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獣道  作者: 黒宮 鋼
1/1

序章=贄

こういうニュアンスを表現するの難しいですね

火が燃え広がっている


人間が泣きわめている


木が枯れていく





「いたぞ!撃てぇえええええ!」


「森を焼けぇえええ!」


「木を切れ!奴らを隠れさせるな!」





...






獣と人間は昔から仲が悪く、

人間の王が変わるたびに人間は森を攻め、獣と戦争を繰り返してた


だがある時、前の時代の人間の王は獣の王と平和条約を結んだ


「平和の証として、三人の赤子の贄を送ります」


結果的に長い平和の時代をもたらすことができた

その時代の王は英雄と称えられた





10年後


「ねーおねーちゃん、どうしてあっちの山に入ってはいけないの?

 山やむこうの森の獣がいればわたしたちはたくさんのおにくが食べられれるのに

 森のむこうの海にいけばたくさんの塩があっておいしいものがたくさん食べられるのに!」


町を行く幼い少女が純粋な目で尋ねる


「またお前は...海なんてあるわけないわ、

変な本ばっかり読むんじゃありません!」


幼い少女と手をつなぐ年ごろの娘は少女を叱る


「ほんとだよ!もしあの山や森越えたら本当に海があるんだから!」


少女は目を爛々と輝かせて言う


「はぁ...まったく、困った子だよ...

 いいかい!?あの山には絶対に入っちゃいけないんだ!偉い人がそう決めたのさ!」


娘はさらに声を張る


少女はぷくーっと頬を膨らませ


「なんで!どうしてむこうへいっちゃいけないの!」


娘ははぁ~とため息をつき、思いついたように


「それはね、山やむこうの森の獣は人間を食べてしまうからだよ」


いじわるっぽく言う


「こわーい!それじゃあわたしたちが毎日おいしくないパンや

 味のうすいスープしか食べられないのはそのせいなのね!」


と、顔を青くした少女が娘の片腕にかかったかごに入ったパンを指さして


「にんげんを食べる獣なんていなくなればいいのに!」


と続ける


娘は哀しげな眼でと少女を憐れむ


「そうだねぇ...」


しかし、少女を悲しませまいと笑顔を見せ、


「さぁ!早く帰ってお昼ご飯にしよう!今日はお前の好きなキノコのスープだよ!」


と少女の腕を引く


「わーい!」


少女と娘の愛らしい声が町中に飲まれていく


「...これだから人間は...」

木影で青い目が光る




...




...




ガチャ


キィ...パタン


「ただいま帰りました」


銀髪の娘は静かに戸を閉める


「お帰り、白香」


黒髪の娘がにこやかに出迎える


白香と呼ばれた娘は土の中の部屋を見回して


「...姉さんだけ?連は?」


そう言いながら鮮やかな服を脱ぎ捨てて灰色の毛皮を羽織る


「お使いを頼んだんだ。多分もうすぐ帰ってくるはずだよ」


「...そっか」


バタン!

大きな音を立てて戸が閉まる


「ただいま!」


茶色の毛皮を羽織った金髪の娘が元気に帰ってくる


「お帰り、連」


黒髪の娘は同様に、その娘をにこやかに出迎える


白香は、連と呼ばれた娘を


「連、どうしてお前は戸も静かに閉められないんだ

 また壊れたらどうする」


と、静かににらみつける


連はむっとして


「悪かったよ、次は気を付ける!」


と言う

そしてボソッと小声で


「壊れたって直せばいいだけじゃん...」


とばつが悪そうにつぶやく


白香は目を光らせ


「そういう問題じゃないだろう」


聞き洩らしちゃいないぞと牽制する


「んの...地獄耳!」


と連が喚く


白香は「あ゛ぁ!?」と反撃


それを見ていた黒髪の娘は


「お前ら、みっともないぞ!」


と二人を叱る


二人はびくっとして


「すみません」「ごめん百合ねぇ」


と同時に謝る


百合と呼ばれた娘は続けて


「じゃあ二人とも報告をしてくれ。まず白香から頼む」


三人は円になって座る


「はい、まず都へ行きましたが兵は動いていません

 しばらくは私たちが動く必要もないかと。


 次に工場地帯を見てきましたが悪臭を放つ煙と汚染された水が流れ出ていました。

 風下にあった木はほとんど枯れ、周辺の川はほとんど汚染されています

 川魚の死体が多く浮いていました


 それから、町の人間どもは食糧不足に悩んでいるようでした」


土の中の部屋が静まり返る


百合は思い詰めたような顔で言った


「はぁ...このままでは我々の住まう場所がどんどん減っていく

 どうしたものか...次、連、頼む」


「うん、山は死体がいっぱいあって腐臭がした

 ちっちゃいみんなは困ってたけど

 山犬の一族や熊のみんなや王様はみんな何もしなくていいって言ってた」


「そうか、王も...ならば仕方ないな」

百合がつぶやくと


連はふと疑問を口にする

「どうして大きいみんなは人間を襲わないんだ?

 みんながいれば人を滅ぼせるのに、

 人を滅ぼせば我ら獣はずっと平和に生きることができるのに」


二人の顔が曇る


白香がゆっくりと口を開く

「...古参の方々は戦に行ったことがあるだろう

 戦中は山や森が荒れに荒れたそうだ


 その状態よりも今の豊かな自然を保つほうが大事だとお考えなのだ」


連は喚く

「どうしてだ!?今すでに木は枯れ始めている!

 毎年気温が上がり続けている!

 今の人間のせいで死んだ奴らだっている!

 それのどこが平和だというんだ!

 なぜ武器を取らない!

 人間さえいなければ!」


「連!!!」


百合が声を張り上げる


「王がそうお考えなのだ...我らも従うしかあるまい

 王に受けた恩を忘れたのか...?」


「ご...ごめんなさい...」

連は顔を青くして謝る


「...怒鳴って悪かった、他に何かあるか?」


放心している連の背中を白香が軽くたたく

「あ...うん

 えっと...王様が呼んでる」


ピリッとした空気が張り詰める


「わかった。すぐに向かおう。」


百合と白香は立ち上がり、

重そうな獣の頭と毛皮に装飾を施したものを被る


そして、それぞれ三匹の大きなオオカミの背中に乗り、森の中を駆けていく



ありがとうございました

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