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80.アスティンの寄り道②


「どうです? 私が言った通りでしたでしょう? というより、ヒゲは剃ってしまったんですね。その方が男前じゃないですか。やはり見る目があったんですね、王女さま」


「う、うるせえな。ヒゲは成り行きだ! そ、それよりも、あの男は何者だ?」


「あ、気になります? 大丈夫ですよ。あの方はアグワの水術士です。レナータ様に水魔法を教えた方みたいですよ。その方がいる都に居を構えることをずっと決めていたみたいですね。裏切らなくてよかったですね、ハヴェルさん」


「相変わらずうるせーガキだな」


「だ、誰がガキですか! こう見えても姫なんですけど!」


 ミストゥーニに到着した僕たちはすぐに、ディーサ女王陛下に謁見した。そこで聞かされたことに少しだけ驚いてしまったものの、いたずら王女のルフィーナらしいなと思って思わず笑いがこぼれてしまった。


 × × × × ×


「姫さん、アスティンとはどこで再会するのか決めているのか?」


「そうね。偽アスティンをやっつけ……改心させたら、一度ミストゥーニに戻ろうかと思っているわ」


「え? な、何で?」


「わたしの弓の実力は中途半端なままなの。アダリナにもう一度……ううん、今度はより正確な教えを頂こうかと思っているわ。ふふっ、それにミストゥーニは国境の国ですもの。そこからならまた再出発が出来るでしょう? もちろん、今度はアスティンと一緒に」


「ってことは、アスティンと再会したら同行する騎士は……」


「ええ、ジュルツに戻って頂くわ。元々、大所帯で行く必要はないもの。安心していいわ。セラは帰さないわ。あなたには傍に居て欲しいもの」


「野郎ども……じゃなくて、アスティン以外の男はジュルツに?」


「そうね。そうでなければ、テリディアが泣いてしまうもの。アスティンだけは特別だから、他の騎士たちにはジュルツを守って頂くとするわ!」


「姫さんらしいな! そこまで考えていたとな。あははっ! さすがあたしの姫さんだ。惚れこみすぎて離れられなくなっちまうよ」


「あら? セラは離れないのでしょう?」


「おうよ!」


 × × × × ×


 僕から彼女を迎えに行こうと思って意気込んでいたのに、まさかミストゥーニに戻って来るつもりだったなんて思いつきもしなかった。それでも、彼女を迎えるという意味では間違っていないかもしれない。


「ハヴィ、アスティン! お待たせしてごめんなさい。わたしの用は済みましたわ。アスティンの予定通りに、このままジュルツへ向かいましょ。ハヴィもそれでいい?」


「あ、あぁ……」


「ん? どうしたの、ハヴェル。帰るのが怖いの? 心配しなくてもジュルツには父さまはいないはずだよ? ルフィーナと一緒に行動してるはずだし」


「いや、シャンタル様に挨拶するのも恐いぜ。カンラートは小言だけだからどうでもいいが」


 ジュルツに挨拶をしたいレナータとは別に、ハヴェルはずっと落ち着かない様子だった。それほど恐れているのだろうか。騎士としてのハヴェルをやめるという意味ではそう思っても仕方のないことかもしれない。


「あれ? そういえばハヴェルの家族はジュルツにいるんだっけ?」


「あぁ、まぁな……むしろそれが問題だ」


 そうか、騎士として活躍していた息子が騎士をやめて、故郷を出て行くことは確かに怖い事なのかもしれない。考えてみればハヴェルは父さまと酒を飲む程の仲なんだ。怖いわけがないよね。


「では、ジュルツの騎士アスティンと、騎士ハヴェル。そして王国のレナータ様。それにレイバキアの騎士アリー。ジュルツから再び、ここへ戻られるまで何事も無く過ごされるよう、祈っておりますわ」


「はっ! ディーサ様。此度のこと、深く感謝致します。このハヴェル、ディーサ様のお導きあっての存在にござりまする」


「では、我ら騎士は一先ず、ジュルツへ向かいまする!」


「ええ、アスティンさん。お父君のアルヴォネン様にもよろしくお伝えくださいませ」


「え? あれ、でも……」


「どうした、アスティン? 何か不安事か? 心配せずとも我がアスティンを守ろうぞ」


「あ、ありがとう。アリーさん」


「アリーと呼んでくれないか?」


「分かったよ、アリー」


 城に戻っているのだろうか。それとも、後で会った時に伝えて欲しいという意味なのかもしれない。なんにしても、久しぶりの故郷に一時的とは言え、戻ることが出来るんだ。お母さんにも色々話をしに行かなきゃ。

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