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98.水都アグワとおのろけアスティン

 僕とハヴェル、レナータは水都アグワに入っていた。本来は魔法に関わる王国の人間しか入れないらしいけど、ハヴェルは彼女の口づけを受けていたし僕は知らずの内に、ラルディ王女から認められていた証のようなものがあったらしく、すんなりと水都へ入ることが出来た。


「良かったな、アスティン! まぁ、俺もだけどよ。マジェンサーヌ王国だけじゃなくて色んな国に入りまくりだぜ。そんな国の中でも、水都だけは港町の目と鼻の先にあったからアスティンも入れたわけだ。幸運だったな」


「う、うん。で、でも、あの子たちが心配でしょうがないよ。女の子二人だけ置いてけぼりは可哀相だったかな。せっかく護衛で一緒に来たのに残念だよね」


「お前、それは仕方ねえだろ。それに女の子って……あいつらは見習い騎士だぜ? 見習いだろうが騎士には違いないんだからな。お前も副団長なら、部下を信じてみろや」


「そ、そうだね。分かったよハヴェル。じゃあ、今は楽しむよ」


「おう! それでこそ若者ってもんだ。よし、レニィが待ってる場所に行くぜ。俺にしっかり付いて来いよ」


「そうだね。ハヴェルに任せるよ」


 過保護と呼ばれていても、僕は僕の部下たちが心配でならなかった。だけど今はハヴェルの言う通り、来られることの無い水都を楽しむことにした。


「いやーしかし、水都っつっても見た感じはジュルツと変わらねえよな?」


「そ、そんなことないよ。街中の至る所に噴水があるし、目に映る所全てが水だらけだよ。ハヴェルはこの街でレナータと暮らすってこと?」


「おう、そうなるな! だけど住居は今建築中らしいからな。しばらくは都巡りを楽しもうと思ってる。ま、まぁ、その前に俺とレニィとでジュルツの王女さんに話をして説得しなきゃならねえが……」


「あ、ルフィーナのことだよね。それならたぶん大丈夫なんじゃないかなぁ……ルフィーナは何だかんだでハヴェルを気に入ってたし、初めて出会うレナータにも王女らしい対応をしてくれるはずだよ」


「王女さんは俺のヒゲのことに興味持ってたからな。お前が帰ってきたばかりの時も、彼女は騎士宿舎に忍び込んだ時もあったしな。はははっ! あんないたずら好きな王女さんはジュルツにしか、いや、どこの世界に行ってもいないかもしれねえな。だからこそお前も夢中になったんだろ? な?」


「う、うん……ルフィーナは出会った時から可愛くて。今もずっとあの頃のまま……ううん、出会うたびに美しくて気高くて、僕の大事な奥さんなんだよ」


 これから新婚になろうとしているハヴェルに対して、僕はついついルフィーナのことをずっと話し続けてしまった。シャンティと一緒にいた時のことを考えると、いつも心の中で「ごめん」って言ってるけど、ルフィーナも「お互いさまだわ」なんてことを目で伝えてくれる。


 そんなことまで思い出してしまうくらい、ここにきて彼女のことが愛おしくてたまらなくなっている。王国の問題も解決したし、ハヴェルとレナータをこのまま護衛して、後は約束のミストゥーニに行くだけだ。もうすぐ彼女に会える。これが居ても立っても居られないってことなんだ。


「アスティンは変わらねえな。俺が目の前にいるのに、寝ても覚めても王女さんのことばかりか。俺とレニィ以上に、お前は王女さんのおのろけ話ばかりしているんだもんな。すぐにミストゥーニに行きたかった所をすまねえな」


「あ……ご、ごめん。でもミストゥーニに行ってもまだ彼女は来ていないんだし、それは気にしなくていいよ。と、とにかくレナータが待ってるし急ごうよ」


「お、おう」


 街の光景と雰囲気、そして目には見えない水で出来た魔法壁。僕は兄騎士ハヴェルとハヴェルを愛する王国のレナータとで、滅多に訪れることの出来ない水都の観光を楽しんだ。ルフィーナ……もうすぐキミに逢えるんだ。僕はずっとキミを想っているよ。

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