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85.ルフィーナ王女のいたずら計画④

「そ、それで国王陛下は私めにどうしろと申すのですか?」


「うむ。わしに代わって国王となってもらいたいのだ。これだけ似ているとは正直、思ってはいなかったのだが、確信が持てたのでな。引き受けてくれるとわしも助かるのだが」


「わ、私めが国王に!? それは無理でございます。私は一介の騎士にございます。如何に陛下と似ていようとも、城の者や民たちを騙すなど出来ませぬ」


「いや、何も本当に国王になれということではない。ルフィーナ王女の願いでもあるのだが、しばらくの間、わしとカンラート殿が入れ替わり、わしがルフィーナ王女の兄君として振る舞うだけのこと。お主は城の玉座に座り、過ごしていればよい。それだけのことだよ」


「し、しかし、子を……娘の子守をしなければなりませぬ。娘はどうすればよいのでございますか?」


「心配には及びません。わたくし、テリディアがお世話致します」


 ヴァルティアに似た雰囲気を醸し出すテリディアに、カンラートは思わず驚いていた。それもそのはずで、彼女もまたヴァルキリーであったからだ。


「お前はルフィーナの近衛か。すると、俺に付くのはお前と、ハズナということになるのか?」


「ええ、そうよ! ヴァルキリーがふたりも付くのよ? それなら、怪しまれないわ。強さは本物ですもの。ヴィアもテリディアのことはよく知っているし、騒ぐこともないわ。問題は、カンラートが堂々と出来るかどうかにかかっているだけのことよ」


「い、いや、しかし……俺はアルヴォネン殿よりも風格が足りぬ。年齢も陛下には及ばぬ。それで何故末王子を騙せるというのか」


「カンラート殿。心配は要らぬ。末王子トビアスは、滅多に城には来ぬ。故に、わしの顔をまともに見てもおらぬ。間近で会ったとて、疑う余裕も無いだろう。どうか、お願い致す。これも我が末王子を何とかしたいものであるのだ。それをルフィーナ王女に託しているだけに過ぎぬ」


「も、勿体無きお言葉にござりまする。わ、分かりました。では、不肖ながら私、カンラートが陛下の代わりを務めさせて頂きまする。まさかルフィーナの言ったことが本当であったとは、思いもしなかったのでございまして……」


 うふふ……これでいいわ。まさかカンラートも国王陛下までもが、あなたとヴァルティアお姉さまにいたずらを仕掛けているだなんて思ってもみないことでしょうね。


「では、カンラート……ここで陛下と服を交換して」


「な、なにっ? ここは城門だぞ? だ、誰かに見られてしまえばまずいではないか!」


「平気よ」


「むむ……で、では失礼ながら、陛下も茂みにてお願い致しまする」


「うむ」


 心配しなくても、知らないのは末王子とカンラートとヴァルティアだけだもの。楽しみだわ。


「ま、待たせた。これで陛下に見えるか?」


「まぁ! あなた、カンラートよね? 遜色ないわ! さぁ、お城へ行ってちょうだい。テリディア、ハズナ。後のこと、お願いするわね」


「かしこまりました」

「はい、王女さま」


「あぁ、そうだ。ルフィーナ! 城からお前への手土産を持って来てある。マフレナに持たせてあるから彼女から受け取ってくれ! ではな」


「手土産?」


「お前と、アスティンの……だ」


 もしかして試練の時のアレかしら。だとしたら、ますます面白いことが出来そうだわ。


「さて、ルフィーナ王女……いや、ルフィーナよ。わし……俺はどうすればいい?」


「そうね、お兄さまにはお兄様として、トビアス王子に紹介をしたいの。わたしを心配して駆けつけた兄としてお願いしますわ」


「そ、そうか。中々に緊張するものだな」


「ところで、陛下……お兄様のお名前をうかがっても?」


「うむ。俺は、エサイアス・サーク。サークと呼んでよいぞ。俺もルフィーナと呼ぶが良いか?」


「あら? トビアス王子とは名が違うのね」


「アレは末王子であるからな。第一、第二とは違うのだよ」


 まぁいいわ。国の事情なんて色々あるもの。細かく聞いたところで、この先、末王子と深く関わるつもりなんてないもの。


「して、ルフィーナよ。トビアスがしているルフィーナへの行いについては何もせぬし、言わぬのだがそれでよいか? むしろ、それこそがそなたの狙いなのであろう? いたずらとやらの……」


「そうですわ、サーク様。あなたのことはカンラートお兄様とお呼びしますので、間違えないようにお願い致しますわ。それこそがわたくしの望みですの」


「分かった。ルフィーナとカンラートだな。そなたの望みとやらを叶えに、あいつの部屋へと向かうとしようか」


「ええ、お兄様。参りましょう」

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