ショートコメディ『意志くん』
意志が弱いから、継続できないと言う人はいるし、あの人は意志が強いからできるんだ、と言う人もいた。彼は、意志が強いのか。それとも、意志が弱いのか。まず、それを確かめてから、本題に入ろうと思う。まずは前書きだ。
「おはよう!! 今日もいい小春日和だね!!」
「そうだね。今日もいい小春日和だね」
うん。わからない。彼は意志が強いのか、それとも、意志が弱いのだろうか。意志とはなんだろう。調べてみた。ふむふむ。『物事を成し遂げようとする積極的な心ざし』か。意志が強ければ、物事を成し遂げようとする積極的な心ざしがある、というころになるらしい。
例えば、彼は朝起きて、学校に行かないと行けない。どうしても寝たい。もっと、寝ていたい。そういう意志の強さはあるのだろうか。いや、ないだろう。だって彼は今日も、私より早く学校に登校済みだった。教室に来ていた。詰まる所、彼は意志が弱い。
「意志くん!! 君って、意志が弱いね!!」
なんの脈絡もなく、言ってみた。すると、彼は怪訝な表情をするだけだった。またこいつ、言ってるよみたいな表情だ。どういう表情だよ!!
「意志くん!! 君は、今日も学校に来てしまったね!! 朝起きて、ベットから寝ぼけ眼で、今日も学校行くのか嫌だなあ、行きたくないなあ、という意志から、君は負けんだ!! 詰まり、どういうことかわかるかい? 君は、自分の意志に!! 負けたんだよ!! 意志が弱いからね!!」
「……」
彼は、いまどういった表情をしているのだろう。図星すぎて、恥ずかしくなっちゃったかな?? まあ、気に病むことはないよ。君は今日もよく頑張った。今日も、自分の意志に負けて、学校に来てしまったけど、よく頑張ったよ。意志が弱いから、学校に来てしまったけどね!!
「……」
彼はいま、どんな顔をしているのだろう。屈辱だろうか。まあ、その気持ちも、わからないではない。学校に行きたくない気持ちは、私だってあるのだから。でも来てしまった。私達は、運命に抗えない、同類だ。学校に来ないという選択肢は、なかった。最初から、その権利を有してなかったのだ。
「ねえ、意志くん。もし君に強い意志があるのなら。明日から、同じ穴の狢にならないか? 学校を休んで、一緒にどっか逃亡、ならぬ駆け落ちをしよう。この黒髪乙女の美少女と共に、社会のレールから脱線しよう。この狂った世界からの脱却だ」
「……」
おい、なんか言えよ。これが本題だぞ。