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88.アスティンと見習い騎士たち


「アスくん、あの娘たちを連れて行くのね? 間違っても恋をさせては駄目ですからね」


「そんなことにはならないよ。僕にはルフィーナがいるんだよ? それに僕の部下たちは僕を慕ってくれているだけなんだし、そんな恋だなんてあり得ないよ」


「気を付けてね。アスくん――」


「は、はい」


 ハヴェルとレナータの護衛をするために、城へ向かった僕を待っていたのは父さまではなくて、お母さんだった。父さまは城の中でじっとする騎士じゃなくて、沢山の騎士の面倒を見たり城下町の民と触れ合うくらいの人だった。団長時代から多くの支持と信頼を得ていた父さまは、今も変わっていなかった。


 副団長として僕には配下の騎士が6人ほどいて、一人はハヴェル。ハヴェルの場合は実力も年齢も上だったにも関わらず、自ら志願してくれていた。残る5人はみんな見習い騎士で、それもみんな女の子。


 ルプルが一番熱心に何でも聞いて来ていた子ということもあり、父さまも彼女のことを見込んで旅にも同行させた経緯があるけれど、他の子たちはまだまだかなと思っていた。それが今回連れて行こうと思ったのは、ルプルのように外を見たことで何かのきっかけを得てくれればな、なんて思ったからだ。


 それなのになぜかいつも、お母さんは念を押してくる。ルフィーナのことが大好きな僕が、どうして他の女の子に目移りすると思われているんだろうか。一応は頭の片隅に置いときながら、騎士の錬場にいる彼女たちを迎えるために顔を出した。


「アスさん、ボクが行っていいのですか?」


「もちろんだよ! リーセにも外で実戦を積んで欲しいからね」


「頑張るです!」


「マリツェもリーセに負けずに頑張ってね」


「副団長殿に感謝致します。精一杯の努力をしてみせます!」


「う、うん。肩の力を抜いてね」


 僕の部下の見習い騎士の女の子5人の内、今回は2人を連れて行くことを決めた。ルプルは、レイバキアですっかりとアリーさんに気に入られたようで、今は彼女の下で修練をしている。他の2人についても、どこかの機会に同行させたいと思っている。


 ルプルだけは剣と盾を持たせることなくレイバキアに連れて行ってしまったけど、他の子たちは実戦経験こそないものの、基本の動きは出来る子たちということで不安要素はない。


「待ちくたびれたぜ、アスティン! おっ? リーセとマリツェも行くのか。いいじゃねえか! 経験積めるなんて、ラッキーだな」


「ハヴェルさん、あのあの……お元気なのですか? おめでとなのです!」


「おう! 相変わらず緊張しまくりだな、リーセは」


「ヴィジュズ殿。この度はご成婚おめでとうございます」


「あ、あぁ。まぁ、まだなんだけどな。マリツェも変わんねえな。表情も口調も、全て硬過ぎんぜ。アスティンが近い所にいるのにどうしてそんなに硬いのかねぇ」


「これはわたくしの国の言葉にございます。アスティン殿を慕う心に偽りなどありません。これもわたくしの個性と捉えて頂ければ……」


「わ、分かった。俺が悪かった」


 僕の配下騎士になってくれていたとはいえ、見習い騎士の子たちの面倒を直に見ていたのは、ほとんどハヴェルだっただけに、彼女たちもハヴェルを慕っていたに違いなかった。


「ハヴィってば顔を赤くすることもあるのね」


「レナータは心配なの?」


「ううん、全然。わたしが心配なのはアスティンかな」


「へ? な、何で?」


「アスティンは優しいもの。あなたが好きなのは王女さまなのは何度も聞いているけれど、それでも、アスティンの優しさは心配になるの。だから、見習い騎士の女の子たちには過剰な期待をさせては駄目だよ?」


「ええ? レナータまでお母さんと同じ事を言うんだなぁ。彼女たちは僕とルフィーナのことを知っているんだよ? そんなことにはならないよ」


「うん。それでも、アスティンは心配。慕われと恋慕われは別だから、気を付けてね」


「わ、分かったよ」


 色々心配をされながらルフィーナとの再会までの束の間に、僕と見習い騎士の子たちとで、初めて護衛をすることになった。遠く無い道のりだけど、これが彼女たち見習い騎士の自信を付けさせる道になればいいな。

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