頬に一筋の涙を募らせながら意識がプツリと途絶えた。

 

 





 その後崩壊する世界に慈愛に満ちた声が響く。

 

 「その願い聞き届けた」

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