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86.君に逢うために


 ルフィーナと再会するまでにどうやら結構日数が空いてしまうらしく、そのせいか僕は忙しい日々を送っていた。つい数日前までは魔法が見られた王国にいたはずなのに、今はジュルツ城や、騎士宿舎、自分の家を往復する毎日だ。


「アスティンさん! こ、こうですか?」


「もっと中段に構えて。そうしないと隙が出来てしまうよ!」


「は、はいっ! ありがとうございます!」


 見習い騎士ルプルや、他の騎士たちがこぞって僕の元に剣を習いに来ていた。本来なら、カンラートやハヴェルとかベテラン騎士が教えるべき事なのに、その誰もが今はジュルツにいないのが原因だった。


 ハヴェルは王女をやめたレナータと一緒にいるせいか、すっかりと騎士の仕事をしなくなっていて、圧倒的に、ジュルツには指導できる立場の騎士が留守にしている状況だった。


「いやーすまんな、アスティン」


「ハヴェル! そう思うなら見てもらうだけでも頼みたいよ全く……」


「親の説得に時間がかかっててな」


 騎士をやめる覚悟のハヴェル。それに加えて、レナータと一緒にジュルツの近くにある水都に家を構えるらしく、親元を離れて暮らすことになるという説明と説得に追われているらしい。


 だからこそ助かっているのが、レイバキアで声をかけたアリーさんの存在で、彼女は騎士としての強さは勿論、品があって綺麗で、見習い騎士や従士たちが彼女を慕うまでになっていた。


 今は賓客としての扱いをしているけど、本人はこのままジュルツにいてもいいとまで言い出していて、どうすればいいのか分からないのが現状だったりする。


「お、それはそうと、アスティンに頼みがあるんだが聞いてくれるか?」


「僕がハヴェルの頼みを断れるとでも思ってる? 聞くよ」


「だよな。はははっ! さすが俺の弟だな」


 忙しい最中でもあるけど、元々レナータとハヴェルを最後まで護衛するとお願いされていた僕にとっては、彼からの頼みやレナータのお願いには素直に受けざるを得ないのが正直な所だ。


「ハヴィ! ここにいたのね。あら、アスティン。ご機嫌いかが?」


「忙しいけど元気だよ」


 お互いの愛を開放したレナータとハヴェルの仲良しぶりは、ジュルツに来ても変わりが無くてハヴェルを昔から知る騎士のみんなは、悔しそうにしていたのが印象的だった。


「アスティン、ルフィーナ様と会えるまで数日以上はかかるらしいな?」


「う、うん。父さまが報せてくれるらしいけど、まだまだジュルツに留まるしかないみたい」


「そこでだ。お前に護衛を頼みてえ! まぁ、俺自身がレニィを守ればいい話なんだが、アルヴォネン殿に剣と盾をお返ししちまったからな。俺は騎士の武器も守りもないただの男なわけだ」


「ハヴェルは武器が無くても強いじゃないか。それにそんな危険な所に行くの?」


「あそこは危険なとこじゃねえけど、過去にお前も俺も油断した町だからな。用心に越したことはないってわけだ!」


 俺とハヴェルが油断した町と言えば、あの平和そうな港町しか思い当たらない。


「アスティン。わたしとハヴィの暮らす都はね、港町の近くなの。危険は無いかもしれないけれど、あなたに護衛して欲しいの。一緒に行ってもらえるかな?」


「ま、まぁ、それはいいですけど……僕一人だけですか?」


「港町だけなら他の騎士を連れて来ても大丈夫。だけど、水都は関わりのある人間しか入れないの。アスティンはギリギリかな。王国に入ったことがあるし、たぶん入れるわ」


「わ、分かりました。それじゃあ、父さまに話を通して来ます。港町までの道は、見習い騎士を数人連れて行きます。あの辺は何気に賊とかいますし、経験させることも出来るかもしれないですから」


「おう、頼んだぜ」


 ハヴェルとレナータの暮らす都に僕が入れるのは興味あるけど、それよりも配下の見習い騎士たちを外に連れて行けるのも楽しみかもしれない。ルフィーナが外の国で大変な目にあっている中で、こんなことをしているのも悪いと思うけど、僕は僕でジュルツが良くなることをしていきたい。


「じゃあ、城へ行ってきます」


「アスティン、お願いします!」


「うん、ふたりは用意してて」


 ひょんなことから、レナータ、ハヴェルと共に帰って来たジュルツ。数年ぶりに騎士としての仕事をしている毎日を送ることが出来るとは思わなかった。でもこれも全ては君に逢うためなんだ。

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